消えた恋

消えた恋」(きえたこい、原題 : What Goes On)は、ビートルズの楽曲である。1965年に発売された6作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ラバー・ソウル』に収録された。アメリカでキャピトル・レコードから発売された同名のアルバムには収録されず、翌年にシングル盤『ひとりぼっちのあいつ』のB面曲として発売された後、『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』に収録された。作曲者名はレノン=マッカートニースターキーとクレジットされている。Billboard Hot 100では最高位81位を記録[3]

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消えた恋
ビートルズ楽曲
収録アルバムラバー・ソウル
英語名What Goes On
リリース
  • イギリスの旗 1965年12月3日 (Album "Rubber Soul")
  • アメリカ合衆国の旗 1966年2月21日 (Single)
  • 日本の旗 1966年4月15日 (Single)
A面アメリカ合衆国の旗日本の旗 ひとりぼっちのあいつ
録音
ジャンル
時間2分50秒
レーベル
作詞者レノン=マッカートニースターキー
作曲者レノン=マッカートニー=スターキー
プロデュースジョージ・マーティン
チャート順位
ビートルズ シングル U.S. 年表
ビートルズ シングル 日本 年表
ラバー・ソウル 収録曲
ミッシェル
(A-7)
消えた恋
(B-1)
ガール
(B-2)

背景

ジョン・レノンが「消えた恋」を書いたのは、1959年初頭のメンローヴ・アベニュー251番地とされている[4]。本作の初期バージョンは、バディ・ホリーの影響を大きく受けており[4]、『ラバー・ソウル』に収録された完成バージョンとはコーラスを除き大きく異なっている[5]

ビートルズは、1963年3月に本作を録音しかけたものの[6]、最終的には1965年11月の『ラバー・ソウル』のためのレコーディング・セッションまで録音されることはなかった[7]。楽曲について、レノンは「たしかポールの手を借りてミドルエイトを新しくして、リンゴに歌ってもらおうと思って復活させた」と語っている[8]。作家のバリー・マイルズは、ミドルエイトを書いたのはマッカートニーとスターであると主張している[9]。本作には正式なミドルエイトが存在せず、1つのコーラスと1つのヴァースが繋がっていて、音楽評論家のイアン・マクドナルドは、この長いパートはマッカートニーによって書かれたものという考えを示している[2]。本作は、スターがビートルズの楽曲で初めて作曲と作詞にも参加した楽曲[10]だが、楽曲への貢献についてスターは「5個くらい言葉を考えた。僕がやったのはそれだけ」と語っている[9]。マクドナルドと音楽学者のウォルター・エヴェレットは、スターが書いたのは「Waiting for the tides of time」という歌詞であると述べ[11]、マクドナルドはこのフレーズを「ディラン風」としている[2]

レコーディング

1963年3月

1963年3月5日の「フロム・ミー・トゥ・ユー」と「サンキュー・ガール」のセッション中、ビートルズは「消えた恋」と「ワン・アフター・909[注釈 1]」の録音を検討していた。あと1曲しか録音できないという状況下で、ビートルズは「ワン・アフター・909」を選択[6]。レノンとマッカートニーは、同年に本作のデモ音源を録音したが、1965年にスターのボーカル曲として録音されるまで使用されることはなかった[12]

1965年11月

ニール・アスピノールは、1965年にマッカートニーが自宅でマルチトラックのデモ音源を制作したことについて「ポールがリンゴに『消えた恋』を聴かせようとすることを目的に、マルチトラックのデモ音源を作った。デモ音源にはポールの歌、リードギターベースドラムが入っていた。完成したテープを聴いたリンゴは、レコーディング・セッションの前に自分のアイデアを加えていた」と振り返っている[13]

『ラバー・ソウル』に収録の完成バージョンは、1965年11月4日の深夜に行なわれたセッションで、1テイクで録音した後にオーバー・ダビングを加えたもの。ジョージ・マーティンがプロデュースを手がけ、エンジニアノーマン・スミスケン・スコット、グラハム・プラットがアシスタントを務めた[7]。エヴェレットは、レノンはギターのパートについて「スティーヴ・クロッパーの奏法」としている[14]。コーラスに入る前に、スターが「Tell me why」と歌った後に、レノンが「We already told you why!」と返しているが、これは1964年に発表された楽曲「テル・ミー・ホワイ」に掛けたもの[14]

1965年11月9日、スミスとジェリー・ボーイズのアシストのもと、マーティンは本作のモノラル・ミックスとステレオ・ミックスを作成。モノラル・ミックスの最後の2小節では、ハリスンのギターがミュートされている。これについてエヴェレットは、エンジニアがボーカル・トラックをミュートするつもりが、ハリスンのギターが同じトラックに入っていることを忘れていたことにより生じたものではないかと指摘している[14]

リリース・評価

「消えた恋」は、1965年12月3日にイギリスで発売された『ラバー・ソウル』に収録された[15]キャピトル・レコードは、本作を1966年2月21日にシングル盤『ひとりぼっちのあいつ』のB面曲として発売した[16][17]。B面曲でありながら、Billboard Hot 100で最高位81位を記録[3]。キャピトル・レコードは、『ラバー・ソウル』のアメリカ盤から本作をカットし、その代わりに1966年6月20日に発売した『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』に収録した[18]

ビートルズの伝記作家であるケネス・ウォマックは、本作について「間違いなくアルバムの中で最も弱く、不調和な曲」と断言している[19]。マクドナルドは、「『アクト・ナチュラリー』と同じく、だらだらとしたカントリー&ウェスタンの雰囲気を持っている」と述べている[2]。『オールミュージック』のリッチー・アンターバーガーは、「軽快なカントリー&ウェスタン風味の作品」とし、ハリスンのギター演奏について「ハリスンはカール・パーキンスの最高の弟子」と評している[20]。エヴェレットは、マッカートニーのベースについて「ソウルフル」と表現している[21]

クレジット

※出典[22]

カバー・バージョン

  • ザ・チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズ - 1966年に発売されたアルバム『Beatle Country』に収録。ブルーグラス調にアレンジされている[23]
  • ザ・セルダム・シーン - 1988年に発売されたアルバム『Change of Scenery』に収録[24]
  • スフィアン・スティーヴンス - 2005年に発売されたコンピレーション・アルバム『This Bird Has Flown』に収録[25]ピッチフォークのロブ・ミッチャムは「スターの酷いカントリー・チューンを、ストリングスや骨太なジャムなどを備えたイリノイ州のフル・メーカー・バンドのためにアレンジした本当に素晴らしいスフィアン・スティーヴンスの楽曲に仕上げた」と評している[26]

脚注

注釈

  1. 当時のタイトルは「The One After 909」。

出典

  1. Hamelman, Steven L. (2004). But is it Garbage?: On Rock and Trash. University of Georgia Press. p. 10. ISBN 0-8203-2587-2. https://books.google.co.jp/books?id=9jkEJn45tCsC&pg=PA10&dq=what+goes+on+beatles+rockabilly&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwiOkqWd_M7sAhXLBKYKHWAkB64Q6AEwBnoECAYQAg#v=onepage&q=what%20goes%20on%20beatles%20rockabilly&f=false
  2. MacDonald 2005, p. 176.
  3. The Hot 100 Chart”. Billboard (1966年3月19日). 2020年10月25日閲覧。
  4. Lewisohn 2013, p. 215.
  5. Lewisohn 2013, p. 215n.
  6. Lewisohn 1988, p. 28.
  7. Lewisohn 1988, p. 67.
  8. Sheff 2000, p. 178.
  9. Miles 1997, p. 275.
  10. Everett 1999, p. 206.
  11. Everett 2001, p. 411n154.
  12. Marinucci, Steve (2017年9月21日). Unreleased 1963 Beatles Demo Up for Sale on eBay: Listen to a Snippet”. Billboard. 2020年10月25日閲覧。
  13. Aspinall 1966, p. 6, quoted in Everett 2001, p. 329
  14. Everett 2001, p. 330.
  15. Lewisohn 1988, p. 69.
  16. Everett 2001, p. 336.
  17. Womack 2009, p. 290.
  18. Womack 2009, p. 292.
  19. Womack 2007, p. 120, quoted in Decker 2009, p. 84
  20. Unterberger, Richie. What Goes On - The Beatles | Song Info - オールミュージック. 2020年10月25日閲覧。
  21. Everett 2001, p. 329.
  22. MacDonald 1994, p. 176.
  23. Roach, Pemberton. Beatle Country - The Charles River Valley Boys | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2021年9月19日閲覧。
  24. Change of Scenery - The Seldom Scene | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2021年9月19日閲覧。
  25. This Bird Has Flown - Various Artists | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2021年9月19日閲覧。
  26. Various Artists This Bird Has Flown: A Tribute to the Beatles' Rubber Soul [Razor & Tie; 2005]”. Pitchfork (2005年10月24日). 2007年7月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月12日閲覧。

参考文献

  • Aspinall, Neil (April 1966). “Neil's Column”. The Beatles Monthly Book (33).
  • Decker, James M. (2009). “"Try thinking more": Rubber Soul and the Beatles' transformation of pop”. In Womack, Kenneth. The Cambridge Companion to the Beatles. Cambridge: Cambridge University Press. pp. 75-89. ISBN 978-0-521-68976-2
  • Everett, Walter (1999). The Beatles as Musicians: Revolver through the Anthology. Oxford and New York: Oxford University Press. ISBN 978-0-1951-2941-0
  • Everett, Walter (2001). The Beatles as Musicians: The Quarry Men Through Rubber Soul. US: Oxford University Press. ISBN 0-19-514105-9. https://archive.org/details/beatlesasmusicia00ever
  • Lewisohn, Mark (1988). The Beatles Recording Sessions. New York: Harmony Books. ISBN 0-517-57066-1
  • Lewisohn, Mark (2013). The Beatles – All These Years, Volume One: Tune In. Crown Archetype. ISBN 978-1-4000-8305-3
  • MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (2nd revised ed.). London: Pimlico. ISBN 978-1-8441-3828-9
  • Miles, Barry (1997). Paul McCartney: Many Years From Now. New York: Henry Holt & Company. ISBN 0-8050-5249-6
  • Sheff, David (2000). All We Are Saying: The Last Major Interview with John Lennon and Yoko Ono. New York: St. Martin's Press. ISBN 0-312-25464-4
  • Womack, Kenneth (2007). Long and Winding Roads: The Evolving Artistry of the Beatles. New York: Continuum. ISBN 0-8264-1746-9
  • Womack, Kenneth (2009). “Beatles Discography, 1962–1970”. The Cambridge Companion to the Beatles. Cambridge: Cambridge University Press. pp. 286-293

外部リンク

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