戸塚ヨットスクール

戸塚ヨットスクール株式会社(とつかヨットスクール)は、愛知県知多郡美浜町のヨットスクール(フリースクール)である。校名は創始者の戸塚宏の名字から。

戸塚ヨットスクール株式会社
ヨットスクール校舎(2016年12月)
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
〒470-2703
愛知県知多郡美浜町大字北方宮東70-1
北緯34度46分45.7秒 東経136度54分54.1秒
本店所在地 〒464-0858
愛知県名古屋市千種区千種3丁目12番7号
設立 1974年11月26日(株式会社シー・ワイ・シー)
業種 サービス業
法人番号 8180001004842
事業内容 ヨット教室の経営
代表者 代表取締役 戸塚宏
資本金 1300万円
純利益 ▲295万2000円(2018年10月31日時点)[1]
総資産 32万2000円(2018年10月31日時点)[1]
外部リンク 公式ホームページ

概要

方針

1976年、ヨットマンの戸塚宏により「オリンピックで通用するような一流のヨットマンを育てる」という理想の下で設立される[2]。 教育方針は校長の戸塚宏が提唱する「脳幹論」と称するものに基づいている。この「脳幹論」とは、「青少年の問題行動は、脳幹の機能低下により引き起こされる」という持論に基づき、「アトピーや喘息、出勤・登校拒否、引きこもり、癌なども、脳幹を鍛えることによって克服できる」と説くものである。しかし、それらの主張を裏付ける医学的根拠はなんら存在せず[3]、第三者による客観的・科学的な検証も不十分である。また、戸塚は医学の研究に携わったことはなく、医師や医学博士でもない。

戸塚は、ヨットやウィンドサーフィンを通じて大自然の中で原始的な状況に直面せざるを得ない状況を作りだし、彼らに直面させることで脳幹に刺激を与え、戸塚が衰えたと考えるその機能を回復させるというもので、薬物やカウンセリング、周囲の思いやりというようなものだけでは治らない者もあり、教育荒廃は決して解決しないとの考えに基づく[4]。戸塚の支援者である石原慎太郎は、この理論はオーストリアの動物行動学者であるコンラート・ローレンツが唱えたものであるとしている[5]。

「人間が与えられた『生きる力』を100%開花させることに全力を注ぐ」ことをうたい、「基礎精神力を養う」ことを目的に、現在はウィンドサーフィンを使ったトレーニングを行っている。かつては4歳から80歳までの入校を受け入れていたが[6]、現在は3歳~8歳までのジュニアのみ受け入れている[7]。その理由として、戸塚は「(今の子は)本能がダメになっとる。(中略)小さい頃に叱られないと、罪悪感ができん。悪いことをしたときに大きな不快感が生じるようにしとかないかん。さあ悪いことをするぞといったときに、その罪悪感が出てくる。(中略)今の子供は叱られていないから、罪悪感が弱い。」また「反省ができん。それは恥を掻いてないからや。恥をかくのは非常に大事なことなんよ。でも今の教育委員会に聞いてみてごらん。恥をかかせるのは悪いことだというから。ちゃんちゃらおかしい。」と述べている[7]。従前は校内には寮が併設されており、登校拒否、引きこもり、家庭内暴力、非行などの問題を抱えた生徒は合宿が原則となっていた[6]。指導としての体罰は否定せず、「体罰を使えば期間を短縮できる」が、現状では「使いたいのですがなかなか使えない」としている[6]。

合宿中は月曜の休み以外は毎日ウィンドサーフィンによる訓練が行われるが、嫌なことから逃避する癖の付いた大半の生徒は、様々な口実や時には巧みな嘘で逃げようとし、ほとんどの生徒が脱走を試みたという。この事実をあらかじめ想定し、対応しないと生徒の嘘に幻惑され帰宅を許してしまい失敗すると説く。このため、家族には戸塚を信頼し、必ず指示に従うよう求める[4]。

戸塚ヨットスクール事件

1970年代末から1980年代にかけて、スパルタ式と呼ばれる独自の指導により、不登校や引きこもりや家庭内暴力などの数多くの非行少年を矯正させたという触れ込みで、戸塚ヨットスクールはマスメディアに登場し話題となる。当時は校内暴力が社会問題化していたため、問題行動を繰り返す青少年の矯正を行えると自称した同スクールが注目されたものであった。

しかし、訓練中に生徒が死亡したり行方不明になったりした、いわゆる「戸塚ヨットスクール事件」が明るみに出た結果、1983年に傷害致死の疑いで捜査が行われ、校長の戸塚以下関係者15名が逮捕、起訴された。長年に及ぶ裁判の末、戸塚およびコーチらは有罪判決を受けた。校長の戸塚は懲役6年の実刑で服役した後、2006年4月29日に静岡刑務所を出所し、スクールの現場に復帰した。

復帰後の事件

2006年10月9日、25歳の訓練生の男性がスクール近くの沖合で水死体となって発見される事件が起きた[8]。この男性は同月6日に失踪し行方不明となっていた。遺体に外傷はなかったため、事故死か自殺とみられている。

2009年10月19日、戸塚ヨットスクールの寮の3階から18歳の訓練生の女性が飛び降りて死亡する事件が発生した。女性は3日前に入所したばかりで、他の寮生・コーチと共に布団干しの作業中に約1.5メートルのコンクリート製の屋上のへりを乗り越え、路上に転落した。愛知県警半田署は自殺とみて捜査している。事件後、戸塚校長は「突発的だった。管理態勢に問題はなかったが、所属した生徒が亡くなったことには責任がある」と話した[9]。

2010年12月20日、30代の訓練生の男性がスクール内の寮から転落し重傷を負う事件が発生[10]。愛知県警半田署は事故と自殺未遂で調べていると報じられた[11]。

2012年1月9日、スクール内の寮の前で頭から血を流して倒れている21歳の訓練生の男性が発見され、病院搬送後に死亡。「ヨットスクールの生活がつらく、このまま生きていくのもつらい」と書かれたメモがあったことから、飛び降り自殺と考えられている[12]。

思想・信条

  • 理性は創るものであり、あるものではない。『世界人権宣言』の第1条に、「人は生まれながらに…理性と良心とを付与されており…」とあるが、これはとんでもない誤りだ。「自由・権利・尊厳・平等」これらは創るものであって、あるものではない。「力」は正義だ。「力」を「暴力」と混同し、力そのものを否定してはいけない。力は群れのためにあり、自分のためにあるのではない[13]。
  • 生理学者セリエは、「病気の種類に関係なく、病人には共通する”病人らしさ”がある」と指摘しており、同様に問題児にも共通した”問題児らしさ”がある。”問題児らしさ”は弱さだ。精神が決定的に弱い。トレーニングをしなかったために生じたものだ[13]。
  • 「人間は平等ではない」と自覚した時、進歩しようとする。己をまず知らねば、進歩はなく、へたな平等主義は、進歩の芽を摘む[13]。
  • 子供は褒めると進歩しない。本当のインテリとは、「知・情・意」のすべてが人より優れ、特に「知」において抜きん出ている人を指すが、日本の「インテリ」は「情・意」においては人並み以下、「知」は他人の知識の盗み取りに過ぎない。行動力がないのは、「情・意」が弱いためで「褒める教育」が、これに拍車をかけている。「褒める教育」は虚栄心も強くする。マスコミは、「インテリ」の集団だ。浮ついた教育論を人に押し付ける[13]。

統一教会との関係

文鮮明の指示により、統一教会と国際勝共連合が出資して設立した団体、世界日報が発行している月刊ビューポイントの2011年9月号に、戸塚校長のインタビュー記事が掲載された[14][15][16][17][18]。

自民党の長谷川岳議員は自身のブログに上記のインタビュー記事を引用した上で、「戸塚校長は、このインタビューの冒頭で、『今回の大震災でよく分かったことは「己の身を守れ」ということだ』と述べていますが、私が期間入校の時に身をもって学んだことが、まさにこの『己の身は己で守れ』ということでした。小学生の夏に、しっかりと身体に刻み込んだこの感覚を、今、国会議員の立場となっても胸に留め置き、日々全力を投じて参りたいと思います」と述べた[14][15]。

WEB版のビューポイントには、「(ビューポイントの記者が)先日、戸塚ヨットスクールの創立37周年パーティーに出席する機会を得た。」というコラムが2013年11月25日に掲載された[19]。

支援する会

戸塚ヨットスクールの教育・更生方針に賛同する支持者は、厳しい教育訓練のあり方、死亡事故の発生、歪曲された報道などのため、同スクールが様々な誤解と中傷に曝されてきたと主張[20]。「戸塚ヨットスクールを支援する会」を組織し支援に当たっている。主要な支援者の中には石原慎太郎(会長)や伊東四朗などの著名人が含まれている。

勾留・収監中も戸塚はマスメディアに依頼された原稿の執筆活動や弁論雑誌への投稿、同スクール支援者団体を通じてのインターネット上での意見表明・コラム掲載などを行っており、支援団体サイト『教育再生!』には支援者による資料が掲載されている。

社会的影響

遭難・行方不明・傷害致死事件が報じられてからは、戸塚ヨットスクールは激しい非難を受けたが、テレビのバラエティ番組では「不謹慎ネタ」として扱われる傾向も見られた。山本太郎が、箕面自由学園高等学校在学中に『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の「ダンス甲子園」へ出場した際、参加名を「アジャ・コング&戸塚ヨットスクールズ」としていた。また1983年に放映された「第7回アメリカ横断ウルトラクイズ」の第8チェックポイント・レイクパウエルは、「クイズヨットスクール」と銘打たれていた。

戸塚自身も、『ムハハnoたかじん』や『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』などのバラエティ番組にゲストとして出演したことがある。

講演「私の脳幹論」

戸塚は、2014年11月28日・29日に開催された「第27回日本総合病院精神医学会総会」において、「私の脳幹論」と題する講演を行った。 この中で戸塚は、「脳幹論」と「本能論」について、

  • 「脳の構造が、脳幹部・辺縁系・新皮質と三段だから、やっぱり精神も3つに分かれますね」
  • 「脳幹部で処理された情報が辺縁系へ来て、そこでまた細かく処理される」ことが「本能」
  • 「本能論」とは「理性の目標を本能と一にする」ことであり、「本能と目的を違(たが)えてつくった理性は悪」

と説明し、

  • 「恐怖の使い方が進歩するか落ちこぼれるかの境目」
  • 「恐怖を安定に持っていくトレーニングをする」ことで、子どもに「進歩の能力」が身につく
  • 「人にとって一番大きい恐怖というのは、生きるか死ぬかの時に発生する恐怖であるから、そのときに「生きよう」とする、そういう能力をつけてやればいい」

などと述べ、体罰によって訓練生へ恐怖を植え付けることの正当性を主張した。 また、

  • 「幻覚がある場合、トレーニングをすれば統合失調症の場合は悪くなっていくから、それで判断でき、そのときに初めて、精神病として扱えばいい」

と述べ、精神疾患の診断と治療よりも戸塚の提唱する「トレーニング」が優先し、それによって症状が悪くなってから医療を受ければいいと主張した[3]。

これに対して、日本児童青年精神医学会の理事会は、

  • 戸塚氏が、戸塚ヨットスクール事件に至る理論的背景であった「脳幹論」を当時と変わらずに主張し、それがいまだに死傷者を出現させているにもかかわらず、恐怖を与えることの正当性を主張していることを、精神医学に携わる者は無批判のままに放置しておくべきではない。
  • 「脳幹論」(「本能論」)自体が何ら医学的根拠を持つものではないにもかかわらず、医学雑誌である「精神医学」に無批判に「私の脳幹論」が掲載されたことは極めて問題
  • 戸塚氏は、医療を提供する立場ではないが、「脳幹論」(「本能論」)に示される戸塚氏の考え方が、朝田氏が期待するように「これからの皆様の臨床の中で活かされることがあれば」、それは私たち精神医学の臨床現場への重大な破壊行為
  • 戸塚宏氏は、「脳幹論」を掲げ続け、以前の戸塚ヨットスクール事件と同様の「トレーニング」を繰り返し、死傷者を出現させている。戸塚氏の講演録を無批判のまま医学雑誌に掲載することは、子どもの最大の利益に反するものであり、精神医療に携わる者にとって許されるものではない。

などとする声明を発表し[3]、また、本講演の主催者である日本総合病院精神医学会の理事会も、

  • 本学会理事会は、戸塚氏が過去の暴力による体罰とその重大な結果について何ら反省を示していないこと、用いられている疾患概念等は精神医学の正しい理解に基づいたものではないこと、したがってその内容は本学会の見解とは全く相容れないことを全会一致で認定した。
  • このような講演が学会総会のみならず誌上で公にされ、結果として本学会が戸塚氏を支持しているかのような誤解を与えたことを遺憾とし、これまでおよび現在の戸塚氏の主張や立場を断じて容認しないことをあわせて表明するものである。本学会は、これまで通り「子どもたちに対するいかなる虐待も許さず、子どもの人権を守る」立場を堅持することを再確認し、総合病院における臨床実践を通して児童青年の精神健康の増進を図ることを宣言する。

などとする声明を発表した[21]。

入校歴のある著名人

関連作品

映画

ドキュメントドラマ形式のものであったが、上映の直前になって戸塚校長が逮捕されたため上映中止。その後戸塚が刑期終了したため、スクールを支援する団体が著作権を取得、2005年にビデオ化
戸塚ヨットスクール事件から26年、現在の戸塚ヨットスクールに密着したドキュメンタリー映画。
2009年10月に屋上から投身自殺をした訓練生の3日前の生前映像と、事件後、ヨットスクール内で行われた葬儀の映像も入っている。
2010年5月に東海地方向けに放送されたテレビドキュメンタリー番組を劇場化したもので、未ビデオ化。だが、2015年にCS・チャンネルNECOにてテレビ初放送された。

脚注

注釈

  1. パーキンソン病を患っていた際に、戸塚から「ウチに来れば病気が治る」との申し出を受けて入校。
  2. 前述の栄橋の付き添いとしての入校。
  3. 志らくと共に栄橋の付き添いとしての入校。

出典

  1. 戸塚ヨットスクール株式会社 第44期決算公告
  2. 戸塚宏校長の軌跡
  3. http://child-adolesc.jp/proposal/2015-04-15/ 2015.04.15「私の脳幹論」理事会声明
  4. 戸塚ヨットスクール・入校案内(2019年6月1日閲覧)
  5. 「失われようとしている子供たちのために」
  6. 戸塚ヨットスクール Q&A(2019年6月1日閲覧)
  7. “戸塚宏が「体罰」をやめた理由”. 木崎伸也・日本ビジネスプレスグループ (2021年7月9日). 2023年5月2日閲覧。
  8. 戸塚ヨットスクール訓練生が水死、自殺か事故か 愛知
  9. 「突発的で防げず」と戸塚校長 ヨットスクールで女性死亡 Archived 2013年5月1日, at the Wayback Machine.共同通信 2009年10月19日
  10. 戸塚ヨットスクール:訓練生の30歳、寮から転落し重傷毎日新聞 2011年12月20日
  11. 戸塚ヨットスクール寮から転落か 入校の30代男性重傷共同通信 2011年12月20日
  12. 戸塚ヨット訓練生、飛び降り?死亡…「辛い」と 読売新聞 2012年1月9日
  13. もう野放しにできない 少年犯罪に鉄槌を 戸塚宏
  14. “長谷川岳 『『己の身は己で守れ』』”. 参議院議員 長谷川岳 オフィシャルブログ「長谷川岳 強い北海道をつくる!」Powered by Ameba. 2024年3月21日閲覧。
  15. “長谷川岳 『『己の身は己で守れ』』”. 参議院議員 長谷川岳 オフィシャルブログ「長谷川岳 強い北海道をつくる!」Powered by Ameba. 2024年3月21日閲覧。
  16. 林田豊「統一教会『世界日報』のマスコミ戦略」『現代の眼』第19巻第11号、1978年11月、169頁。
  17. 副島嘉和、井上博明「これが「統一教会」の秘部だ 世界日報事件で"追放"された側の告発」『文藝春秋』第7号、1984年、134頁。
  18. “国立国会図書館サーチ Viewpoint = ビューポイント”. 国立国会図書館. 2024年3月22日閲覧。
  19. “恐怖を克服して自立 | オピニオンの「ビューポイント」”. 2024年3月21日閲覧。
  20. 我々の手で教育改革を!
  21. http://psy.umin.ac.jp/content/document/rijikai_seimei_20150509.pdf 第 27 回日本総合病院精神医学会総会における戸塚宏氏の特別講演に関する理事会声明
  22. コラム立川志らく第14回 暴力 後編 dZERO

関連項目

外部リンク

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