女神湖

女神湖(めがみこ)は、長野県北佐久郡立科町にある農業用に建設された人造湖赤沼温水溜池(あかぬまおんすいためいけ、単に赤沼溜池とも)の別名であり、リゾート地としての開発も行われている。八ヶ岳中信高原国定公園に含まれている。

女神湖
女神湖
所在地 長野県北佐久郡立科町大字芦田八ヶ野982[1][2]
位置
女神湖の位置(日本内)
女神湖
北緯36度08分11.34秒 東経138度16分5.82秒
面積 0.12[3] km2
周囲長 1.5[3] km
平均水深 4[3] m
貯水量 0.00032[3] km3
水面の標高 1,540[3] m
成因 人造湖
淡水・汽水 淡水
プロジェクト 地形
湖畔に建つ女神
1969年(昭和44年)9月、女神湖のシンボルとして建立[4]

地理

蓼科山から北西方向に約4キロメートル離れた地点に位置する[3]。湖面標高1,540メートル面積0.12平方キロメートル、周囲1.5キロメートル、水深は平均で4メートルである[3]

1966年赤沼と呼ばれる湿地に温水ため池として完成[3]江戸時代に開削された農業用水路塩沢堰に施された改良事業の一環として建設されたものである[3]。貯水容量は32万立方メートルで、下流に広がる1,537.3ヘクタールの農地を潤す[3]。蓼科山は別名を女神山(女神は「めのかみ」と読む)といい、これにちなんで女神湖と命名された[3]

1967年にはビーナスラインが開通し、観光開発面で先行していた白樺湖と接続した[3]。これを機に立科町は女神湖の湖面利用権を得て観光開発を進め、宿泊施設レジャー施設が多数建設された[5]。周辺はシラカンバカラマツ天然林が広がり[3]ザゼンソウが、初夏にはレンゲツツジが見頃を迎える[1]8月11日山の日)には白樺高原花火大会が開催される[6]結氷した湖面にサーキットが開設され、企業や官公庁向けの講習会場として役立てられている[7]

塩沢堰

蓼仙の滝(御泉水自然園・水出水源)

塩沢堰(しおざわせぎ)は、立科町を流れる農業用水路である[8]。宇山堰・八重原堰とともに蓼科三堰のひとつに数えられ[8]疏水百選にも選定されている[9]

元々の塩沢堰は江戸時代に六川長三郎が開削したもので、正保元年に着工し、正保3年に完成した[8]水源は山中にある弁天神源泉(標高1,680メートル)や水出源泉(標高1,660メートル)など[8]。それまで50余りであった当地の石高は、塩沢堰の完成により飛躍的に増大し、寛文12年には662石を数えるまでになった[10]。六川長三郎の名は強大な権力とともに代々継承され、用水路の維持管理や配水量の調整といった任を務めてきた[8]

塩沢堰の余水を貯え、水不足に備えることを目的とした女神湖の建設工事は、芦田村横鳥村三都和村本牧村北御牧村塩川村の6村(現在の立科町・佐久市東御市上田市)による農業水利改良事業として、1942年4月に開始[11]。工事には蓼科農学校(現・長野県蓼科高等学校)の生徒も動員された[12]1946年からはGHQの監督のもと工事が行われたが、資材や食糧の不足により、1949年をもって中断された[12]

1961年県営御牧原農業水利改良事業が着工となり、各水源からの水を荒井戸頭首工から配水する現在の方式へと改良する工事が開始された[8]。既存の用水路の活用に加え、新たにトンネルを掘るなどして幹線水路の整備を推進[8]。中断されていた女神湖の建設工事も再開され、地質条件の悪さから工事に遅れが生じたものの、1966年に完成した[13]。県営御牧原農業水利改良事業の全事業は1976年に完成[8]。総工費は13億3800万であった[8]

2018年(平成30年)1月16日、立科2号幹線用水路を利用した陣内森林公園小水力発電所が運転を開始した[14]。陣内森林公園にて[15]最大0.47立方メートル毎秒の水を取り入れ、49.29メートルの有効落差を得て、最大181キロワット[14]、年間約1,000メガワット時電力量を発生し、全量を中部電力に売電する。計画・施工・保守は日本小水力発電株式会社、発電事業者は日本発電株式会社である。発電用水車チェコのシンク社製横軸2セルクロスフロー水車発電機には三相誘電発電機が採用されている[15]

伝承

鍵引石
河童伝説[16]
現在の女神湖がある場所には、かつて赤沼の池と呼ばれるがあり、河太郎という名の河童が住んでいた。河太郎は道行く人々を池の中に引きずり込むという悪事を働いており、この話を聞いたの諏訪頼遠によって退治されてしまう。今後悪事を働かないと約束して、その夜のうちに赤沼の池を去った河太郎は、和田宿の裏山に作り出した池に移住した。その池は一夜にして出来たということから、夜の間の池と呼ばれるようになったが、元いた赤沼の池は涸れてなくなってしまった。
鍵引石[16][17][18]
女神湖の付近にある巨石。むかし、旅人はこの石に旅の安全を祈願したという。現在では史跡として立科町の文化財に指定されている。
前述の河童伝説においては河童の河太郎が座っていた石であるとされる。河太郎は人間の子供に化けて石の上に座り、道行く人々に「かぎ引き」をしようと声を掛けていた。「かぎ引き」とは、かぎの形にした指を絡ませ、互いに引き合う遊びである。河太郎と指を絡ませたら最後、力ずくで池の中に引きずり込まれてしまうのであった。

アクセス

公共交通機関
JR北陸新幹線佐久平駅から路線バスで59間、徒歩2分間[1]
JR中央本線茅野駅から路線バスで45分間、バスを乗り換えて10分間、徒歩2分間[1]
付近に「女神湖」・「鍵引石」バス停が設置されている[19]
自家用自動車
上信越自動車道佐久インターチェンジから37キロメートル、自動車で50分間[20]
中央自動車道諏訪インターチェンジから30キロメートル、自動車で40分間[20]
普通自動車250台、大型バス80台が駐車可能な駐車場がある[20]

女神湖に関連する作品

その他

  • 農林水産省によるため池百選の選定において、女神湖は「赤沼ため池(女神湖)」として一次選定対象となったが、登録には至らなかった[23][24][25]
  • 2010年からイギリス文学者井村君江の協力のもと、女神湖妖精祭というイベントが開催され始めた[26]。自然豊かな当地の環境はヨーロッパに伝わる妖精たちも好むとされ、妖精が人間界に近付く時期に合わせて開催時期を設定(2011年度は5月6月10月2月に開催)[27]。いわゆる地域おこしとして企画されたものであり、テーマを妖精とすることでイベント自体の独自性・話題性を高めているほか、夏および冬の観光シーズンの節目にあたる時期にイベントを開催することで、その時期の集客を促進するねらいもあった[27]。のちに開催場所を東京都上野公園に変更。上野の森を守りに信州立科から妖精がやってくるという設定で公演が続けられた[28](第24回開催をもって休止[29])。

脚注

  1. 女神湖”. 全国観るなび. 日本観光振興協会. 2021年4月21日閲覧。
  2. 座標はジオロケーター 日本語版にて「女神湖」をキーワードに検索して得た(2014年4月13日閲覧)。
  3. 『角川日本地名大辞典 20 長野県』1102ページ。
  4. 『立科町誌 歴史編(下)』389ページ。
  5. 『角川日本地名大辞典 20 長野県』1102 - 1103ページ。
  6. 白樺高原花火大会(女神湖)”. 信州たてしな観光協会. 2021年4月21日閲覧。
  7. 女神湖氷上ドライブ”. 女神湖氷上ドライブ事務局. 2021年4月21日閲覧。
  8. 『角川日本地名大辞典 20 長野県』543ページ。
  9. 疏水名鑑-塩沢堰-”. 農林水産省. 2014年4月13日閲覧。
  10. 『角川日本地名大辞典 20 長野県』542ページ。
  11. 『立科町誌 歴史編(下)』386ページ。
  12. 『立科町誌 歴史編(下)』387ページ。
  13. 『立科町誌 歴史編(下)』388ページ。
  14. 陣内森林公園小水力発電所 181kW(長野県)”. 小水力発電データベース. 全国小水力利用推進協議会. 2021年4月21日閲覧。
  15. 下島朗 (2019年6月6日). “【エコ事例】環境に調和した建物で24時間発電を続ける小水力発電所。”. 事例s (制作室エントラータ). https://jilays.com/eco/e0004/ 2021年4月21日閲覧。
  16. 赤沼池の河太郎”. 立科町 (2016年3月30日). 2016年12月18日閲覧。
  17. 鍵引石”. 立科町 (2016年3月30日). 2016年12月18日閲覧。
  18. 女神湖・蓼科高原のアウトドアフィールド 【女神湖センター/女神湖の民話と歴史】”. 女神湖センター. 2014年4月13日閲覧。
  19. 女神湖(北佐久郡立科町/河川・湖沼・海・池・ダム)の地図”. マピオン. 2014年4月14日閲覧。
  20. 女神湖”. Go NAGANO. 長野県観光機構. 2021年4月21日閲覧。
  21. 『立科町誌 歴史編(下)』388 - 389ページ。
  22. 氷川きよしさんPVで女神湖の切手人気 立科町増刷へ”. 信濃毎日新聞(信毎web) (2008年12月4日). 2008年12月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年4月25日閲覧。
  23. ため池百選一般投票”. 農林水産省 (2010年3月25日). 2014年4月25日閲覧。
  24. 投票対象ため池の概要 東海地区 長野県 (PDF). 農林水産省. p. 16 (2010年3月25日). 2014年4月25日閲覧。
  25. ため池百選一覧”. 農林水産省. 2014年4月25日閲覧。
  26. 妖精が住む立科女神湖妖精祭公式ホームページ”. 立科女神湖妖精祭実行委員会. 2014年4月14日閲覧。
  27. 女神湖妖精祭による地域活性化事業(平成23年度 地域発元気づくり支援金事業総括書) (PDF). 立科女神湖妖精祭実行委員会. 2014年4月14日閲覧。
  28. 2017年7月17日 女神湖妖精祭 上野公園5周年記念「上野の森妖精祭」”. 立科女神湖妖精祭実行委員会 (2017年). 2017年12月30日閲覧。
  29. Facebook 女神湖妖精祭 2021年5月25日の投稿 (2021年5月25日). 2024年1月22日閲覧。

参考文献

関連項目

外部リンク

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