おおぐま座

おおぐま座(おおぐまざ、大熊座、Ursa Major)は、北天の星座で、トレミーの48星座の1つ。

おおぐま座
Ursa Major
Ursa Major
属格 Ursae Majoris
略符 UMa
発音 [ˈɜrsə ˈmeɪdʒər]、属格/ˌɜrsiː məˈdʒɒrɨs/
象徴 the Great Bear
概略位置:赤経 10.67
概略位置:赤緯 +55.38
正中 4月20日21時
広さ 1280平方度[1]3位
バイエル符号/
フラムスティード番号
を持つ恒星数
93
3.0等より明るい恒星数 6
最輝星 ε UMa(1.77
メシエ天体 7
確定流星群 Alpha Ursa Majorids
Leonids-Ursids
隣接する星座 りゅう座
きりん座
やまねこ座
こじし座
しし座
かみのけ座
りょうけん座
うしかい座
NGC 2857

おおぐま座の一部としては腰から尻尾にあたる7つの星は、日本では北斗七星と呼ばれ、さまざまな文明でひしゃくやスプーンに見立てられた。β星とα星の間隔を約5倍すると、だいたいポラリス(現在の北極星)の位置になることから、世界的に旅人や航海者にもよく使われた。

また、ミザールζ星)とアルコル(g星)の二重星は、アルコルとミザールの見かけの位置が近かったため、13世紀以前のアラビアでは視力検査に使われていた[2][3]

主な天体

恒星

6つの2等星があるが[4][5][6][7][8][9]、全て北斗七星に集中しているのも特色で、熊の胴体を構成する星は、全て3等星以下となっている。以下の北斗七星の7星のうち、δ星以外は全て2等星である。

北斗七星以外にも国際天文学連合が固有名を定めた恒星も多い。

その他有名な恒星としては以下の星がある。

星団・星雲・銀河

これら3つの天体は、小型望遠鏡でも見ることができる。

  • M101(回転花火銀河):渦巻銀河。η星の北西にある美しい銀河である。
  • Arp 148:2つの銀河が衝突してできたとされる銀河[16]。発見者の名前から「メイオール天体」とも呼ばれる。

この星座は銀緯が高いため、我々の銀河系の恒星や星間物質に邪魔されることが少なく、多くの銀河を見ることができる。10等より暗い銀河が50個ある。

その他

神話

星図カード集『ウラニアの鏡』(1824年)に描かれたおおぐま座

女神ヘーラーまたはアルテミスによって熊に姿を変えられたカリストーの話がよく知られている。エラトステネース星座論』やオウィディウスの『変身物語』中では以下のエピソードが語られている。

カリストーは、アルカディアリュカーオーンの娘で、アルテミスの従者として処女を誓い、狩りに明け暮れる生活をしていた[17][18]。ある日、木立の陰で身を休めているところをゼウスに見初められ、ゼウスはアルテミスの姿を借りてカリストーに近づいた[17]。驚いた彼女にゼウスは真の姿を現わし、彼女の抵抗をものともせず思いを遂げた[17]。彼女は男と交わったことがアルテミスに知れるのを恐れてこのことを隠していたが、数ヶ月経ったある暑い日、狩りの最中にアルテミス達と沐浴をすることとなった[17][18]。渋々衣服を脱いだカリストーだったが、結局ゼウスの子どもを身ごもっていることが知られた[17][18]。誓いを破られたことを知ったアルテミスは憤慨し、彼女を放逐した[17]、もしくはこの時点で熊に変えられた[18]

オウィディウスによればその後、カリストーが息子アルカスを産んだ際に、そのことがゼウスの妃ヘーラーに知られる[17]。嫉妬と怒りに狂ったヘーラーが掛けた呪いにより、カリストーの真っ白な腕は黒い毛皮で覆われ、両手は湾曲して鉤爪が伸びて獣の前肢となり、ゼウスがとりわけ愛でた口元は巨大な獣の顎となって喉からは言葉の替わりにおぞましい唸り声しか出せないようにされた[17]。彼女はもとの美しい容姿とは似ても似つかぬ、の姿に変えられた[17]

15年後、森を徘徊していたカリストーは、立派に成長したアルカスと出くわす[17]。カリストーは息子であることに気づき抱きしめようと近づいたが、それが実母であるとは知らないアルカスは後ずさりし、彼女を槍で突こうとした[17]。これを見たゼウスは、旋風を起こして2人を天に上げ、カリストーをおおぐま座に、アルカスをうしかい座へと変えた[17][19][20][注 1]。ヘーラーは、カリストーが星座に上げられたことでさらに怒り、海の神であるテーテュースオーケアノスに頼み、彼女が北の海に降りて休むことを許さず、ずっと沈むことがないようにしたという[17]。そのため、北半球の中緯度地域ではおおぐま座は周極星となり、地に沈むことはない[17]

エラトステネースは前述のとおり、カリストーを熊に変えたのはヘーラーではなくアルテミスであるとしている[21][18]。熊に姿を変えられてから数年後、アルカスならびにアルカディア人たちに追われたカリストーは、侵入した者には死の罰が与えられると定められたゼウスの神殿にそうとは知らずに逃げ込んだ[21][18]。それを哀れんだゼウスは家族のよしみで彼らを天に上げたという[21][18]

紀元前3世紀頃のギリシアの詩人アラートスは、著書『ファイノメナ(Phaenomena、現象)』で、ディクテー山ゼウスを育てたニュンペーヘリケー (Helike) の姿であるとする話を伝えている[22]。ヘリケーはキュノスーラとともに、ゼウスの父クロノスから匿ってゼウスを養育したことを称えられ、ヘリケーはおおぐま座に、キュノスーラはこぐま座になったとされる[22]。ただしエラトステネースではおおぐま座はあくまでカリストーで、こぐま座がキュノスーラであるとされている[18]

呼称と方言

第二次世界大戦中の1943年(昭和18年)に刊行された『理科年表』第19冊までは清音で「おほくま」「こくま」と表記されていた[23]が、戦後の1947年(昭和22年)に刊行された第20冊からは濁音交じりの「おほぐま」「こぐま」と表記されるようになった[24]

脚注

注釈

  1. 日本の文献では「こぐま座になった」とする話が多く見られる。

出典

  1. 星座名・星座略符一覧(面積順)”. 国立天文台(NAOJ). 2023年1月1日閲覧。
  2. Big Dipper (英語). WFYI Public Media. 2023年6月15日閲覧。
  3. Bohigian, George M. (2008-09). “An Ancient Eye Test—Using the Stars” (英語). Survey of Ophthalmology 53 (5): 536–539. doi:10.1016/j.survophthal.2008.06.009. https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0039625708001197.
  4. "alp UMa". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022年11月7日閲覧
  5. "bet UMa". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022年11月7日閲覧
  6. "gam UMa". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022年11月7日閲覧
  7. "eps UMa". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022年11月7日閲覧
  8. "zet UMa". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022年11月7日閲覧
  9. "eta UMa". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022年11月7日閲覧
  10. 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版第4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日、103-105頁。ISBN 978-4-7699-0825-8。
  11. IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2020年4月24日閲覧。
  12. "del UMa". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022年11月7日閲覧
  13. ロバート・バーナム Jr. 著、斉田博 訳『星百科大事典』(初版)地人書館、1984年4月、393頁。 NCID BN00507540
  14. 大崎正次『中国の星座の歴史』雄山閣出版、1987年5月5日、300頁。ISBN 978-4639006473。
  15. 太陽系外惑星に私たち提案の名前が命名されました”. 岡山アストロクラブ (2015年12月15日). 2015年12月19日閲覧。
  16. 宇宙科学研究倶楽部 編『宇宙がまるごとわかる本』学研パブリッシング、2012年2月、57頁。ISBN 978-4054052604。
  17. Ridpath, Ian. Ursa Major”. Star Tales. 2022年11月7日閲覧。
  18. 伝エラトステネス『星座論』(1) おおぐま座・こぐま座”. 2022年8月31日閲覧。
  19. Wolfgang Schadewaldt 著、河原忠彦 訳『星のギリシア神話』白水社、1988年9月10日、28頁。ISBN 4-560-01877-4。
  20. 伝エラトステネス『星座論』(3) へびつかい座・さそり座・うしかい座”. 2022年8月31日閲覧。
  21. Ridpath, Ian. Boötes”. Star Tales. 2022年11月7日閲覧。
  22. 『グロティウスの星座図帳 : ゲルマニクス“アラトスのファイノメナ"の邦訳』千葉市立郷土博物館〈天文資料解説集〉、1999年3月、24頁。 NCID BA84126606
  23. 東京天文台 編『理科年表 第19冊丸善、1943年、B 21頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1244806
  24. 東京天文台 編『理科年表 第20冊丸善、1947年、天 24頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1124208

関連項目

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