橋口慎介

橋口慎介(はしぐち しんすけ、1975年昭和50年〉3月31日[1][2][3] - )は、日本中央競馬会(JRA)・栗東トレーニングセンター所属の調教師[2]。主な管理馬はグレイスフルリープ[4][5]レーヌブランシュ[6][7]セイウンハーデス[8][9][10]など。滋賀県出身[1][2]アイルランドリムリック大学馬科学科卒業[1]池添兼雄厩舎では2000年から2014年まで調教助手を務め[1][2]プライドキムなどを担当[11]。2014年12月、調教師試験に合格[12][13]。開業までは角居勝彦厩舎や父である橋口弘次郎の厩舎で技術調教師を務めた[1][14]。引退した父の厩舎を引き継ぐ形で2016年3月に橋口慎介厩舎を開業[13][15][14]

橋口慎介
2018年JBCスプリント表彰式
基本情報
国籍 日本の旗 日本
出身地 滋賀県
生年月日 (1975-03-31) 1975年3月31日(48歳)
所属団体 JRA
初免許年 2015年
経歴
所属 栗東T.C.

来歴

生い立ち・学生時代

1975年昭和50年)3月31日滋賀県生まれ[1][2]。1971年から栗東吉永猛厩舎に勤めていた橋口弘次郎[16]の長男として生まれる[13]。父の実弟はJRA騎手となる橋口満朗[17]。弟2人と年の離れた妹がいる[13][18][注 1]。1980年(昭和55年)に父・弘次郎は調教師免許を取得[16]。小学生の時に父は厩舎を開設し、父とともに慎介らもそこに住んでいたという[11]。学校ではトレセン関係者の子どもが多かったこともあり、中学3年時に友人と競馬学校騎手課程を受験[11][20]視力が足りずに不合格となるが[11][20]、将来調教師になることを決意する[20]高校では馬術部に所属していたという[20]

高校卒業後はアイルランドに渡り、馬上訓練や厩舎研修も行うリムリック大学馬科学科に進学[1][14][20][注 2]。海外留学には父・弘次郎の「英語も話せないといけない時代になってくる」という考えがあった[24]。大学ではエイダン・オブライエンといった調教師から学ぶ機会や、厩舎研修の時期にノーザンファームへ行く機会があったという[20]1999年平成11年)10月、JRA競馬学校の厩務員課程に入学[2][3]

池添兼雄厩舎時代

プライドキム(2010年)- 2006年で中央競馬を引退[25]。厩舎を移転して地方競馬に活躍の場を移した[25]

2000年(平成12年)4月に栗東池添兼雄厩舎の厩務員となる[2][注 3]。当時は父・弘次郎の厩舎に空きがなく、父やスタッフがやりづらくなることを懸念して父以外の厩舎を選んだという[11]。同年11月より池添厩舎の調教助手[2][注 3]。持ち乗り助手として全日本2歳優駿を制したプライドキムなどを担当した[11]。2014年2月からは攻め専助手を務めた[1]。池添厩舎ではやりたいことを全て任せてくれたため、試行錯誤を経て成功体験を積むことができたと振り返っている[11][20]

海外レースへの出走に憧れがあったといい[11]、父・弘次郎が管理するハーツクライドバイシーマクラシック遠征(1位)やキングジョージ遠征(3位)も見に行ったという[13][18]。父の管理馬であるワンアンドオンリー2014年(平成26年)にダービー制覇した際も現地に駆け付けている[12][18]。父の定年が近いことや当時同僚の池添学らの受験が契機となり、調教師試験を受験[11]。2度目の挑戦で2014年12月に合格する[12][13]

技術調教師時代

2015年(平成27年)3月から7月までは、角居勝彦厩舎で技術調教師を務める[1][14]。同年3月にワンアンドオンリードバイシーマクラシックに遠征した際には慎介も父・弘次郎に帯同し、体調不良になった父の代理で臨場を担当したという[14]。同年10月からは父の厩舎で技術調教師を務める[1]。父の体調不良もあり、事務的なことやメディア対応を任されたという[11]。また、弘次郎の通算1000勝を目指して厩舎が一丸になっていた[26](最終的に歴代16位となるJRA991勝を挙げ、地方や海外を加えると1006勝に達した[27][28])。

調教師時代(橋口慎介厩舎)

2016年(平成28年)3月1日、前月限りで定年を迎えた父・弘次郎のスタッフや馬を多く引き継ぎ、栗東トレーニングセンターに自身の厩舎を開業した[1][14][13][15]厩舎の系譜と特色」節も参照)。同月5日、阪神競馬場第7レース(4歳上500万下)をミカエルシチーで制し、初出走から2戦目で初勝利を挙げた[29]。この勝利を含め、デビュー週には全3勝を挙げている[14][注 4]。また、同年3月27日のドバイシーマクラシックにはワンアンドオンリーで遠征している[14][31][32](結果は5着[31][32])。

2016年8月18日、グレイスフルリープJpnIIIサマーチャンピオンを制し、開業後初の地方参戦で重賞初制覇を飾る[33][34]2017年(平成29年)9月10日には同馬で韓国GIのコリアスプリントを制する[35][36]2018年(平成30年)11月4日、京都競馬場で開催されたJBCスプリントをグレイスフルリープで制し、中央で初の重賞・交流GI(JpnI)初制覇を果たす[4][5][37][注 5]2020年令和2年)にはレーヌブランシュ関東オークスを制覇[6]

2021年(令和3年)4月11日には新潟第4Rをレディアリエスで勝利し、JRA通算100勝を達成[39]。さらに同年10月にはレーヌブランシュでレディスプレリュードを制し[7]、同年はこれまでで最多となるJRA27勝、地方1勝の年間28勝を達成している[15][40]2022年(令和4年)の第89回東京優駿では、プリンシパルステークスを制したセイウンハーデスダービーに初挑戦している[15][41](結果は11位[42])。

2023年(令和5年)にはセイウンハーデスで七夕賞を制し、芝のJRA重賞を初制覇[8][9]。橋口はJRAの重賞としては2勝目であり[43]、7月30日時点で2023年度リーディングトレーナー(全国)の7位になった[10]。セイウンハーデスは屈腱炎のため同年の新潟記念を出走回避したものの[44]、同年10月にはアーテルアストレアでレディスプレリュードを制覇した[45][46][注 6]

人物

厩舎服は濃い緑で胸に3つの星があるデザイン[48][49][注 7]。調教師としてダービー(東京優駿)出走・勝利を目指す[12][18][15]。「馬の走る気持ち」を重視しており、「誰もいなくなった後の静かな厩舎」では馬が自然な状態で一番状態が分かると語っている[50]。父・橋口弘次郎が毎晩馬を観察していたことから、厩務員が帰宅後に馬を見て回っているという[50]。また、育成牧場とのコミュニケーションも重視しているといい[51]ノーザンファームノースヒルズなどの育成牧場と付き合いがある[51]

2016年には理想の競走馬として持ち乗り助手時代のプライドキムを挙げ、素直で扱いやすく乗りやすい「競走馬として欠点が全くないような馬」だったと語っている[11]ケンタッキーダービー挑戦が計画されたこともあり、海外遠征の夢を見させてくれた思い出もあるという[11]。苦労した馬としては、父・弘次郎の厩舎から引き継いだダービー馬・ワンアンドオンリーを挙げている[20]。力のある馬でありながら結果を出せず、その後悔から馬の気持ちや「心身のバランスの重要性」をより重視するようになったという[20]

厩舎の系譜と特色

父・橋口弘次郎の厩舎からはワンアンドオンリーグレイスフルリープレッドアリオンクラレントなどの競争馬を引き継いだ[52][48]。スタッフの2名は他へ移籍して1名移籍してきたが、他のスタッフを引き継いでいる[24][48]。開業後は父の厩舎とは飼い葉も変え、坂路主体だった父に対し、角馬場での準備運動やコースでの追い切りを増やしているという[14][15]。また、自分の担当馬だけでなく厩舎全員で全ての馬を見るシステムになっており[14][15]馬房前には情報を共有するホワイトボードも置かれている[15]。2022年時点でスタッフは12名[51]

父の開業当初から在籍してダンスインザダークなどを担当した池平勉[53]や、ワンアンドオンリーなどを担当した甲斐純也[54][13][注 8]を始めとしたスタッフも引き継いだ[14][15]。慎介はスタッフには子供の頃から知られていたため開業当初は「慎介」と呼ばれていたが、騎手小牧太の提案で「慎ちゃん」と呼ばれるようになったという[11][19][注 9]SNSで担当馬の情報発信をしたり[58][注 10]、馬房のネームプレートやゼッケンに馬を表すイラストを描いて楽しみながら仕事をする調教助手もいる[54][58][注 11]常石勝義によると弘次郎時代の厩舎は「ギスギス感はなくほっこり和やかムード」で[26][注 12]、慎介厩舎の開業後についても小牧太は「和気あいあいとしたいい雰囲気」と語っている[19][14]

調教師成績

概要

日付競馬場・開催競走名馬名頭数人気着順出典
初出走2016年3月5日1回小倉7日4R3歳未勝利オールスマイル16頭59着[2][62]
初勝利2016年3月5日1回阪神3日8R4歳上500万下ミカエルシチー16頭11着[29][2][63]
重賞初出走2016年4月3日3回中山4日11Rダービー卿チャレンジトロフィークラレント16頭1114着[37][64]
重賞初勝利2016年8月18日10回佐賀3日10Rサマーチャンピオングレイスフルリープ12頭11着[33][34][65]
GI初出走2016年6月5日3回東京2日11R安田記念クラレント12頭108着[37][66]
GI/JpnI初勝利2018年11月4日5回京都2日10RJBCスプリントグレイスフルリープ16頭41着[5][4][67]

主な管理馬

※括弧内は当該馬の優勝重賞競走、太字はGI級競走

年度別成績

脚注

注釈

  1. 妹は歌手のYeYe(橋口なつこ)[19]。騎手の小牧太によると、慎介も歌がうまいという[19]
  2. リムリック大学は「Science courses」に「Bachelor of Science in Equine Science」の課程を設けている[21][22]。ちなみに日本ウマ科学会の英語名は「Japanese Society of Equine Science」[23]
  3. 2000年4月から持ち乗り助手という文献[1]もあるが、日本中央競馬会の情報[2]に従った。
  4. デビュー週の3勝は1985年以降の最多記録であった[30]
  5. JBCスプリント地方競馬場の持ち回りで開催されていたが、2018年はJRA主催により京都競馬場で開催された[38][4]
  6. アーテルアストレアは同年11月にはJBCレディスクラシックに挑戦したが、アイコンテーラーグランブリッジに次ぐ3着であった[47]
  7. 色は父・橋口弘次郎ゆずりの緑でスターバックスと同じ色を採用[48][49]。星は「ミシュランの三ツ星のように一流になりたい」という思いが込められている[48][49]
  8. 甲斐純也の父・甲斐正文は弘次郎厩舎の初代厩務長で[55]ダイタクリーヴァなどを担当した[56]
  9. 小牧は弘次郎厩舎の最後レースで騎手を務め、弘次郎からは引退時に「慎介を頼むぞ」と言われていたという[57]
  10. 橋口厩舎の中の人による非公式Twitter (@PKjvz) - X(旧Twitter)、2023年10月7日(UTC)閲覧。
  11. 調教助手の酒井慎は、カバジェーロならカバ、ゴーストならお化けといった具合のイラストを描いていた[54]。ゴーストは「おばけくん」として人気になり[54][59][60]、厩舎にはファンレターやお守りが届いたという[60]。また、ゴーストのぬいぐるみを持って酒井助手の担当場の応援をするファンもいるという[58]
  12. 調教師矢作芳人は、橋口弘次郎から「調教師と厩務員がいがみ合っているような厩舎ではダメだ。矢作君、従業員を大事にしろよ」と言われたという[61]
  13. 橋口弘次郎厩舎から引き継ぎ(2016年3月1日付転厩)[48][52]。2016年ドバイシーマクラシック5着[31][32]、2017年アメリカジョッキークラブカップ5着[72]
  14. 橋口弘次郎厩舎から引き継ぎ(2016年3月1日付転厩)[48][52]。2016年マイラーズカップ3着[73]、2017年京王杯スプリングカップ2着[74]
  15. 橋口弘次郎厩舎から引き継ぎ(2016年3月1日付転厩)[52]。2017年コリアスプリント制覇[35][36]、2018年JBCスプリント制覇[4][5]
  16. 2020年関東オークス制覇[6]、2021年レディスプレリュード制覇[7]
  17. 「おばけくん」として人気になった「ゴースト」は芦毛の長距離馬[54][59][60]。2016年4月23日生まれで、父はハーツクライ、母はガヴィオラ[75]。気性の荒さから初レース後に騸馬となり、厩舎も橋口慎介厩舎へ移転[54]。2021年の阪神大賞典では心室細動で競争中止となるが、同年の天皇賞(春)には出場[54]。同年12月のステイヤーズステークスでは5着[76]。翌2022年に障害へ転向するも屈腱炎を発症し、JRAの登録を抹消[59][60][77]北海道で休養後は地方競馬への移籍に向けてチャンピオンヒルズで訓練し、2023年10月22日に浦和競馬の宇野木博徳厩舎に入厩[60][58][78]
  18. 2023年七夕賞制覇[8][9][10]

出典

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  2. JRAホームページ「調教師名鑑」において「は行」「栗東 橋口 慎介」と進み、「プロフィール」を閲覧(2023年7月24日(UTC)閲覧)。
  3. 【菊花賞】(10)セイウンハーデス ブリンカー効果で集中!橋口師4組目父子制覇へ”. Sponichi Annex. スポーツニッポン新聞社 (2022年10月21日) 2023年8月15日(UTC)閲覧。
  4. 「第18回農林水産省賞典JBCスプリント(JpnI)」『優駿』第79巻第901号(2019年1月号)、2018年12月、78-79頁。
  5. 【JBCスプリント】8歳馬グレイスフルリープが先行押し切る”. サンスポZBAT!競馬. サンケイスポーツ. (2018年11月4日) 2023年7月18日(UTC)閲覧。
  6. 【関東オークス全着順】松山弘平騎手騎乗のレーヌブランシュが重賞初制覇!2冠馬アクアリーブルが2着”. ニュース. netkeiba.com (2020年6月11日) 2023年8月15日(UTC)閲覧。
  7. JRAのレーヌブランシュが4角先頭から押し切る/レディスプレリュード”. 極ウマ. 日刊スポーツ. (2021年10月7日) 2023年8月15日(UTC)閲覧。
  8. 阿部泰斉 (2023年7月10日). “まさに幸福!幸騎手がセイウンハーデスで福島重賞初V、サマー2000主役に名乗り/七夕賞”. 日刊スポーツ. 2023年7月23日(UTC)閲覧。
  9. 西山智昭 (2023年7月10日). “【七夕賞】セイウンハーデス、重賞6度目の挑戦で願いかなえたV 幸英明騎手は福島で初の重賞制覇”. スポーツ報知. 報知新聞社. 2023年7月23日(UTC)閲覧。
  10. 「サマー2000シリーズ第59回七夕賞」『優駿Book in Book 2023年vol.7』、2023年、7-8頁(『優駿』第83巻第957号〈2023年9月号〉、2023年8月、付録)。
  11. 東奈緒美 (2016年8月8日).“【新規開業】橋口慎介調教師(2)『欠点が全くない!理想の競走馬はプライドキム』”. 東奈緒美・赤見千尋のおじゃ馬します. netkeiba.com 2023年7月18日(UTC)閲覧。
  12. 花岡貴子 (2014年12月11日). “渡邊薫彦「トップロードのような馬を育てたい」/新規調教師の栗東共同会見”. 競馬ニュース. netkeiba.com 2023年7月23日(UTC)閲覧。
  13. 木南友輔 (2015年3月25日).“ワン父子制覇へ橋口弘師父子タッグ/ドバイシーマC”. 極ウマ. 日刊スポーツ. 2023年7月17日(UTC)閲覧。
  14. 東奈緒美 (2016年8月1日).“【新規開業】橋口慎介調教師(1)『なんとしても父の定年までに合格しなければ!』”. 東奈緒美・赤見千尋のおじゃ馬します. netkeiba.com 2023年7月18日(UTC)閲覧。
  15. 大西修平 (2022年5月24日). “【競馬】橋口家親子2代の夢舞台 セイウンハーデスでダービーに初挑戦する橋口慎介調教師”. デイリースポーツ. 2023年7月18日(UTC)閲覧。
  16. 岡本光男「[ダービートレーナー物語]橋口弘次郎 ダービー出走20頭目に名調教師が手に入れたもの」優駿』第74巻第847号(2014年7月号)、2014年6月、24-27頁。
  17. 木村幸治『調教師物語』洋泉社、1997年、ISBN 4896912926。
  18. 東奈緒美 (2016年8月15日).“【新規開業】橋口慎介調教師(3)『父は本当に幸せ、あんな調教師人生を送りたい』”. 東奈緒美・赤見千尋のおじゃ馬します. netkeiba.com 2023年7月18日(UTC)閲覧。
  19. 不破由妃子 (2016年3月29日). “「楽しみな馬が出てきました!」ネクストムーブの将来性”. 太論. netkeiba.com 2023年8月6日(UTC)閲覧。
  20. 澤風哉 (2022年5月12日).“調教師 橋口慎介先生インタビュー(前編)”. インタビュー記事. UMAUMA. 2022年7月18日(UTC)閲覧。
  21. Science”. University of Limerick. 2023年7月20日(UTC)閲覧。
  22. Bachelor of Science in Equine Science”. University of Limerick. 2023年7月20日(UTC)閲覧。
  23. 日本ウマ科学会 (jses)”. 日本ウマ科学会. 2023年7月20日(UTC)閲覧。
  24. 常石勝義 (2016年3月8日).“「柔軟に柔らかく愛情を注ぎながら仕事をすること」橋口弘次郎調教師にインタビュー”. 常石勝義が見つけた競馬の職人 netkeiba.com 2023年7月17日(UTC)閲覧。
  25. プライドキム、登録を抹消”. 競馬ニュース. netkeiba.com (2006年9月5日) 2023年7月23日(UTC)閲覧。
  26. 常石勝義 (2015年9月8日). “「橋口先生も来年2月で引退されるからこの秋はいい競馬をしたい」甲斐助手にインタビュー”. 常石勝義が見つけた競馬の職人 netkeiba.com 2023年8月3日(UTC)閲覧。
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