徳川家康 (山岡荘八)
『徳川家康』(とくがわいえやす)は、1950年3月から1967年4月まで北海道新聞・東京新聞・中日新聞・西日本新聞に連載された山岡荘八の歴史小説。単行本は1953年11月に第1巻から5巻までが同時刊行され[1]、1967年に最終巻の第26巻が刊行された。ソフトカバー版、講談社文庫版、講談社の山岡荘八歴史文庫版などがある。
| 徳川家康 | ||
|---|---|---|
![]() 第1巻。1953年11月14日初版発行。 | ||
| 著者 | 山岡荘八 | |
| 発行日 |
1953年 - 1967年 全26巻 | |
| 発行元 | 講談社 | |
| ジャンル | 時代小説 | |
| 国 |
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| 形態 | 上製本 | |
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概要

主人公の徳川家康の生母、於大の方の縁談から、家康逝去までの七十余年が描かれている。完成のために使用した原稿用紙は17,400枚に上る。ギネスブックにおいて、マルセル・プルースト著『失われた時を求めて』(1913-1927年出版、フランス語原書3000ページ、日本語訳400字詰め原稿用紙10,000枚)やジュール・ロマン著『善意の人々』(1932-1946年出版、全27巻)と並び、「世界最長の小説」として認定されていたことがある[2][3][4]。
山岡は第二次世界大戦中、従軍作家として多くの特攻隊員を取材した経験があった。その際に触れた日本の存続や世界平和への祈りを胸に秘めて散っていった彼らの思いを、徳川家康の欲した「泰平」に重ね合わせて描こうとした。山岡は連載を終えた後書きを、自邸内に設けた特攻隊員を祀る「空中観音」小堂で書き記している。
連載当初は、新興の織田家と超大国である今川家にはさまれ、独立もままならない松平家の苦難と発展を、当時の日本の姿に重ね合わせる読者も多かったという。また、明治以降の一般的家康イメージから大きくかけ離れた「戦のない世を作ろうと真摯に努力する家康」「なんとか大坂の陣を回避し豊臣秀頼を助命しようとする家康」「皇室尊崇の念の篤い家康」は、「狸親父家康」のイメージを改善するのに大きく貢献した。後にはビジネス本としても評判となり、経営者虎の巻のような扱われかたもした。ジャイアント馬場や落合博満、横山光輝など、各界の著名人も愛読したという。
韓国では「大望」という題名で出版され、ベストセラーとなった。また中国でも2007年秋の刊行以来、全13巻計200万部を売るベストセラーになっており、2011年に第13巻の翻訳者岳遠坤が 第18回野間文芸翻訳賞を受賞した。
タイトル
- 第1巻 出生乱離の巻 (於大、広忠の婚姻 家康の出生)
- 第2巻 獅子の座の巻 (今川家へ人質へ行く途中、織田家に拉致される 父、広忠の死 人質交換で今川家に)
- 第3巻 朝露の巻 (織田家の台頭 桶狭間の戦い)
- 第4巻 葦かびの巻 (岡崎への帰還 織田信長との同盟 一向一揆)
- 第5巻 うず潮の巻 (三方ヶ原の大敗 信玄の死)
- 第6巻 燃える土の巻 (武田勝頼との戦い 家臣の裏切り)
- 第7巻 颶風の巻 (信康の切腹 長篠の戦い)
- 第8巻 心火の巻 (武田家の滅亡 本能寺の変)
- 第9巻 碧雲の巻 (羽柴秀吉と織田家の内紛)
- 第10巻 無相門の巻 (秀吉との確執 外交戦略)
- 第11巻 竜虎の巻 (秀吉の台頭 和解)
- 第12巻 華厳の巻 (秀吉との同盟)
- 第13巻 侘茶の巻 (北条氏の滅亡 関東移封)
- 第14巻 明星瞬くの巻 (利休の死 朝鮮出兵)
- 第15巻 難波の夢の巻 (秀吉の死 家康の台頭)
- 第16巻 日蝕月蝕の巻 (石田三成との確執)
- 第17巻 軍荼利の巻 (関東出兵 三成の陰謀)
- 第18巻 関ケ原の巻 (関ヶ原の戦い)
- 第19巻 泰平胎動の巻 (戦後処理 豊臣家との関係構築)
- 第20巻 江戸・大坂の巻 (家光の誕生 内紛)
- 第21巻 春雷遠雷の巻 (国内統治 海外貿易)
- 第22巻 百雷落つるの巻 (大坂の軍備増強)
- 第23巻 蕭風城の巻 (平和交渉決裂 一触即発)
- 第24巻 戦争と平和の巻 (真田幸村入城 大坂冬の陣)
- 第25巻 孤城落月の巻 (大坂夏の陣 豊臣家の滅亡)
- 第26巻 立命往生の巻 (伊達政宗の反乱 家康の死)
登場人物
徳川家の人々
- 徳川家康
- (竹千代→松平次郎三郎元信→松平元康→徳川家康)
- 主人公。岡崎と浜松の城主。江戸幕府初代将軍となった。
- 松平広忠
- 家康の父。岡崎の戦国大名。
- 伝通院
- (於大→伝通院)
- 水野忠政の娘で、広忠の正室となるが離縁され、阿古居城城主・久松佐渡守弥九郎と再婚。後に夫と共に家康の居る岡崎へ帰る。
- 家康(竹千代)の生母。
- 松平清康
- 広忠の父で、家康の祖父。三河松平氏(安祥松平家)の第7代当主。
- 華陽院
- (お富→華陽院・源応尼)
- 於大の母で、家康の祖母。元は水野忠政の妻だったが、後に松平清康の継室となった。
- 恵新
- 家康と同日同時刻に生まれた異母兄弟。将来松平家で内紛が起きる可能性を危惧した祖父の松平左近乗正の配慮で、仏門に入る。
- 勘六
- 家康の異母兄。
- お久
- 広忠の側室で、勘六と恵新の生母。
- お春
- 広忠の側室。家臣・岩松八弥の許嫁者。
- 真喜姫
- (真喜姫・田原御前)
- 於大離縁後の広忠の継室。田原城主・戸田弾正の娘で、戸田宣光の妹。
家康の正室・側室
家康の子女
徳川家の嫁・孫
親類たち
- 奥平信昌
- (奥平九八郎貞昌→奥平信昌)
- 亀姫の夫。
- 奥平美作守貞能
- 九八郎貞昌の父。作手の亀山城主。山家三方衆の1人。
- 水野忠政
- 於大の実父で家康の外祖父。刈谷水野家当主。
- 久松佐渡守俊勝
- (久松弥九郎→久松佐渡守俊勝)
- 於大の再婚相手。阿古居城城主。岡崎へ移ってからは留守居。
- 水野信近
- (藤九郎→水野信近・竹之内久六)
- 水野忠政の三男、於大の実兄。暗殺されかかったのを契機に元の名を捨て、再婚した妹の嫁ぎ先の家臣として於大の身辺を守る。
- 水野忠近
- 忠政の六男、於大の実弟。
- 水野信元
- (藤五郎→水野信元)
- 忠政の二男、於大の異母兄。土井利勝の実父。刈谷城城主。下野守。
- 西郷義勝
- お愛の亡夫。元徳川家家臣。
- 戸田弾正
- 田原城城主。宣光と田原御前の実父。
- 戸田宣光
- 田原御前の兄。戸田弾正の長男。
- 松平信定
- 安祥城城代。広忠の大叔父。
- 奥平千丸
- 九八郎貞昌の弟。美作守貞能の二男。
幼少期(岡崎・駿府人質時代)
青年・壮年期(岡崎・浜松時代)
- 井伊直政
- (井伊万千代→井伊直政)
- 徳川四天王の一人。井伊家当主。元曳馬野城主・井伊直親の子。
- 石川数正
- 大久保忠世
- 新八郎の甥で甚四郎の子。
- 大久保忠隣
- 大久保忠世の長男。
- 酒井忠次
- 徳川四天王の一人。
- 榊原公平太康政
- 徳川四天王の一人。
- 平岩親吉
- 本多作左衛門
- 三河三奉行の一人。家康の年長の家臣。若き日の家康を教育する。歯に衣着せぬ物言いで、時に家康をバカ呼ばわりすることも。
- 中野五郎重政
- 松平家忠
- 服部半蔵
- 蜂屋貞次
- (蜂屋半之丞→蜂屋貞次)
- 高力清長
- 松平左近忠次
- 石川家成
- 鈴木久三郎
- 夏目正吉
- 本郷左衛門助清員
- 家康の側室・愛の叔父。
- 渡辺半蔵
- 大河内政局
- 鳥居強右衛門
- 奥平貞昌(信昌)の直臣。
- 六兵衛
- 奥平美作守貞能の直臣・供。
- 小笠原長忠
- 松平親俊
- 石川太郎左衛門
- 天方山城通綱
- 近藤壱岐
- 夏目五郎左衛門治貞
- 奥平美作守貞昌の直臣。
- 黒屋甚九郎
- 奥平美作守貞能の直臣。千丸の供。
- 鳥居三左衛門
- 野田城の戦いで、野田城より家康への使者を務める。
- 於初(初千代)
- 信康の小姓。
- 松丸
- 大賀弥四郎
- 家康の正室の瀬名(鶴姫)築山殿と不義密通の末に家康への謀叛を企てる。武田の間者となるが、発覚してのこぎり引きの刑に処せられ死亡する。
- 倉地平左衛門
- 大賀弥四郎の謀叛に協力したことが発覚し、処刑される。
- 小谷甚左衛門
- 大賀弥四郎の謀叛に協力して武田の密使となるが、発覚して渡辺半蔵に捕らえられる。
- 山田八蔵
- 大賀弥四郎にそそのかされて家康へ謀反の密使をさせられるが罪悪感を感じ、隋風(天海)に諭されて改心し、同じ家臣の近藤壱岐を介して家康に弥四郎謀叛を伝える。
老年・晩年期(駿府・江戸時代)
家臣の家族・侍女たち
- 小夜
- 本多平八郎忠高の妻(後家)で、平八郎忠勝の母。
- 本多作左衛門の妻
- 加津
- 石川数正の妻。
- 阿紀
- 須賀
- 松平広忠の老侍女。
- 小笹
- 於大の侍女。水野家家臣・杉山元六の妹。
- 百合
- 於大の侍女。
- お貞
- 松平家家臣・天野清左衛門の妻で竹千代(家康)の乳母。
- 亀女
- 松平家家臣・清水孫左衛門の妻で竹千代(家康)の乳母。
- 琴女
- 築山の召使。喜乃の姉。
- 琴女
- 得姫の召使。琴女の妹。
- 小侍従
- 徳姫の侍女・召使。
- おふう
- 奥平貞昌の直臣・夏目五郎左衛門治貞の娘。
- 菊乃
- あやめの部屋子。
- 粂
- 大賀弥四郎の妻。
- 楓
- 田原御前の侍女。
織田家の人々
- 織田信長
- (吉法師→織田信長)
- 家康の盟友。那古野城城主
- 織田信忠
- (奇妙丸→織田信忠)
- 信長の長男。
- 織田信雄
- (茶筅丸→織田信雄)
- 信長の次男。小牧・長久手の戦いで家康と協力して秀吉と戦う。
- 濃姫
- 信長の正室、斎藤道三の娘。
- 織田信秀
- 信長の父。尾張の戦国大名。
- お市
- 信長の実妹。浅井長政に嫁ぎ、淀殿・常高院・小督を産んだ。のちに柴田勝家に再嫁する。
- 常高院
- お市の次女。
- 織田有楽斎
- 信秀の十一男。
- 織田信広
- 信長の庶兄。安祥城城主。
- 織田信行
- 信長の異母弟。
- 織田長利
- (又十郎→織田長利)
- 信長の末弟。
- 類
- 信長の側女。家臣・生駒出羽の妹。徳姫・信忠(奇妙丸)・信雄(茶筅丸)を産んだ。
- 織田信孝
- (三七丸→織田信雄)
- 信長の三男。
- 深雪
- 信長の側女。信孝(奇妙丸)を産んだ。
- 織田三法師
- 信長の実孫、信忠の長男。
- 織田源三郎
- 信長の五男。
- 織田信平
- 信秀の叔父。
- 織田彦五郎
- 尾張下四郡の守護代。
- 岩室雪
- 信秀の側室。家臣・岩室孫三郎の娘。信長の末弟・長利(又十郎)を産んだ。
織田家の家臣たち
豊臣家の人々
西軍諸将(関ヶ原戦役)
東軍諸将(関ヶ原戦役)
今川家の人々
武田家の人々
諸大名と、その関係者
家康のブレーン
- 納屋蕉庵
- (竹之内波太郎(熊野若宮)→納屋蕉庵)
- 三河の有力郷士から後に堺の豪商にまで上り詰めた。
- 織田信長、日吉丸(豊臣秀吉)、明智光秀、随風(天海僧正)などに一目置かれている有力な郷士。「桶狭間の戦い」の作戦に重要な役目を果たす。後半は堺の豪商納屋蕉庵として家康の前に現れる。蕉庵(波太郎)自体は架空の人物だが、記紀に伝わる古代日本の竹之内宿禰の末裔と設定され、同時代にも存在したであろう末裔の人物をイメージしてアレンジが成されている。
- 天海
- (随風→天海)
- 僧侶。時折、修行の途中に熊の若宮(蕉庵)の屋敷に立ち寄り、天下国家を語る。若き日の日吉丸(秀吉)や明智十兵衛(光秀)を伴って来る。大賀弥四郎にそそのかされて家康に謀反すべきかと迷っていた家臣・山田八蔵と山中で出会った際に「誰にでも御仏のお慈悲はある」と助言したり、北条氏直に諌言して秀吉との講和を勧めたりする。
- 金地院崇伝
- 西笑承兌
- 茶屋四郎次郎(初代)
- 元徳川家の家臣で、堺の商人。家康の伊賀越えに同行した。
- 茶屋又四郎(ニ代目茶屋四郎次郎)
- 元徳川家の家臣。父親の跡を継いで商人になり、家康に協力する。
- 茶屋四郎次郎(三代目)
- 茶屋家後継者として商人の立場で家康に協力する。
- 本阿弥光悦
- 刀の砥ぎ師、鑑定師。家康に心酔し協力する。日蓮宗の信者で清廉潔癖な人物。
- 近衛前久
- 公卿。
その他
- 於国
- 納屋蕉庵(竹之内波太郎)の妹。架空の人物。
- 於俊
- 水野家家臣・土方一族の娘。
- 糟谷長閑
- 灸医師。
- 大石村孫四郎
- 伊賀大石村の百姓。伊賀越えの途上で家康一行が出逢った一揆の頭目。
- 柘植三之丞
- 伊賀の地侍。伊賀越えをする家康一行に協力して警護・道案内にあたる。
- 孫三
- 伊勢白子浜の漁師。伊賀越えを果たした家康一行の為に自分の船を提供する。
- 土方縫殿助
- 水野忠政の家臣。
- 土方縫殿助の弟
- 難波(大阪)の弥陀本尊社の宮司。元水野家家臣。
- 小村三郎左衛門
- 出雲の鍛冶。
- 杉山元六
- 於大の侍女・小笹の兄。水野家家臣。
- 藤野勝楽
- 加賀の富樫一族。武田信玄への密使として派遣される。
- 芥川東馬
- 水野信元の家臣。
女性の役割
弱い立場である女性も、平和のために男達に立ち向かう姿が描かれている。
- 家康の祖母華陽院は人質になっている竹千代(家康)の養育のために雪斎禅師に交渉して岡崎から駿府に移り住んだ。
- 家康の母於大は一向一揆で逆らう家臣に激怒する家康を諌める。
- 前田利家の妻芳春院は戦闘状態にあった羽柴秀吉との和解を夫に進言する。後年、利家亡き後、家康から疑いを掛けられた時進んで人質になり、百万石の前田家を守った。
- 秀吉の正室北の政所は、夫の死後大坂城の自分の住まいを進んで家康に明け渡し、その後の交渉を有利に進めた。
- 細川忠興の正室ガラシャは、関ヶ原の戦いの直前、石田三成から人質として大坂城に入るようとの要請を断り、自害して果てた。他家の女性がこれに習うのを恐れた三成は、人質の要請を断念した。
- 家康の不信を受け謹慎させられた夫松平忠輝を救うため、正室五郎八姫は天海僧正に寛大な処分が下されるよう嘆願し、これを助命した。
関連書籍
- 山岡荘八『随想徳川家康』(講談社 1963年)
- 山岡荘八『少年徳川家康』全5巻(講談社 1964年)
- 山岡荘八『少年少女徳川家康』全5巻(講談社 1983年)改題新装版
- 山岡荘八『徳川家康名言集』(講談社 1967年)
- 山岡荘八・桑田忠親『歴史対談 徳川家康』(講談社 1972年)
- 山岡荘八・桑田忠親『歴史対談 徳川家康』(講談社文庫 1979年)ISBN 978-4061315501
- 山岡荘八『史談 家康の周囲』(毎日新聞社 1982年)ISBN 978-4620303642
- 山岡荘八『史談 家康の周囲―歴史随想集』(光文社時代小説文庫 1987年)ISBN 978-4334706227
- 山岡荘八『徳川家康を語る』(あずさ書房 1983年)ISBN 978-4871652117
脚注
- 中谷博「山岡荘八氏の『徳川家康』を讃える―大衆文学の一傑作」 『自警』1954年3月号、自警会。
- アラン・ラッセル, ed (1986). 世界記録事典 ギネスブック'87. 大出健. 講談社. p. 328. ISBN 4-06-202948-0
- 2011.10.03 文春写真館「ギネス記録を持つ“元祖・国民作家”山岡荘八」2018年2月3日閲覧
- ブックオフオンラインコラム 本を楽しむ、本の豆知識・雑学「世界一長い小説と日本一長い小説とは?2018年2月3日閲覧

