故安倍晋三国葬儀

故安倍晋三国葬儀(こ あべしんぞうこくそうぎ[6])は、2022年令和4年)9月27日日本武道館で執り行われた元内閣総理大臣であった安倍晋三国葬である[注釈 2]

安倍晋三 > 故安倍晋三国葬儀
故安倍晋三国葬儀
祭壇と追悼の辞を述べる内閣総理大臣の岸田文雄
地図
日付2022年9月27日 (2022-09-27)[1]
時刻14時4分頃[2][3] - 18時18分頃[3]JST
会場日本武道館[1]
場所日本の旗 日本 東京都千代田区北の丸公園2番3号
座標北緯35度41分35.2秒 東経139度44分57.7秒
種別国葬
原因銃撃による安倍晋三の死亡
主催者日本国政府
関係者
根拠法令: 内閣府設置法および閣議決定[注釈 1]
故安倍晋三国葬儀場(日本武道館

日本における国葬としては1989年平成元年)2月24日に執り行われた昭和天皇大喪の礼以来の約33年ぶり、内閣総理大臣経験者の国葬としては1967年昭和42年)10月31日に執り行われた吉田茂の国葬以来約55年ぶりに行われた[9]。また、安倍は日本において国葬が行われた人物として、明治時代以降としては26人目、内閣総理大臣経験者としては伊藤博文山縣有朋松方正義西園寺公望吉田茂に続いて6人目である[9][10]

なお、特記のない限り、本記事の本文では日付時刻日本標準時(JST)で記載する。

背景

2022年(令和4年)7月8日午前11時31分頃、元内閣総理大臣(第90・96・97・98代)・衆議院議員山口4区自由民主党)の安倍晋三は、奈良県奈良市近畿日本鉄道大和西大寺駅付近で第26回参議院議員通常選挙のための選挙演説を行っていた際に41歳の男に銃撃され[11]、同日17時3分に死亡が確認された[12]

内閣総理大臣経験者の殺害は、1936年(昭和11年)2月26日二・二六事件高橋是清斎藤実が陸軍青年将校らに殺害されて以来の出来事であった。殺害された現職内閣総理大臣・内閣総理大臣経験者としては、伊藤博文原敬高橋是清濱口雄幸犬養毅斎藤実に続いて7人目(「殺害された日本の内閣総理大臣の一覧」参照)、殺害された戦後の国会議員としては浅沼稲次郎丹羽兵助11代目山村新治郎石井紘基に続いて5人目である[13]。また、G7首脳経験者ではイタリアの元首相アルド・モーロ1978年に殺害されて以来となった。

関係者のみの葬儀は妻の安倍昭恵を喪主とし[14]同月12日東京都港区増上寺で執り行われた[15]

しかし、安倍の死後、弔問を希望する各国からの連絡が殺到し、外務省がその対応に追われる事態となる[16]。また、自民党内や保守層からも安倍の国葬を求める声が上がっていた[17]

国葬の実施決定

安倍晋三(2022年3月)
安倍晋三(2022年3月)
2022年7月14日、内閣総理大臣岸田文雄の記者会見。

2022年(令和4年)7月14日、内閣総理大臣の岸田文雄第2次岸田内閣)は記者会見で同年秋に国葬儀の形式で政府主催の安倍晋三元首相の葬儀を行うことを明らかにした[18]。岸田はこの記者会見で今回の国葬の費用は全額国費で賄う見通しであること[18][19]、国の儀式開催を規定した内閣府設置法に基づき閣議決定を根拠に国葬を実施できることを説明した[18][20]内閣官房長官松野博一も「内閣府設置法第4条第3項第33号に、内閣府の所掌事務として、国の儀式に関する事務に関することが明記され、国葬儀を含む国の儀式の執行は、行政権に属することが法律上明確となっており、閣議決定を根拠として行いうる」と説明した[21]。同号は、内閣府の権限の一つとして「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること」と規定し、国葬の実施は行政権に属することを前提に「行政機関のうち、ほかの省庁ではなく内閣府が国葬の事務を担うこと」の根拠が内閣府設置法にあると解される[22]。当初、政府・与党内では「国民葬」も検討されたが、「内閣府設置法に内閣府の所掌事務として国の儀式に関する事務が明記されており、閣議決定に基づいて国葬を実施することは法的にも問題ない」との見解が内閣法制局から示されたことを受けて、国葬の実施に踏み切ったとされる[23]

7月22日、同日の閣議において9月27日日本武道館故安倍晋三国葬儀[6]という名称で、無宗教形式で国葬を行うことを決定した[19][1][注釈 3]

葬儀委員長は岸田が[1]、葬儀副委員長は松野が[4]、葬儀委員は全ての国務大臣内閣官房副長官[4]、首席幹事を森昌文内閣総理大臣補佐官が務める[5]。同日、松野は記者会見において国葬に関する事務を行う「故安倍晋三国葬儀事務局」を同日付で内閣府に設置したことを発表した[24]。この事務局は内閣総理大臣補佐官森昌文の指揮の下で、内閣府、財務省、外務省、警察庁などの職員約20人で構成する[1]。また、外務省は海外から国葬に参列する外国の要人への対応を行うための「故安倍晋三国葬儀準備事務局」を同日設置したことを発表した[25]。この事務局はアジア大洋州局参事官石月英雄が事務局長を務める[25]。同日、故安倍晋三国葬儀準備事務局は日本国家の承認をしている195か国、承認をしていない4つの地域[注釈 4]及び80の国際機関に国葬の実施とその日程を通知した[4][26]

9月8日、衆参両院の議院運営委員会で閉会中審査が開催され、岸田は安倍が憲政史上最長の在任期間であったことや選挙演説中の死去などを挙げて国葬挙行の正当性を改めて主張した[27]

9月13日、政府は歴代内閣総理大臣の葬儀で実施されてきた自衛隊による「と列」、「儀じょう」としての弔銃、音楽隊の演奏に加え、19発の「弔砲」を行うことを閣議決定した[28]。これにともない防衛省は、9月21日、自衛隊の礼式に関する省令[29]を制定した。

市民団体「権力犯罪を監視する実行委員会」による国葬のための予算の執行などの中止を求めた仮処分の申し立てについて、最高裁判所第一小法廷9月22日付で市民団体側の特別抗告を棄却する決定をした[30]。これにより、申し立てを却下した東京地方裁判所東京高等裁判所の判断が確定した[30]。裁判官5人全員一致の結論で、具体的な理由は示さなかった[30]

式次第

国葬の流れは次の通り[31]。なお、司会は、葬儀委員会の指名により、フジテレビ編成制作局アナウンス室チーフアナウンサー 兼 報道局解説委員島田彩夏が担当した[32]

御遺骨式場到着
岸田らが安倍の遺骨の到着を出迎える[33]陸上自衛隊中央音楽隊が葬送曲「悲しみの譜」を演奏し[34]、19発の弔砲が発射される中、葬儀委員長の岸田を先頭に、遺骨を抱いた喪主の昭恵夫人、安倍の遺族が会場に入場した[33]
開式の辞
葬儀副委員長の松野博一内閣官房長官が述べた[31]
国歌演奏
陸上自衛隊中央音楽隊、海上自衛隊東京音楽隊航空自衛隊航空中央音楽隊による国歌の演奏が行われた[35][34]
黙とう
約90人の自衛隊儀仗隊が入場し、1分間の黙祷が行われた[36]。この際には葬送曲「国の鎮め」が自衛隊の音楽隊によって演奏された[36]
生前のお姿の映写
政府がまとめた安倍の生前の活動を振り返る映像が約8分間上映された[37]。この映像には、生前の安倍自身による「花は咲く」のピアノ演奏が使用された[37]
追悼の辞
追悼の辞を述べる岸田文雄
追悼の辞を述べる岸田
以下の人物によって追悼の辞が行われた[31][37]
  1. 岸田文雄(葬儀委員長)
  2. 細田博之(第78代 衆議院議長
  3. 尾辻秀久(第33代 参議院議長
  4. 戸倉三郎(第20代 最高裁判所長官
  5. 菅義偉(友人代表)[注釈 5]
勅使・皇后宮使御拝礼
勅使(松永賢誕侍従)と皇后宮使(池田元一侍従)による拝礼が行われた[37]
上皇使・上皇后宮使御拝礼
上皇使(岩井一郎上皇侍従)と上皇后宮使(岡良介上皇侍従)による拝礼が行われた[37]
御供花
7人の皇族による供花が行われた[31][37][39]
  1. 秋篠宮文仁親王文仁親王妃紀子
  2. 佳子内親王
  3. 寬仁親王妃信子
  4. 彬子女王
  5. 憲仁親王妃久子
  6. 承子女王
献花
献花するハリスアメリカ副大統領
献花を捧げるアメリカ合衆国副大統領カマラ・ハリス
追悼の辞を述べる岸田文雄
合掌をするインド首相ナレンドラ・モディ
皇族以外の人物による献花が行われた[31][39]
  1. 岸田文雄(葬儀委員長)
  2. 安倍昭恵(喪主)
  3. 遺族[注釈 6]
  4. 細田博之(衆議院議長)
  5. 尾辻秀久(参議院議長)
  6. 戸倉三郎(最高裁判所長官)
  7. 菅義偉・真理子夫妻(友人代表)
  8. 歴代内閣総理大臣[注釈 7]
  9. 歴代衆議院議長[注釈 8]、歴代参議院議長[注釈 9]大谷直人(第19代 最高裁判所長官)
  10. 外国の要人
  11. 松野博一(葬儀副委員長)
  12. 各党代表[注釈 10]
  13. 海江田万里(衆議院副議長)、長浜博行(参議院副議長)
  14. 第2次岸田改造内閣国務大臣
  15. 最高裁判所裁判官
  16. 内閣官房副長官内閣法制局長官副大臣大臣政務官
  17. 衆議院及び参議院国会)の委員会の委員長など
  18. その他の参列者
御遺骨お見送り
献花の終了後、遺骨が昭恵夫人に渡され、葬儀委員長の岸田を先頭に、遺骨を抱いた喪主の昭恵夫人、安倍寛信夫妻が海上自衛隊東京音楽隊によって「花は咲く」が演奏される中、遺骨が会場を退場した[40][41][34]。会場を出た際には、陸上自衛隊中央音楽隊が「悲しみの譜」を演奏し、演奏の終了後、遺骨は兄の寛信に渡され、葬儀委員長の岸田と喪主の昭恵夫人に見送られて、儀仗隊による斉射3回の弔銃が鳴り響く中、富ヶ谷の自宅へと帰宅した[40][41]

一般献花

9月21日、政府は国葬に伴う一般献花に関して、東京都千代田区の九段坂公園(九段南2-2-18)に献花台[注釈 11]を2台設置することを発表した[42]。時間は国葬当日の10時から16時までを予定していたが[42]、整理券が配布されたにもかかわらず、当日9時時点で行列ができたため30分前倒しで献花が開始された[43]。13時の段階で1万人が献花し[43]、献花まで少なく見積もっても3時間以上かかる見通しであると内閣府は発表した[43][44]。その後行列は3キロメートル以上に延び、新宿区の四ツ谷駅付近まで達したので、直接献花台に向かった人々は地下鉄で移動することになった[44]。引き続き多くの人々が献花に訪れていたが、午後5時以降は列に加わることは禁止された[44]。終了は3時間ほど延長され約19時30分であった[45][44]。政府は翌日の会見で2万5889人が献花に訪れたと発表した[45][46]。なお、付近では献花を終えた男性と国葬反対派の男性による乱闘も発生した[47]

九段坂公園の一般向けの献花台が大混雑したため、自民党は自民党本部の駐車場に臨時の献花台を午後3時に設置した[44]

国葬遥拝所

板垣退助生誕地

板垣死すとも自由は死せず(安倍晋三書)
  • 2018年、明治維新150年・板垣退助百回忌(満99年目の仏式の法要)に際し、板垣退助の位牌を新調するとき、当時の自民党総裁であった安倍晋三は、50年前の佐藤栄作の前例[48]に倣い「板垣死すとも自由は死せず」を揮毫した[49][50]。位牌の奉納された高知の板垣退助の菩提寺は、板垣の生誕地であり、板垣の創設した愛国公党ならびに自由党が、現在の自民党の起源にあたることなどから[51][52]、安倍晋三元首相の国葬の日に、板垣退助高知菩提寺・高野寺は、「安倍元総理ゆかりの寺」として「安倍晋三元首相国葬遙拝所」と献花台を設置[53]、約250名が弔問に訪れた[54][55][56]

大阪護國神社

  • 大阪護國神社藤江ふじえ正鎮まさつね宮司は「国葬反対の声ばかりが(マスコミで)取り上げられているが、『あれだけ功績があるのに』と考え、国葬遥拝所と献花台を設置した[57][58]

  おもかたらむ さくらときに  髙岡功太郎

  • してのち きみのこせしもと

  櫻心こゝろ吾等われら くにまもらむ  坂井克二

  • ほこり 櫻花おうかごとく けど

  のこせし勲功いさを なほうるわしき  大西隆之

  • 令和5年(2023年)7月8日大阪護國神社において『安倍晋三元総理追悼一年祭[63]』が斎行され、前衆議院議員中山泰秀大西宏幸ら参列し玉串を奉奠した。主催者の板垣退助玄孫・髙岡功太郎[64]は「政治家として国に殉じられました安倍先生の神霊かむみたまが、天翔あまがけましても、我々とこの国の行く末をみそなわし、お守り下さいますよう」とする祭文を奏上した[65][66][63]。同祭礼では以下の三首が献歌として神前に奏上された[67]
  • 姿すがた 龜鑑かゞみさむ われもまた

  皇國すめらみくにの 男子をのこたるなら  髙岡功太郎[63]

  • うごかざる こゝろきざみし石碑いしぶみ

  をろがいのる 明日あす御國みくにを  大坪宏通

  • 一年ひととせの ときめぐれども むね

  烈士ますらをの こゝろわすれじ  片岡 正

自由民主党大阪府支部連合会

  • 国葬に合わせて自民党大阪府連は、大阪市中央区の府連事務局に遺影と記帳所を設け、国葬を遙拝できるように配慮した。2時間で約260人以上が訪れ、非業の死を悼んだ[68]

その他

慰霊祭・追悼行事

国葬の当日以外では、上記との重複を除き以下の慰霊祭・献花式等の追悼行事が催された。

  • 令和4年(2022年)7月8日〜7月18日、奈良県大和西大寺駅前の事件現場近くに遺影と献花台を設置[69]。10日間で10万人以上が献花に訪れた[70]。海外メディアの取材に対し、板垣退助の玄孫・髙岡功太郎は、「歴代最長政権とは、客観的な尺度で申し上げると、日本の憲政史上、最も長く国民から支持され、国民から愛された首相と言える」と語り「憲法改正に真剣に取り組まれたお姿は、我々国民の希望の光であった」と評価した。さらに明治維新以降連綿と培われた日本の議会政治の歴史を述べ「安倍先生の国を思う精神が、この様な言論を封殺する暴力によって失われることがあってはならない」と述べた[71]
  • 同年7月17日、岐阜県岐阜公園の板垣退助銅像前において、一般社団法人板垣退助先生顕彰会らにより「板垣退助岐阜遭難140年祭」ならびに「安倍晋三元総理を追悼する献花式」と題し慰霊の神事が行われた[52]岐阜護國神社の宮司が祝詞を奏上し、板垣退助の玄孫・髙岡功太郎をはじめ有志らが玉串を捧げた[52]。髙岡氏はメディアの取材に対し「国葬云々の議論が出ているが、今、日本は国難の渦中にある。特に国防と安定的皇位継承に関しては、日本の根幹に関わる最重要課題。安倍先生は、歴代のいかなる首相よりも積極的に憲法改正に取り組んでこられた。その功績を広く知っていれば、どうすべきかは言わずとも明らかではないか」と語った[52]
  • 同年7月18日、兵庫県において「安倍晋三元総理を追悼する会」が開かれ、160名が参列。憲法改正を訴える行進も行われた[56]
  • 同年9月8日、長野県において安倍晋三元総理を追悼する黙祷が行われた[56]
  • 同年9月15日、山口県の赤間神宮で、安倍氏の母親の洋子さんが会長を務める同神宮崇敬会の会員などによって追悼祭が斎行された[72]
  • 同年9月23日、長崎県神社庁会館で、「安倍元総理を偲ぶ追悼祭」が斎行された[56]
  • 同年9月25日、宮崎県護国神社で「安倍元総理追悼祭」が斎行された[56]
  • 同年10月1日、佐賀県において「安倍晋三元首相を偲ぶ会」が開かれ、300名が参加。黙祷、献花が行われた[56]
  • 同年10月15日、安倍氏の選挙区であった山口4区(現・山口3区の一部)の下関市海峡メッセ下関」を主会場とし、8箇所の会場に分散した「故安倍晋三先生県民葬」として斎行され、合計10,245人の献花があった[73]
  • 令和5年(2023年2月27日奈良県五條市役所にぎわい広場において、「故安倍晋三元首相追悼植樹式」が行われた[74]
  • 同年6月12日、「桜の会」の前夜祭が行われた縁のある東京都千代田区のホテルニューオータニにおいて、神道政治連盟主催による慰霊祭が斎行され、中曽根弘文打田文博らが参列し玉串を捧げた[75]
安倍晋三元総理を慰霊する石碑・留魂碑

デジタル献花

20-30代のベンチャー企業経営者らで構成される「安倍元総理デジタル献花プロジェクト実行委員会」が、ネット上で献花が出来るwebサービスを立ち上げた[82][83]。9月30日に終了するまでに、52万432名が献花した[84]。プロジェクトは安倍の「49日」にあたる8月25日から開始された[85]

献花数が10万人を超えた9月8日、寄せられたメッセージの一部が昭恵夫人に届けれられた。国葬の一般献花に都合がつかず参加できない人々の利用も多かった[85]。白菊、黄菊、桔梗、百合、蘭の5つの花から1つを選択して、メッセージを投稿する形式が採用された[85]。サービスは国葬当日の27日午後4時で終了する予定であったが、国葬が近づくにつれアクセスが急激に増えて接続しにくい状態になったため、急遽終了日時を9月30日まで延長した[86]

国葬実施に伴う影響

国葬実施当日の9月27日は平日の火曜日であり、前述の吉田茂の国葬の際は官公庁や国公立の学校は半休、公営競技なども終日開催を取り止めているが、内閣官房長官松野博一は「休日とすることは検討していない」と述べている[19][87]

8月15日、政府は野党議員の質問主意書に対する答弁書18本を閣議決定した。それによると、各企業や学校などに対して、弔旗の掲揚や葬儀時間中の黙祷を要請するかについては「検討中であり、現時点でお答えすることは困難」、公営競技の中止については「現時点では決定していない」、官公庁・企業・学校などを当日休業・休校扱いにすることや民間に対して歌舞音曲を伴うイベント・番組の自粛を要請することについては「現時点で考えていない」とそれぞれ回答している[88]

8月26日、官房長官の松野は歴代首相の葬儀の際に各府省に対して要請していた「弔意表明」の閣議了解を見送ると共に地方自治体教育委員会などに対しても協力を要請しないことを同日の記者会見にて明らかにした。各府省において、個別に黙祷を行うかについては「検討中」としている[89]

8月31日、内閣総理大臣の岸田は同日開催の記者会見において、各府省庁では弔旗の掲揚並びに黙祷を行うことを明らかにした。また、国民や地方自治体、教育委員会などに対しては弔意表明の強制を行わないことも改めて示した[90]

9月15日、警視庁は外国要人の来日などに伴い、同月26日から28日に首都高速道路を含む東京都内で交通規制を行うことを発表した[91]。また、警視庁は全国から派遣された警察官を含め最大約2万人の警察官を動員し、最高レベルの警備体制を敷いた。北の丸公園の入り口には柵を設置して立ち入りを制限し、銃器を装備して重武装テロを制圧する緊急時初動対応部隊(ERT)や爆発物処理班などを配置したほか、ドローン対策としてジャミング装置などの資機材も配備した[92]

日本武道館周辺の交通規制や混雑により、児童や生徒の登下校などに支障が出る恐れがあるとして、千代田区教育委員会が同区内の教育機関計19校に対して、国葬当日の授業短縮やオンラインでの学習切替を検討するよう通知を出した[93]

国葬前日の17時から当日19時にかけて、日本武道館を含む北の丸公園では立入規制が実施され[94]、規制区域内の科学技術館[95]、隣接する東京国立近代美術館[96]国立公文書館[97]は国葬当日を臨時休館とした。また当日に周辺を走行する路線バスのうち、都営バス高71系統は短縮運行[98]千代田区コミュニティバス「風ぐるま」富士見・神保町ルートは迂回運行[99]、「風ぐるま」麹町ルート[99][100]および京王バス050系統[101]は終日運休とする措置が取られた。

国葬実施に対する反応

政府が安倍の国葬を実施すると閣議決定したことに対しては、与党野党マスメディア市民団体SNSなどから賛成意見と反対意見が表明された。

世論調査・アンケート調査

各報道機関による国葬に関する世論調査・アンケート調査の結果は、以下のとおり。

実施機関調査日 出典
NHK7月16–18日 評価する
49.1 37.6
評価しない [102][103]
産経FNN7月23–24日 よかった
どちらかと言えばよい
31.0 19.1 14.8 32.1
よくなかった
どちらかと言えばよくない
[104][105]
日経テレ東7月29–31日 賛成
43 47
反対 [106][107]
共同7月30–31日 賛成
どちらかといえば賛成
17.9 27.2 23.5 29.8
反対
どちらかといえば反対
[108]
NHK8月5–7日 評価する
36 50
評価しない [109]
読売NNN8月5–7日 評価する
49 46
評価しない [110][111]
JNN8月6–7日 賛成
42 45
反対 [112]
時事8月5–8日 賛成
30.5 47.3
反対 [113]
共同8月10–11日 納得できる
42.5 56.0
納得できない [114]
ANN8月20–21日 賛成
34 51
反対 [115]
産経FNN8月20–21日 賛成
40.8 51.1
反対 [116][117]
毎日8月20–21日 賛成
30 53
反対 [118]
朝日8月27–28日 賛成
41 50
反対 [119]
読売NNN9月2–4日 評価する
38 56
評価しない [120]
JNN9月3–4日 賛成
38 51
反対 [121]
NHK9月9–11日 評価する
32 57
評価しない [122][123]
朝日9月10–11日 賛成
38 56
反対 [124][125]
時事9月9–12日 賛成
25.3 51.9
反対 [126]
日経テレ東9月16–18日 賛成
33 60
反対 [127]
ANN9月17–18日 賛成
30 54
反対 [128]
共同9月17–18日 賛成
どちらかといえば賛成
13.8 24.7 20.2 40.6
反対
どちらかといえば反対
[129][130]
産経FNN9月17–18日 賛成
31.5 62.3
反対 [131][132]
毎日9月17–18日 賛成
27 62
反対 [133]
国葬実施後の調査
JNN10月1–2日 良かった
42 54
良くなかった [134]
朝日10月1–2日 評価する
35 59
評価しない [135]
読売NNN10月1–2日 よかったと思う
41 54
よかったと思わない [136][137][138]
共同10月8–9日 評価する
どちらかといえば評価する
13.4 23.5 23.1 38.8
評価しない
どちらかといえば評価しない
[139][140]
時事10月7–10日 よかった
24.4 49.5
よくなかった [141]
NHK10月8–10日 評価する
32.6 54.2
評価しない [142]
ANN10月15–16日 評価する
30 57
評価しない [143]
毎日10月22–23日 実施してよかった
18 60
実施するべきではなかった [144]

銃撃直後は「凶弾に倒れた」という衝撃もあって国葬賛成の声も多かったが、銃撃事件容疑者のあまりに悲惨な境遇や、それを引き起こした宗教団体である世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)と安倍が実際に関わりを持っていたこと、さらには8月に入って自民党議員との関係(旧統一教会問題)がメディアで連日次々と明らかになるに連れ、世論では「国葬反対」の声が多くなっていった[145]

一橋大の中北浩爾教授(政治学)は、国葬に反対する世論が増えた理由について、次のように指摘する。

一番大きいのは旧統一教会問題。銃撃事件について発生当初は「民主主義に対する冒涜」と同情する見方もあったが、教団の問題が表面化したことで潮目が急激に変わった。国政選挙などで安倍氏らが教団側から協力を得てきた経緯から「勝つために旧統一教会まで使っていたのか。国葬までして特別扱いする必要はあるのかという話に当然なる[146]

岸田政権は国葬の実施を早々に閣議決定した。法的根拠が曖昧であったことに加えて、国会に諮ることがなかったプロセスにも批判の声が集まった[147]。なお、8月中旬以降に実施された世論調査では、上記のとおり、すべての調査で反対が過半数を上回った。基本的には、このような状況は変わらないまま、政府の国葬方針は変わることなく、従来安倍元首相支持とみられながらも岸田首相に批判的な立場をとる者の一部からは「『検討します、検討します』とばかり言っている岸田首相が唯一すぐに決断したこと」と揶揄されたものの、国葬の儀は実施された。

与党

  • 自由民主党幹事長茂木敏充は、2022年7月19日の記者会見で「国民から国葬について『いかがなものか』という声が起こっているという認識を私はしていない。野党の主張(後述する反対意見)は国民の声や認識とかなりずれている」とした上で、「(安倍の)成果は国際社会から極めて高い評価を受け、国内外から幅広い哀悼の意が寄せられた。国葬は極めてふさわしい」と述べ、国葬実施に賛成の意見を表明した[148]
  • 自民党総務会長代行の森山裕は、同年7月14日に国会内で記者団に対し「安倍氏の政治家としての功績、国際的な活躍を考えると、国葬にふさわしい方だと思う。政府がいい決断をされた」と述べ、国葬実施に賛成の意見を表明した[149]
  • 公明党は、同年7月14日の時点では国葬に関するコメントを避け、記者団に対し「この件について、党としてコメントしない」と回答していた[149]。しかしその後、公明党代表の山口那津男は同年7月19日に「首相の決断を評価する」と岸田に伝え、国葬実施に賛成の意見を表明した[150]
  • 自民党元幹事長の二階俊博は、同年8月24日に行った講演の中で、国葬の実施について「当たり前のことで、やらなかったら馬鹿だ」と述べた[151][152]

野党

  • 日本維新の会副代表の吉村洋文は、同年7月20日の大阪府知事としての定例会見において党副代表として「憲政史上最長の期間総理を務め、多くの国民から支持され、実績も残した総理であること」「海外のリーダーからの評価も非常に高い総理であったこと」を理由として、国葬実施に賛成の意見を表明した[153]。但し、国葬には一定の基準を作るべきという考え方も述べた[153]
  • 国民民主党代表の玉木雄一郎は、同年7月14日に「国の内外から広く哀悼の意が寄せられており、国葬とすることについては理解できる」と自身のTwitterに投稿し、国葬実施に賛成の意見を表明した[149]
  • NHK党党首の立花孝志は、同年7月22日の定例記者会見で「顔と顔を合わせることが大事」「国葬は外交においてチャンス」「凶弾に倒れたことへの再認識」を理由として、国葬実施に賛成の意見を明確に表明した[154]

マスメディア

  • 産経新聞は、同年7月14日の「主張」[注釈 12]で「安倍晋三元首相は国葬で送られるべきである。岸田文雄政権はその方針を固め、ただちに準備に入ってもらいたい」と述べた[155]
  • 読売新聞は、同年7月16日の社説で「元首相が演説中に銃撃された衝撃の大きさや、内外の多くの人々が死を悼んでいることを踏まえた判断なのだろう。静かに見送りたい」「国家的行事として、責任を持って執り行おうという政府の姿勢は理解できる」と述べた[156]
  • 日本経済新聞は、同年7月22日の社説で「内政や外交の実績を総合的に評価した判断は理解できる」と評価した上で、岸田が「透明性の高い運営方法を主導」するよう求めた[157]
  • フジテレビの上席解説委員の平井文夫は、同年8月31日、FNNプライムオンラインで国葬実施の意義を訴えた。安倍を「自分の夢や主義より前に、世界を相手に日本がどういう国になるべきなのかを考えるリアリスト」だと評価し、「警備と接遇に恥ずかしくない必要な費用をかけるのは当たり前だ」「安倍晋三さんのどこが国葬に値しない政治家なのか誰か教えてくれ」と述べた[158]

都道府県知事

各種団体

  • 安倍元首相を追悼する高知県民の会は、国葬に賛成し、安倍ゆかりの高野寺板垣退助生誕地)に国葬遙拝所と献花台を設置した[53]
  • 大阪護国神社の藤江正鎮(まさつね)宮司は「国葬反対の声ばかりが(マスコミで)取り上げられているが『あれだけ功績があるのに』と考え、国葬に賛成。国葬当日は、境内に遥拝所と献花台を設置した[57][58]
  • 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)改革推進本部長の勅使河原秀行は「偉大な政治家だった。丁重に国を挙げて葬儀をすることに賛成だ」と表明した。また国葬に合わせ教団の日本本部で半旗を掲揚した[169]

政党

  • 立憲民主党代表の泉健太は、2022年7月14日、「国葬については、その性質から厳粛に行うものであり、元総理のご冥福を祈りつつ、静かに見守りたい」との談話を発表したが[170]、7月22日に容認の立場を一転。「根拠法に乏しい、基準がないということも含め、政府に説明や国会審議を求めてきたが何もない。今回の決定には賛同しかねる」と述べ、国葬実施に反対の意見を表明した[171][172]
  • 日本共産党政策委員長の田村智子は、同年7月22日の記者会見で「なぜ国葬を行うかの理由も示さず閣議で決めてしまうやり方も含め、全く賛同できない。弔意の押し付けにもつながる」と述べ、国葬実施に反対の意見を表明した[171]。同党は「国葬は安倍政治の賛美・礼賛にあたる」「法的根拠がない」「国民を分断するもの」「改憲や大軍拡を推進する足場固めとなる」として一貫して反対意見を表明している[173][174]
  • れいわ新選組代表の山本太郎は、同年7月15日の記者会見で「安倍政権の政策的失敗を批判することも憚れる空気を作り出し、神格化されるような国葬を行うこと自体がおかしい」と述べ、国葬実施に反対の意見を表明した[175][176]
  • 社会民主党は、同年7月22日に「国葬は憲法が保障する「内心の自由」に抵触するものであり、法的根拠もない」として国葬実施に反対の意見を表明するとともに[177]、同日に内閣総理大臣官邸前で行われた国葬反対デモに、党首の福島瑞穂が参加した[171]

地方議会

2022年9月6日、神奈川県葉山町議会は本会議で「安倍元首相の国葬に反対する意見書」案を賛成多数で可決した。後日、政府や国会に提出するとしている[178]。同年9月8日、鳥取県日南町議会は国葬の中止を求める決議案を全会一致で可決した[179]。同様の議決は、神奈川県鎌倉市議会(同年9月12日意見書)[180]東京都国立市議会(同年9月16日意見書)[181]などでも可決され、全国で少なくとも12の市町村議会が同様の可決[182]をした。

マスメディア

  • 朝日新聞は、同年7月20日の社説で「異論が予想された中、岸田首相は早々に方針を打ち出した。安倍氏を支持してきた党内外の保守勢力への配慮だとしたら、幅広い国民の理解からは遠ざかるだけだ」「安倍氏を悼むのは当然だ。ただ、弔意の強制はあってはならない。国葬が政権の評価を定めるものでもない」と述べ、国葬実施に批判的な記事を掲載した[183]
  • 東京新聞は、7月20日の社説で「反対論もある中で、なぜ国葬なのか、岸田文雄首相が説明を尽くしたとは言い難い。安倍氏の葬儀を巡って、国民の分断がさらに深まらないか懸念する。」として国葬実施に批判的な記事を掲載した[184]
  • 日本テレビは、同年7月22日のニュース番組『news every.』で、中央大学教授宮間純一の意見を紹介する形で「国会審議もせず閣議決定で決定し、反対意見も多くある中で多額の税金が投じられることは大きな問題」として、国葬実施に批判的な報道を行った[185]
  • 毎日新聞は、同年7月23日の社説で「国葬に法的根拠がないにもかかわらず、国会に諮ることなく政府の独断で決めたことに疑問がある」「岸田首相は『暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜くという決意を示す』と強調したが、日本の民主主義の基盤は、国民の代表で構成する国会である。国民の疑問に答えるには、政府が国会で説明し、議論することが欠かせない」と述べた[186]。8月27日の社説でも同様の記事を掲載している[187]
  • 琉球新報は、8月11日に社説で「安倍晋三元首相の国葬に世論の反応が分かれている。国葬は、国費を投じて国民に追悼を求めるものであり、憲法が保障する内心の自由に抵触する」として国葬に批判的な記事を掲載した[188]

各団体

  • 各地の弁護士会東京[189]神奈川[190]群馬[191]・京都[192]・静岡県[193]・兵庫県[194]第二東京[195]長野県[196]・山口県[197])や、日本民主法律家協会[198]自由法曹団[199]などの弁護士・法律家団体は、いずれも法的根拠の問題や思想・良心の自由の侵害を理由に、国葬に反対する声明を相次いで発表している。
  • 新日本婦人の会は同年7月22日、「安倍元首相の礼賛、国民への弔意の強制につながる」として、国葬に反対し中止を求める抗議書を岸田文雄首相に提出した[200]
  • 主婦連合会は同年7月22日、「法的根拠もなく、国会での議論も国民への説明もなされず、多額の国費を投入して国葬を行うことが、何故民主主義を守ることになるのでしょうか」と述べ、国葬に反対する声明を発表した[201]
  • 日本子どもを守る会は同年7月25日、「9月27日は平日であり、学校現場では『臨時休校』あるいは『服喪の時間』などの措置が取られることが予想される」「弔意の強要が行われた場合は、内心の自由を侵し、憲法および子どもの権利条約にも違反する」と述べ、国葬に反対する声明を発表した[202]
  • 日本自治体労働組合総連合は同年7月25日、「そもそも、日本国憲法にそぐわないとされた『国葬』を、法的根拠もなく閣議決定によって決めること自体許されるものではない」と述べ、国葬の閣議決定撤回、中止を求める声明を発表した[203]
  • 全日本民主医療機関連合会は同年7月25日、「国葬となれば安倍氏への弔意を国民に強制することにつながるおそれがある」「コロナ禍において貧困が加速し、物価高により国民生活が圧迫されるなか、一政党に属する一国会議員の葬儀に巨額が投入されることはあってはならない」と述べ、国葬の閣議決定の撤回を求める声明を発表した[204]
  • ふぇみん婦人民主クラブは同年7月25日、「安倍元首相の長期政権下でジェンダーフリーバッシングが行われ、選択的夫婦別姓LGBT同性婚への極めて後ろ向きな態度により、『ジェンダー・ギャップ指数』が146か国中116位という評価がされたことは到底看過できない」「弔意は個人の判断で行うものであり、国家が強要するべきものではない」として、岸田首相宛てに、国葬閣議決定の取り消しを要請する文書を提出した[205]
  • 日本キリスト教協議会は同年7月25日、「憲法第83条の違反であり、第19条の重大な違反である」「死者の神格化にもつながる国葬を計画する権力の企てとは、自らの政治路線で国民を上から統合しようとする権力の絶対化である」として、国葬に反対する声明を発表した[206]
  • 日本基督教団は同年8月1日、「閣議の恣意的判断によって国葬とされる儀式に国費を支出することは憲法第83条違反となる」「国葬となれば、全国の都道府県や教育機関への弔旗・記帳台設置などが指示され、思想・良心の自由を保障する憲法第19条の重大な違反ともなる」として、国葬の閣議決定の撤回を求める声明を発表した[207]
  • 日本カトリック正義と平和協議会は同年8月1日、「国葬を、国権の最高機関である国会での審議を経ずに決定することは、民主主義の根幹を揺るがすことだと言わざるを得ない」として、国葬実施に反対する声明を発表した[208]
  • 日本消費者連盟は同年8月3日、「(安倍政権で)食の安全や環境などで規制緩和や企業活動優先の施策が続けられ、生活者の権利や安全が奪われてきた」として、国葬に反対する声明を発表した[209]
  • 日本ペンクラブは同年8月3日、国葬は様々な未解決の問題が解決した後で、国会で議論を経た上で議決すべきだとし、「まずは当面延期が望ましい」との声明を発表した[209][210]
  • 世界平和アピール七人委員会は同年8月3日、統一教会に関与する政治家に対し「即退場を求める」とする声明を発表。声明の中で「安倍晋三元首相の国葬を含めて強烈な違和感を新たにする」と訴えた[211]
  • 日本ジャーナリスト会議は同年8月8日、国葬実施の決定をめぐり、主要メディアに対し、国民主権、民主主義とは相いれないという立場を明確にして、反対の論陣を張るよう求める声明を発表した[212]
  • 全国保険医団体連合会は同年8月10日、「世論の賛否は大きく分かれており、これを強行することは、重大な問題をはらんでいる」「国葬に使う予算があれば、コロナ禍や物価高に苦しむ国民生活を支援すべきである」として、国葬に反対する声明を発表した[213]
  • 静岡県内の16市3町1県の計32人が賛同議員として名を連ねる「平和・立憲・人権をつなぐ全国自治体議員ネットワーク静岡県」は同年8月30日、国葬に反対する声明を発表した。同団体は浜松市議会議員の鈴木恵と静岡市議会議員の松谷清が共同代表を務める[214][215]

市民運動

国葬当日(9月27日)に行われた反対デモの様子
  • 2022年7月21日、市民団体「権力犯罪を監視する実行委員会」のメンバーなど50人は、「法的根拠がない」などの理由で、国葬のための予算の執行などの中止を求める仮処分を東京地方裁判所に申し立てた[216][217][218]。なお、この申し立ては9月22日付で最高裁判所が特別抗告を棄却したことにより、却下が確定した[30]
  • 同年7月22日朝、「許すな!憲法改悪・市民連絡会」など都内で活動する11の市民団体は内閣総理大臣官邸前で、国葬に対する抗議集会を開いた。参加者は約200から400人。社会民主党党首の福島瑞穂も参加し抗議した。これは主に、国葬の実施によって弔意が強制されること、そして費用に税金が使われることへの反発だった[185][219][220][221]
  • 同年8月17日、東京都新宿で参加者1,200人に上る反対デモが行われた。憲法学者の飯島滋明は「安倍首相は偉い。だから、皆、黙とうせよ、喪に服せ。これが民主主義でしょうか?これは全体主義です。そんなことは決して、認めることはできません」と述べ、作家の落合恵子は「国葬をもってして、旧統一教会と政治家の癒着にもフタをするつもりなのか?誰かの死を利用することは、最悪です。醜悪です」述べた[222][223]
  • 同年8月19日、国会前で市民団体主催による反対デモが行われた。1,200人が参加し、社民党党首の福島瑞穂、立憲民主党の阿部知子、日本共産党の山添拓がそれぞれスピーチした[224]
  • 同年8月23日、上野千鶴子中島岳志佐高信内田樹など大学教授、作家ら17人は、オンライン署名サイト「Change.org」で国葬中止を求める署名活動を開始した[225][226]
  • 同年8月24日、生前より安倍や自民党の言動及び主張・コロナ対策などを批判していた政治団体の日本第一党(党首:桜井誠)は、9月24日に「9・24『安倍国葬』断固反対! 国民大行進 in 新宿」という名のデモを東京・新宿で行うと発表した[227]
  • 同年8月31日、首都圏の市民団体など79の団体でつくる「安倍元首相の『国葬』に反対する実行委員会」は国会前で国葬に反対するデモを行った。弁護士の内田雅敏が、主催団体を構成する「戦争をさせない1000人委員会」事務局長として冒頭で挨拶。福島瑞穂、小池晃、阿部知子がスピーチし、伊波洋一がメッセージを寄せた。デモには約4,000人が参加した[228][229][230]。実行委員会は9月1日以降も抗議デモを行う予定[231]
  • 同年9月5日、「安倍元首相の『国葬』に反対する実行委員会」らは記者会見し、同団体、自由法曹団、平和と民主主義を目指す全国交歓会、小澤俊夫が「Change.org」でそれぞれに募集した国葬の中止を求める4件の署名が40万4258筆集まったことを明らかにした。重複を除くと計28万人が署名していたことが同サイトの調べでわかった。署名活動した3グループと小澤は集まった署名を内閣府の国葬儀事務局に提出した[232][233][234]

デマ・誤情報

  • 葬儀当日に集まった反対デモや集会の参加人数をめぐり、Twitter上で誤情報が拡散されている[235]。「日本野鳥の会のカウントでは(反対派の人数は)307人」とする情報については、同会が29日午前に否定、また「警察発表で500人」という情報についても警視庁が「発表していない」と否定した[235]。この他に、別の場所で撮影された写真を反対集会の写真であるとし、参加人数が実態より遥かに少ないように見せかけるツイートも投稿された[235]
  • 葬儀に参列したIOC会長トーマス・バッハの宿泊費に関して「1泊200万円のスイートを日本国民の血税で連泊している」という情報がブロガーのきっこ早稲田大学名誉教授池田清彦らによって拡散されたが、外務省は「海外参列者の旅費や滞在費を負担することはない」と否定、JOC広報室も負担していないと否定している[236]

その他

  • 国葬の中止を求め、「小・中学校から濃硫酸などを盗み、国葬会場の日本武道館に散布する」[237]、「子供をスタンガンで気絶させて誘拐する」[238]、「誘拐した子供に高性能な爆弾を仕掛け、人が集まりそうな場所に特攻させる」[237]などの脅迫メールが日本各地の市町村に届いている[239]
  • 時事ドットコムは8月9日配信の記事で、国葬の反対意見が賛成意見より多くなっていることについて、世界平和統一家庭連合と安倍晋三および自民党との関係が明らかになったことが要因ではないかと述べた[240]
  • 2022年9月6日、東京都世田谷区一丁目の桜木駐在所内で三徳包丁を所持しながら、同駐在所と世田谷警察署を直通するテレビ電話で国葬に賛成する主張や殺害予告を行った30代男性が、翌日、銃砲刀剣類所持等取締法違反で逮捕された[241]
  • 2022年9月21日6時50分頃、東京都千代田区永田町一丁目の内閣総理大臣官邸付近の路上で、自称70代の男性が焼身自殺を図った[242]。男性は火を付ける前に国葬に反対であることを警察官に話し[243]、現場には「私個人は国葬に断固反対」と手書きされた文書が落ちていた[244]
  • 2022年9月9日ミャンマーの民主派勢力である「挙国一致政府(NUG)」は、同国の軍事政権側の代表者を国葬に参列させないように求める要請書を外務省に提出した[245]。しかし日本政府は国軍側のみを招待し、在日ミャンマー人らが抗議していた[246][247]。そして国葬当日、ソー・ハン駐日大使が参列した[248]。これに対し人権団体などは「国軍が実権を握る国の参列は、軍事政権にお墨付きを与える行為だ」として、日本政府を批判した[248]林芳正外相は30日の会見で「国軍によるクーデターの正当性を認めないという我が国の立場は、駐日大使の参列によって何ら変わるものではない」と釈明した[249]。一方、イギリス政府は同月19日に行われたエリザベス2世の国葬にミャンマーを招待しなかった[246][249]
  • 2022年12月22日、政府は、故安倍晋三国葬儀を検証するために、憲法や政治学などの学識経験者、報道機関の幹部ら21人に実施したヒアリングの結果を公表した。結果では、(1)法的根拠と憲法との関係、(2)実施の意義、(3)国会との関係、(4)国民の理解、(5)対象者、(6)経費や規模の妥当性、(7)その他の7項目の論点に整理したが、意見の紹介にとどまり、結論は出さなかった。あわせて、かかった費用も公表し、確定値は約11億9900万円であった[250]

参列者

国内の参列者

外国・国際機関からの参列者

諸外国(国名50音順)

番組・映画

テレビ

ラジオ

映画

脚注

注釈

  1. 内閣総理大臣の岸田文雄による説明、異論あり。
  2. 内閣府大臣官房故安倍晋三国葬儀事務局は、国葬ではなく国葬儀と位置づけている[2]。ただ、その相違点について岸田文雄首相は「一概にお答えすることは困難」[7]松野博一内閣官房長官は「私は確たることは申し上げることができない」[8]と述べている。
  3. ただし、官庁事項としての官報公示は行われなかった。
  4. 中華民国香港マカオ及びパレスチナ国
  5. 菅による追悼の辞が行われた直後、会場内で拍手が沸き起こった。フジテレビ上席解説委員平井文夫によると、最初に松浦正人が大きな拍手をはじめたところ、周囲の座席の者がつられて拍手をし、会場全体に広がったという。なお、平井による「通常は葬式において拍手は行わないものだ」という主旨の問いかけに対し、松浦は「『今より後の世をいかにせむ』(註:伊藤博文が暗殺された際に山縣有朋が述べた言葉であり、菅が追悼の辞において引用)なんだ」「菅さんに『今はあんたがしっかりせんとだめだ』と伝えた」「菅さんに安倍さんの遺志を継いでほしい。岸田首相に助言してほしい。だから拍手した」という主旨の回答をしている[38]
  6. 兄・安倍寛信夫妻、弟・岸信夫夫妻とその子息[39]
  7. 森喜朗小泉純一郎福田康夫麻生太郎ちか子夫妻、野田佳彦[39]
  8. 伊吹文明大島理森[39]
  9. 扇千景山崎正昭伊達忠一山東昭子[39]
  10. 茂木敏充自由民主党幹事長)、山口那津男公明党代表)、馬場伸幸日本維新の会代表)、玉木雄一郎国民民主党代表)、松田学参政党代表)、立花孝志NHK党代表)、二階俊博(元自由民主党幹事長)など[39]
  11. この献花台は1台で同時に10人まで献花することができる[42]
  12. 他紙における社説にあたる。
  13. 2014年に発生した御嶽山噴火の犠牲者追悼式に出席するため。
  14. 親族の新型コロナウイルス罹患に伴う濃厚接触者認定のため。
  15. 台風14号の被害対応のため。
  16. 各国代表による献花の際に国名を読み上げる「指名献花」について、台湾も対象となったが「中華民国」ではなく「台湾」と読み上げられた。台湾を独立国の格式である指名献花の対象としたのは、安倍晋三が生前台湾と親交を結んでいたことを考慮したとみられる[284]。これについて中国政府は「日本は台湾独立分子に対し、政治的なもてあそびの舞台や機会を提供してはならない」として日本政府を批判した[285]。国葬に先立つ葬儀でも台湾は頼清徳副総統を弔問に送っており、その際も中国政府は「中国領土である台湾に副総統などいない」として受け入れた日本政府を非難する声明を出した[286]

出典

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  17. 石鍋圭、永原慎吾「安倍氏「国葬」待望論 法整備や国費投入課題 政府「国民葬」模索も」『産経ニュース』産業経済新聞社、2022年7月12日。2022年7月23日閲覧。
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  295. 外務省 日・モルドバ首脳会談 令和4年9月28日
  296. Chancellor attends state funeral of Japan's former Prime Minister Shinzo Abe | My Government (英語)
  297. 外務省 岸田総理大臣とチウカ・ルーマニア首相との会談 令和4年9月26日
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関連項目

外部リンク

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