広開土大王級駆逐艦

広開土大王級駆逐艦朝鮮語: 광개토대왕급 구축함、こうかいどだいおうきゅうくちくかん、クァンゲトデワンきゅうくちくかん、: Gwanggaeto the Great class destroyer: Kwanggaeto the Great class destroyer)は、大韓民国海軍駆逐艦の艦級。大韓民国初の国産駆逐艦である[3][4]

広開土大王級駆逐艦
基本情報
艦種 駆逐艦 (DDH)
建造所 大宇重工業
運用者  大韓民国海軍
建造期間 1995年 - 2000年
就役期間 1998年 - 就役中
計画数 12隻
建造数 3隻
前級 忠北級(DD)
大邱級(DD)
忠武級(DD)
次級 李舜臣級(DDH)
要目
基準排水量 3,200 t
満載排水量 3,900 t
全長 135.4 m
最大幅 14.2 m
吃水 4.2 m
機関方式 CODOG方式
主機
推進器 可変ピッチ・プロペラ×2軸
出力
  • ディーゼル:10,280 bhp
  • ガスタービン:59,000 shp
最大速力 30ノット
航続距離 4,500海里 (18kt巡航時)
乗員 士官15名+曹士170名
兵装
搭載機 スーパーリンクス哨戒ヘリコプター×1機
C4ISR
レーダー
ソナー
電子戦
対抗手段

来歴

大韓民国海軍の作戦海域は、建軍当初は沿海域に限定されており、1951年の時点では、外洋作戦艦としては小型・低速のタコマ級フリゲート(PF)2隻を保有するのみであった。1960年頃にPFや護衛駆逐艦(DE)を増強したのち、1970年前後にフレッチャー級駆逐艦を導入して艦隊駆逐艦の運用に着手した。また1980年代には更にFRAM改修型のアレン・M・サムナー級ギアリング級を導入し、洋上作戦能力の強化を図っていた[5]。一方、1970年代朴正煕政権が発表した「自己完結型の国防力整備を目指した8ヶ年計画」に基づき、戦闘艦の国産化が着手され、まず東海級コルベット蔚山級フリゲートが建造された。続いて駆逐艦の建造が着手されることになり、これによって建造されたのが本級である[6]

設計作業は、1989年から大宇重工業(現在のハンファオーシャン)によって着手された[2]。当初計画では1992年末には1番艦が起工され、1996年には竣工する予定であったが、予備設計が1993年末まで延長されたことから、計画も後倒しされた[3]。計画名は、当初はKDX-2000とされていたが、後にKDX-2(現在の李舜臣級)計画がスタートすると、これにあわせて、こちらはKDX-1と称されるようになった[7]。当初は最大20隻の建造も検討されたが、結局3隻の建造にとどまった[4]

設計

右舷後方からの艦影

船型としては平甲板型が採用されているが、ハンガーを設置した後部上部構造物は両舷いっぱいまで広げられている。艦内容積の不足を補うため、艦の長さに比較して上部構造物は高く、また艦橋構造物の上にも大型の甲板室が設けられているために全体の印象はややトップヘビーなものとなっている[7]。また実際にも、艦内余積に乏しく、復原性などの洋上行動力にも問題があると言われている[6]。なお、V字型に傾斜した並列式の2本煙突が設置されており、ステルス性を企図したものという説もあるが[8]、艦型の拡大にともなって船体中央部に余裕ができたKDX-2ではシンプルな単煙突に改められた[9]

主機には蔚山級を踏襲してCODOG方式を採用しており、高速機は同じゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジンであるが、巡航機としてはV型20気筒に強化したMTU 20V956 TB92ディーゼルエンジンが採用された。推進器としては可変ピッチ式スクリュープロペラが両舷に計2軸配置されており、巡航機と高速機は各推進器に1基ずつ、減速機を介して接続されて、これを駆動する。また電源としては、出力800kWのディーゼル発電機が4基搭載されている[4]

装備

C4ISR

電子装備に関しては米欧折衷とされている。戦術情報処理装置としては、イギリス海軍23型フリゲートで搭載したSSCS Mk.7をベースにしたKDCOM-Iが搭載された[注 3]。また戦術データ・リンクとしては、アメリカ合衆国のリットン・インダストリーズ社(現ノースロップ・グラマン・シップ・システムズ)が開発したLNTDSを韓国向けに改正した韓国型NTDS(KNTDS)を搭載している[6][10]

なお、2012年以降、2014年10月までの間に、戦闘システムが予期せず24回もシャットダウンしていることが判明している。このため、韓国海軍では予期せぬシャットダウンを防ぐために毎日戦闘システムをリセットしている。この問題を根本的に解決するために、韓国海軍は本型の戦闘システムのアップグレードを検討している[11]

センサについては、レーダーは、長距離捜索用としてはアメリカのレイセオン社のAN/SPS-49(v)5を後檣上に、目標捕捉用としてはオランダタレス・ネーデルラント社のMW-08を前檣上に搭載する。またソナーは、ドイツのアトラス社のDSQS-21BZを艦底に装備するほか、アメリカからの技術導入を受けたと思われる国産のSQR-220K戦術曳航ソナーも装備化されている[4][10]

武器システム

防空用としては、RIM-7P シースパロー個艦防空ミサイル垂直発射機(VLS)である16セルのMk.48 mod.2を艦橋構造物直前の甲板室に収容した。なお、Mk.48 VLS自体は海上自衛隊むらさめ型護衛艦などでも採用実績があるが、これを埋め込み式で搭載したのは本級のみである[12]。その誘導は、前檣直前の艦橋上と後檣直後の上部構造物上に1基ずつ搭載されたSTIR-180レーダーによって行われるが、これは主砲の射撃指揮と兼用である[4][10]

主砲としてはオート・メラーラ社製127mmコンパット砲を艦首甲板に、また近接防御用のゴールキーパー 30mmCIWSを艦橋構造物上04甲板レベルと後部上部構造物上03甲板レベルに搭載した[注 1][4]

対水上火力としては、ボーイング・ハープーン ブロックIC艦対艦ミサイルの4連装発射筒2基を煙突直後の01甲板レベルに搭載している。また対潜兵器としては、Mk.32 3連装短魚雷発射管を煙突両脇の上甲板上両舷に搭載する。ここから発射する短魚雷としては、当初はアメリカ製のMk.46が用いられていたが、より高速の国産機であるK745 青鮫の装備化にともなって、こちらに切り替えられていくものと考えられている[10]

電子戦装置としては、アメリカのアルゴ社(ARGOSystems)のAPECS-II/AR-700電波探知妨害装置が搭載された。これは電子戦支援用のAR-700電波探知装置と電子攻撃用のAPECS-II(Advanced Programmable Electonic Countermeasure System)電波妨害装置を統合したもので、ポルトガル海軍ヴァスコ・ダ・ガマ級フリゲートギリシャ海軍イドラ級フリゲートで採用実績があった[13]。またこれと連動するチャフフレア発射機としては、従来用いられてきたアメリカのMk 36 SRBOCにかえて、欧州CSEE社製のDAGAIE Mk.2が搭載されている[4]

同型艦

一覧表

艦名は、4世紀末から5世紀初めにかけて高句麗国王だった広開土王より名を取った。2番艦の乙支文徳軍と戦った高句麗の将軍名、3番艦の楊万春軍と戦った高句麗の将軍名。

艦番号艦名建造起工進水竣工
DDH-971 広開土大王
(クァンゲトデワン)
大宇重工業 1995年
10月
1996年
10月27日
1998年
7月24日
DDH-972 乙支文徳
(ウルチムンドク)
1996年
1月
1997年
10月16日
1999年
8月31日
DDH-973 楊万春
(ヤン・マンチュン)
1996年 1998年
9月30日
2000年
6月30日

レーダー照射問題

2018年12月20日、DDH-971 広開土大王が能登半島沖で海上自衛隊第4航空群P-1哨戒機の接近に対して火器管制レーダーを複数回照射したとされる韓国海軍レーダー照射問題を惹起した[14]

脚注

注釈

  1. 艦のレーダーとは別に、ゴールキーパーCIWSは専用のレーダーを備えている。捕捉レーダースロットアレイ・アンテナを使用して周波数はXバンド、追尾レーダーカセグレン・アンテナを使用して周波数はXバンドおよびKaバンド[1]
  2. ジェーン海軍年鑑やアメリカ海軍協会(USNI)ではAN/SPS-55Mとして扱っている[3][4]
  3. 韓国海軍では、やはりイギリス海軍が21型フリゲートに搭載していた武器管制システムの輸出版であるWSA-423を、既に浦項級コルベットに搭載して運用していた。

出典

  1. Friedman 1997, pp. 440–441.
  2. globalsecurity.org 2011.
  3. Saunders 2009, p. 463.
  4. Wertheim 2013, p. 408.
  5. 香田 2009.
  6. 大塚 2013.
  7. 海人社 2009, pp. 21–42.
  8. 海人社 2013.
  9. 海人社 2009, pp. 86–93.
  10. 多田 2009.
  11. メモリー不足の駆逐艦、魚雷に無防備な最新イージス艦…」『朝鮮日報』、2014年10月14日。オリジナルの2014年10月14日時点におけるアーカイブ。
  12. 海人社2009, pp. 1–7.
  13. Friedman 1997, p. 565.
  14. 韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について”. 防衛省 (2018年12月22日). 2018年12月22日閲覧。

参考文献

  • globalsecurity.org (2011年). KDX-I Okpo class DDH (Destroyer Helicopter) (英語). 2014年5月9日閲覧。
  • Friedman, Norman (1997). The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998. Naval Institute Press. ISBN 9781557502681. https://books.google.co.jp/books?id=l-DzknmTgDUC
  • Saunders, Stephen (2009). Jane's Fighting Ships 2009-2010. Janes Information Group. ISBN 978-0710628886
  • Wertheim, Eric (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. ISBN 978-1591149545
  • 大塚, 好古「韓国海軍力の現況 (特集 朝鮮半島をめぐるシーパワー)」『世界の艦船』第780号、海人社、2013年7月、76-83頁、NAID 40019692165
  • 香田, 洋二「韓国海軍 その現況と将来 (特集・韓国海軍の現況)」『世界の艦船』第704号、海人社、2009年4月、75-81頁、NAID 40016485796
  • 多田, 智彦「韓国軍艦のウエポン・システム (特集・韓国海軍の現況)」『世界の艦船』第704号、海人社、2009年4月、94-97頁、NAID 40016485799
  • 海人社(編)「特集・韓国海軍の現況」『世界の艦船』第704号、海人社、2009年4月、75-113頁、NAID 40016485795
  • 海人社(編)「写真特集 今日の韓国軍艦」『世界の艦船』第780号、海人社、2013年7月、21-42頁、NAID 40019692113

外部リンク

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