こぎつね座
こぎつね座(こぎつねざ、Vulpecula)は、現代の88星座の1つ。17世紀後半に考案された新しい星座で、キツネがモチーフとされている[1][3]。こと座のベガ、はくちょう座のデネブ、わし座のアルタイルからなる「夏の大三角」に囲まれるように位置しているが、4等星より明るい星がなく目立たない星座である。
| Vulpecula | |
|---|---|
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| 属格形 | Vulpeculae |
| 略符 | Vul |
| 発音 | 発音: [vʌlˈpɛkjʊlə]、属格:/vʌlˈpɛkjʊliː/ |
| 象徴 | キツネ |
| 概略位置:赤経 | 18h 57m 06.5s - 21h 30m 38.9s[1] |
| 概略位置:赤緯 | +19.40° - +29.49°[1] |
| 広さ | 268平方度[2] (55位) |
| バイエル符号/ フラムスティード番号 を持つ恒星数 | 33 |
| 3.0等より明るい恒星数 | 0 |
| 最輝星 | α Vul(4.45等) |
| メシエ天体数 | 1 |
| 隣接する星座 |
はくちょう座 こと座 ヘルクレス座 や座 いるか座 ペガスス座 |
主な天体
この星座には4等より明るい星はないが、亜鈴状星雲やコートハンガーなどアマチュア天文家の観測対象となる星雲や星団がある。
その他
- PSR B1919+21:1967年に史上初めて発見されたパルサー。アントニー・ヒューイッシュの指導の下でクエーサーを観測していたジョスリン・ベルによって偶然発見された[8]。
由来と歴史

この星座は、17世紀末にポーランドの天文学者ヨハネス・ヘヴェリウスによって考案された[3]。初出は、ヘヴェリウスの死後の1690年に妻Catherina Elisabetha Koopman Hevelius によって刊行された著書『Prodromus Astronomiae』に収められた星図『Firmamentum Sobiescianum』と1687年の日付が残る星表『Catalogus Stellarum』である。ただし、『Firmamentum Sobiescianum』ではAnser(ガチョウ)と Vulpecula(キツネ)という2つの独立した星座として扱われた[3][9]が、『Catalogus Stellarum』では Vulpecula cum Ansere(ガチョウをくわえたキツネ)という1つの星座とされるなど、星座とその名称に混乱が見られた[3]。
1729年に刊行されたジョン・フラムスティードの星図『Atlas Coelestis』では Vulpec & Anser とされた[3]。1845年にフランシス・ベイリーが刊行した『British Association Catalogue』では、最輝星にギリシア文字のαが振られ、星座名は短縮されて Vulpecula とされた[3]。
1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Vulpecula、略称は Vul と正式に定められた[10]。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。
呼称と方言
日本では、1879年(明治12年)にノーマン・ロッキャーの著書『Elements of Astronomy』を訳した『洛氏天文学』が刊行された際に「ウェルペキュラエトアンセル」と紹介された[11]。その後明治末期には「小狐」という訳語が充てられていたことが、1910年(明治43年)2月刊行の日本天文学会の会報『天文月報』第2巻11号に掲載された「星座名」という記事でうかがい知ることができる[12]。この訳名は、1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にも「小狐(こきつね)」として引き継がれ[13]、1943年(昭和18年)刊行の第19冊まで継続して使われた[14]。1944年(昭和19年)に天文学用語が改訂されると、その際に読みが「こぎつね」と改められた[15]。そして、戦後の1952年(昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[16]とした際に、Vulpecula の日本語の学名は「こぎつね」と定まり[17]、これ以降は「こぎつね」という学名が継続して用いられている。
1928年(昭和3年)に天文同好会[注 1]の編集により新光社から刊行された『天文年鑑』の第1号では「きつね」という呼称が使われた[18]。天文年鑑の編集に携わった天文同好会の山本一清は「最も妥当だと信ずる星座の名の一覧表」でも Vulpecula に対応する訳名を「きつね」としている[19]。また、1931年(昭和6年)3月に刊行された『天文年鑑』第4号では、星座名は Vulpecula cum Ansere、訳名は「小狐と鵞鳥」とされた[20]。以降、天文年鑑ではこの星座名と訳名が継続して用いられた[21]。
脚注
注釈
- 現在の東亜天文学会。
出典
- “The Constellations”. 国際天文学連合. 2023年1月16日閲覧。
- “星座名・星座略符一覧(面積順)”. 国立天文台(NAOJ). 2023年1月1日閲覧。
- Ridpath, Ian. “Vulpecula”. Star Tales. 2023年1月17日閲覧。
- Mamajek, Eric E. (2022年4月4日). “IAU Catalog of Star Names (IAU-CSN)”. 国際天文学連合. 2023年1月17日閲覧。
- "alp Vul". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月17日閲覧。
- "Cl Collinder 399". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月17日閲覧。
- Hewish, A.; Bell, S. J.; Pilkington, J. D. H.; Scott, P. F.; Collins, R. A. (1968). “Observation of a Rapidly Pulsating Radio Source”. Nature (Springer Science and Business Media LLC) 217 (5130): 709-713. Bibcode: 1968Natur.217..709H. doi:10.1038/217709a0. ISSN 0028-0836.
- Ridpath, Ian. “Hevelius's depiction of Vulpecula”. Star Tales. 2023年1月17日閲覧。
- Ridpath, Ian. “The IAU list of the 88 constellations and their abbreviations”. Star Tales. 2023年1月16日閲覧。
- ジェー、ノルマン、ロックヤー 著、木村一歩、内田正雄 編『洛氏天文学 上冊』文部省、1879年3月、59頁。
- 「星座名」『天文月報』第2巻第11号、1910年2月、11頁、ISSN 0374-2466。
- 東京天文台 編『理科年表 第1冊』丸善、1925年、61-64頁。
- 東京天文台 編『理科年表 第19冊』丸善、1943年、B22-B23頁。
- 学術研究会議 編「星座名」『天文術語集』1944年1月、10頁。doi:10.11501/1124236。
- 『文部省学術用語集天文学編(増訂版)』(第1刷)日本学術振興会、1994年11月15日、316頁。ISBN 4-8181-9404-2。
- 「星座名」『天文月報』第45巻第10号、1952年10月、158頁、ISSN 0374-2466。
- 天文同好会 編『天文年鑑』1号、新光社、1928年4月28日、4頁。doi:10.11501/1138361。
- 山本一清「天文用語に關する私見と主張 (1)」『天界』第14巻第162号、東亜天文学会、1934年3月、212-214頁、doi:10.11501/3219877、ISSN 0287-6906。
- 天文同好会 編『天文年鑑』4号、新光社、1931年3月30日、8頁。doi:10.11501/1138410。
- 天文同好会 編『天文年鑑』10号、恒星社、1937年3月22日、8頁。doi:10.11501/1114748。


