シャンプー

シャンプー: shampoo[注釈 1])は、頭髪および頭皮を洗浄するための洗剤である。シャンプーの形状には粉末、固形、ペースト、液状などがあるが、現代ではほとんどが後者のものである[1]。原語はヒンディー語で「マッサージをして頭皮、毛髪を清潔に保つ」[2]である。洗髪剤(せんぱつざい)と訳されることもある。

シャンプーによる洗髪

また、洗髪自体を「シャンプー」「シャンプーする」と言う。シャンプーで髪と頭皮を洗浄した後は、リンスコンディショナー、トリートメントなどで髪の保護をするのが一般的である。なお、洗髪の際にはシャンプーブラシが用いられることもある。

成分と形態

店頭で陳列販売されるシャンプー
数十年前のシャンプー

を基材に、ラウリル硫酸ナトリウムラウレス硫酸ナトリウムといった洗浄剤、増泡剤、保湿剤キレート剤、香料防腐剤を成分とする。

シャンプーの洗浄剤には、アミノ酸系、高級アルコール系、石けん系がある[3]

アミノ酸系
アミノ酸系は毛髪や頭皮に対する刺激は小さいが他に比べると洗浄力も若干弱い[3]。現代の洗髪回数の状況も考えると皮脂の分泌の少ない人に適した製品である[3]
高級アルコール系
高級アルコール系は他に比べるとやや洗浄力が高く、皮脂の分泌の多い男性や脂性肌の女性向けの製品である[3]。シャンプーの改良により特性を活かした配合製品も多く販売されている[3]
石けん系
石けん系は化学的には高級脂肪酸のナトリウムまたはカリウム塩でアルカリ性が強いため、アルカリ性に弱い毛髪への使用には注意が必要である[3]。ただし、石けん系シャンプーは脱脂力が大きいため、強い脂性肌には適切なアフターケアをすれば有効である[3]

なお、石けんの解釈の拡大により、弱酸と弱アルカリ塩からなる形状が固形石けんの界面活性剤も「石けん」と呼ばれることがあるため性状による分類との区別が必要である[3]

界面活性剤(洗剤)は、肌の油分を落とすことで肌の硬さ、乾燥、バリア機能の低下、刺激や痒みを起こすことがあるが、ステアリン酸やパルミチン酸のような飽和長鎖脂肪酸を添加することで、脂肪酸が補充されバリア機能の改善に役立つ[4]。こうしたバリア機能の破壊はフケの発生につながることがある[4]。(対応シャンプーは「フケ」の項を参照)

一般的にはシャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメントはそれぞれ別のパッケージで発売されるが、シャンプーとリンスが一緒になった機能を持つリンスインシャンプーも発売されている。そのほか、キャンプ介護・非常時等入浴ができない場合に水なしで洗髪できるドライシャンプーも販売されている。

なお、JIS規格ではシャンプーの容器に凹凸を付ける事が望ましいとされている。この容器の凹凸は視覚障害者がリンスの容器と区別するためのもので『識別リブ』と呼ばれる。

歴史

シャンプーの歴史

英語の shampoo の語源はヒンドゥスターニー語chāmpo (चाँपो [tʃãːpoː]) に因むもので、1762年には使われていた[5]

ヒンドゥスターニー語の chāmpoは、ムガル帝国ビハール州周辺において行なわれていた香油を使った頭部(髪)マッサージの事を示していた。このchāmpoは、東南アジアから南アジアにかけて自生し香料としても使われているキンコウボク(Magnolia champaca)が起源とも考えられている。

この頭部マッサージの習慣は、18世紀には英領インドから英国に伝わった。1814年にビハール州出身のシャイフ・ディーン・ムハンマドが、イギリス南部のリゾート地ブライトンの浴場ハンマームで頭部マッサージの提供を開始し、イギリス王室にも認められるところとなった[6]

20世紀初頭、ワシントンD.C.のC.L.ハミルトン社のシャンプーとローション

その後1860年ごろには、シャンプーが頭部マッサージから洗髪を意味するようになった。初期には石鹸が使われていたが、20世紀に入り頭髪用のシャンプーが販売され始めた。1954年にはカーペット等の洗浄の意味でも使われるようになった。

初期には石鹸にハーブを混入したものを洗髪に使用していたが、やがて石鹸シャンプーとして一般に普及。1930年代に至って界面活性剤が開発されると、高級アルコール系シャンプーが売り出される様になった。

20世紀以前

日本では、洗髪の習慣は過去に遡る程頻度が少なく、日本髪が結われていた時代は1ヶ月に一度程度というのが一般的であった。 明治時代の美容本「化粧のをしへ」によると、「女の髪の不潔になったのを嗅ぐと小便と同じ臭気がある、小便以上悪臭である」とされていることから、髪が不潔で臭かったことがうかがえる。 また、結う際に油で艶を付けるという考えから、洗髪によって髪を美しくするという概念は今ほど強くなく、ふのり米ぬか小麦粉などで髪の油分を奪う洗い方が多く用いられていた。日本に洋髪が入ってきた時代、日本人の硬く太い髪を洋髪にするのは困難であり、髪に適度な油分を与えるシャンプーが好まれるようになり、普及し始めた。現在では知る人は少ない、「七夕に髪を洗うと髪が美しくなる」という言葉は、洗髪が日課として行われていなかった時代を反映していると言える。

そんな中、江戸時代に「洗い髪」が、町屋、ことに花柳界の女性の伊達な誇りとして流行した。

明治期における和装女性の洗髪

江戸の女性は髪を洗うときは絞り染めの浴衣を着て、前垂を背にかけて、髪垢で着物が汚れないようにした。洗った後は髪が乾くまで散らし髪のまま近所を出歩き、乾くと油をつけないで仮結にし、それを粋の極致とした。この洗い髪の粋な艶姿で有名になったのは明治時代、東京の名妓、「洗い髪のお妻」である。

ただし、江戸でも御殿女中などが髪を洗うのは、依然甚だまれであった。髪を洗わない女性は唐でよく梳いて垢を取り去り、その後に匂油をつけて臭いを防いだ。

京阪でも髪を洗うのはすこぶるまれであったが、娼妓はしばしば髪を洗った。天保頃から江戸の女性を真似て往々髪を洗う女性が現れるようになった。しかし京阪では往来で散らし髪の女性は見られなかった。

くしけずることさえ「三箇月一度可梳之、日日不梳」(九条殿遺戒)といったほどであった。洗うよりも油を塗る方が多かった。最初期は粘土ヒルガオのような野生の蔓草の葉を搗いて砕いて、水に溶かした液体を用い、また灰汁などで洗った。関東では午の日に髪を洗うと発狂するといい、九州では夜、髪を洗うと根元から切れるという。民俗学者は前者は丙午の迷信と関連づけ、後者は『本朝医談』や『後見草』にあるかまいたちや妖狐などの仕業と考えた髪切の怪を思わせるという。髪洗いの吉日もあり、『権記』寛弘6年5月1日の条には暦林を引いて「五月一日沐髪良、此日沐令人明目長命富貴」という。阿波では旧10月の戌の日に行なう御亥の子祭の晩に髪を洗うと赤毛が黒くなり、老いても白髪にならないといい、福島市付近では七夕の夜、婦女が流に出て洗髪する。

明治時代の美容研究本「化粧のをしへ」(1908年発行)には、「女の髪の不潔になったのを嗅ぐと小便と同じ臭気がある、小便以上の悪臭である」と記され、シャンプーを行うことを進めている内容である。

20世紀以降

大正期から昭和初期になると白土・粉石けんなどを配合する髪洗いが流通するようになり[2]、その後、固形のシャンプーが発売されるようになってシャンプーという言葉が一般化した[2]。1950年頃までの洗髪の頻度は平均月1-2回であった。家に風呂を設置した「内風呂」の普及と1965年の瞬間湯沸かし器の発売以降、洗髪の頻度が高くなる。昭和30年代の洗髪頻度は5日に一回、1980年代には週2-3回となる。ほぼ毎日洗髪するようになったのは1990年代半ばである[7]

1926年に葛原工業より「モダンシャンプー」が出るが売れず、1932年に花王から「花王シャンプー」が発売される。 1950年以降には石鹸から界面活性剤へと変わり、なかでも「花王フェザーシャンプー」は、約80%のシェアを占めた[8]。このフェザーシャンプーのキャッチコピーは「5日に一度はシャンプーを」であった[7]

シャンプーには、洗浄の他、フケ・かゆみ防止の機能が求められ、消炎剤や抗菌剤が配合されていた。洗髪頻度が増えた1970年代から髪が傷むことが注目され、髪をケアするコンディショニング成分が加えられる。キューティクルケアという言葉もこの頃広まった[7]

1980年代中盤から朝早く起きてシャンプーをしてから通勤、通学する「朝シャン」が若い女性に流行し、1986年には資生堂から「モーニングフレッシュ」が発売されるなど、シャンプーが手軽に、短時間でできるような商品が開発された。シャンプーとリンスが一度で済むリンスインシャンプーのほか、裸になって風呂場まで行かずとも、洗面台で髪を洗えるシャンプードレッサーが登場した。女子学生の間でもセーラー服などの制服セーターミニスカート姿などの衣装着用のままでシャンプーをしてから出かける人も増え始めた。テレビCMの撮影でも、資生堂恋コロン 髪にもコロン ヘアコロン シャンプー」では、CMキャラクターとして若い女性6人がコーラス隊として、ブラウスにスカート着用のまま、「しなやか 恋コロン」と歌いながら、シャンプーをして髪全体を白く泡立てる描写もみられるようになった。別冊宝島には1987年のサブカル・流行の1つとして朝シャンが紹介されている[9]

1990年代後半に山形県で開発された「冷やしシャンプー」が、全国的に夏場に理容店で取り入れられている。主にトニック系、メントール系の強いシャンプーを冷凍庫に入れて冷やしたり、氷を混ぜて冷やしたりという手法がとられている。

主要メーカー

日本メーカー(一般製品)
日本メーカー(スカルプケア製品)

頭髪用以外のシャンプー

ペット用のシャンプーもあり、この場合はヒトのように頭に限定せず、全身を洗浄するものである。車の外装用洗剤を「カーシャンプー」という場合もある。

自動洗髪機(オートシャンプー)

自動で洗髪を行う機械、自動洗髪機(じどうせんぱつき)も存在しており、オートシャンプーと呼ばれている。これは主に理髪店で使われている。

主なメーカーと製品

そのほか三洋電機[11]パナソニック[12]セリックス[13][14]が開発に手を出していた。

脚注

注釈

  1. 英語発音: [ʃæmˈpuː]

出典

  1. 『現代商品大辞典 新商品版』 東洋経済新報社、1986年、615頁
  2. ティドビット〜水まわりのまめ知識〜”. TOTO. 2013年5月25日閲覧。
  3. 八木原陽一『毛髪の科学と診断 第4版』薬事日報社、2012年、11頁。
  4. Turner GA, Hoptroff M, Harding CR (August 2012). “Stratum corneum dysfunction in dandruff”. Int J Cosmet Sci (4): 298–306. doi:10.1111/j.1468-2494.2012.00723.x. PMC 3494381. PMID 22515370. https://doi.org/10.1111/j.1468-2494.2012.00723.x.
  5. Douglas Harper (65456). Online Etymology Dictionary”. 2012年10月4日閲覧。
  6. pp. 148–174, The travels of Dean Mahomet: an eighteenth-Century journey through India, Sake Deen Mahomet and Michael Herbert Fisher, University of California Press, 1997, ISBN 0-520-20717-3
  7. 洗髪の歴史”. 花王株式会社ヘアケアサイト. 2019年10月20日閲覧。
  8. 日刊工業新聞MOOK編集部『身近なモノの履歴書を知る事典』
  9. 別冊宝島2611『80年代アイドルcollection』p.93.
  10. TAKARABELMONT Report Vol.310 タカラベルモント 2017年9月14日
  11. 『三洋電機技報 8(1)(14)』 pp.45-53 全自動洗髪機の開発 三洋電機 1976年
  12. そこが知りたい家電の新技術 パナソニックが開発した「ヘッドケアロボット」で髪を洗ってきた Impress 2012年6月8日
  13. セリックスが自動洗髪機、人の手の感触に近く 日本経済新聞 2016年5月26日
  14. 洗髪ロボ 手洗い感覚へ セリックス、自社製品挑む 日本経済新聞 2018年2月21日

関連項目

外部リンク

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