電送人間

電送人間』(でんそうにんげん)は、1960年昭和35年)に東宝が製作した特撮ホラー映画[6]。カラー、東宝スコープ[出典 6]、パースペクタ立体音響[4]。併映は宝塚映画作品『爆笑嬢はん日記』(主演:佐原健二、監督:竹前重吉[2][4]

変身人間シリーズ > 電送人間
電送人間
The Secret of the Telegian[出典 1]
監督
脚本 関沢新一
製作 田中友幸
出演者
音楽 池野成
撮影
編集 平一二
製作会社 東宝[出典 2][注釈 1]
配給 東宝[出典 3][注釈 1]
公開 日本の旗 1960年4月10日[出典 4]
上映時間 85分[出典 5]
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
前作 美女と液体人間
次作 ガス人間㐧1号

概要

美女と液体人間』に続く変身人間シリーズの第2作[出典 7]。検討用台本の段階で「怪奇空想科学映画シリーズ」と銘打たれており、第3作『ガス人間第一号』も本作品とほぼ同時期に検討用台本が完成しているなど、当初よりシリーズものとして製作が進められた[14][15]。原作表記はないが、海野十三が「丘丘十郎」名義で発表した小説『電送美人』が下敷きになっていると考えられている[14][15]。物語は、SF設定を用いたミステリー映画という趣となっている[2]

監督の福田純は、本作品で初めて特撮作品を監督した[出典 8]。本来は本多猪四郎が監督を務めるはずであったが、『日本誕生』の製作遅延によって順延となった『宇宙大戦争』の製作に追われていたため、『空の大怪獣 ラドン』などで助監督を務めた福田が監督に選ばれた[14][注釈 2]。特撮班も『宇宙大戦争』の後に『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』が控えていたため、その合間の年末年始にかけて特殊技術の撮影が行われた[14]。本作品では傾斜フレームの構図を多用している[11]

恐るべき火遊び』に続いて本作品が監督作品2作目である福田はおおむねの好評を受けたことにより、以降もアクション作品を中心に監督していく。主演の鶴田浩二は福田の助監督時代から親交があり、彼がキャスティング作業を始める前の時点で主演に決定していた。このことについて、福田は「鶴田との関係を知っていたプロデューサーの田中友幸の配慮があったのではないか」と述懐している[出典 9]

1968年7月27日17:00-18:30には、フジテレビでテレビ初放映された。

ストーリー

ブローカーの塚本が多摩川園のお化け屋敷へ呼び出され、突如現れた人影に銃剣で刺殺されるという殺人事件が発生する。事件を追う東都新聞の学芸部記者・桐岡勝は現場に残されたクライオトロンを発見し、大学時代の同窓生である警視庁の小林警部から塚本が密輸に関わっていたことを知らされる。桐岡と小林は、塚本とつながりのあるキャバレー経営者・隆昌元を張り込む。しかし、隆は発光する不気味な怪人によって刺殺され、警官隊の追跡もむなしく怪人が逃げ込んだ倉庫は火災で焼失する。倉庫内に怪人の死体はなく、冷却装置と放電装置を組み合わせたような謎の機械の残骸だけが残されていた。

小林は隆の殺害現場に居合わせ、塚本や隆と同様に従軍時代の認識票を郵送された滝と大西を追求し、大西の元部下である須藤兵長の存在を知る。14年前、大西、隆、塚本、滝は敗戦の混乱に乗じて軍資金の金塊の横領を目論み、それを阻止しようとした須藤と陸軍技術研究所の仁木博士を金塊もろとも洞窟へ生き埋めにしていた[注釈 3]が、そこからは金塊はおろか須藤と仁木の死体も見つからなかったという。仁木が人間を電送する装置を開発していたことや、物体電送機に必要な冷却装置が軽井沢の小谷牧場へ発送されたことを知った桐岡は、牧場経営者の中本が須藤ではないかと推理する。しかし、桐岡の権限では決定的な証拠をつかめず、滝は予告通り物体電送機を使った犯行により、警官隊の眼前で殺害されてしまう。

捜査本部は小谷牧場への一斉摘発を行い、仁木と物体電送機を発見するが、やはり中本を偽っていた須藤は逃走する。一方、最後の標的となった大西は愛知県知多半島の小篠島の別荘へ身を隠していたが、島内には物体電送機が運び込まれていた。小谷牧場内に潜伏していた須藤は、殺人に反対する仁木の首を絞めて昏倒させ、物体電送機を使って小篠島へ向かう。須藤は大西を殺害して復讐を完遂し、またしても物体電送機で逃亡を図る。だが、浅間山の噴火によって電波が乱れ、まだ息のあった仁木が物体電送機を停止したため、須藤は苦悶しながら消滅する。小谷牧場も浅間山の噴火によって崩壊し、物体電送機の秘密は闇に葬られたのだった。

登場キャラクター

諸元
電送人間
THE TELEGIAN[21]
別名復讐鬼[22]
身長1.8 m[23][22][注釈 4]
体重70 kg[23][注釈 5]
出身地
  • 軽井沢小谷牧場[11]
  • (軽井沢・仁木博士の研究所[22]
電送人間
物体電送機を用いる神出鬼没の復讐鬼[出典 10]。その正体は太平洋戦争末期に私腹を肥やすために国家と軍を裏切って軍資金の金塊を横領しようとする上官らに銃剣で殺害されて生き埋めにされた元旧日本陸軍兵長の須藤であり、現在は中本伍郎という偽名を用いている[出典 11]。陸軍技術研究所の科学者であった仁木博士を欺いて、物体電送機を利用し、銃剣を用いて上官たちを殺害した[出典 12]
普段は精巧な覆面を被って端正な顔立ちに見せかけているが、実は顔中に焼けただれた痕がある。これは「電送中に電波が乱れると映像がゆがみ、同時に電送されている物体も溶ける」という電送装置の欠陥によるもの。
  • 他の変身人間と異なり、設定上は電送装置を使用しているだけの人間だが、体に電流が走るなど怪人として描写されている[16][11]。合成は、ロトスコープを用いて1コマずつ手作業で行われたとされる[20]。ラストの消滅シーンは、演じる中丸の映像を変型ガラスに投映して撮影し、さらにそのフィルムに合成処理を行っている[20]。脚本を担当した関沢新一は、執筆にあたり科学的な検証は行っていないといい、理屈よりも目で見て納得できることを優先した旨を語っている[25]
  • 検討用台本での戦時中の回想シーンでは、須藤は左目を失い顎も欠けていると描写され[14]、これに準じた特殊メイクのテストショットも撮られているが、本編では用いられなかった[20]
  • 電送人間を演じた中丸忠雄は「お化け役」のように感じたそうで、当時に試写を見て「とんでもない作品に出てしまった」と真っ青になったという。そのため、田中から「『ガス人間第一号』のガス人間・水野役をやってくれないか」と声をかけられた際には思わず断ってしまい、しばらく干されてしまったという[26][27]

キャスト

ノンクレジット

スタッフ

参照[5][6][27]

視覚効果

本作品における重要なガジェットとして「物体電送機」が挙げられるが、これ自体は当時のSFとしてそれほど珍しいものではなかった。本作品以前のアメリカ映画『ハエ男の恐怖』に同様の機械が登場しているが、円谷英二は「物体が電送される原理を観客に眼で見て解らせる」ための映像を作り上げることにこだわった。そのヒントとなったのが、当時多くの映画関係者が「電気紙芝居」と呼んで馬鹿にしていた「テレビ」である。当時のブラウン管方式のテレビ映像は、画面上にある「走査線」と呼ばれる細かい横縞模様に沿って管内の電子ビームが映像信号をスキャンしていくことによって映像を再生していたが、送受信の不具合によっては乱れた縞模様が発生する場合があった。円谷はこれに着目し、電送人間役の中丸忠雄の上に光学合成で青白く光る細かい横縞模様を焼き込み、「脳天から足の爪先へと徐々に消えていく」という映像を完成させた[7][12]。また、電送機で瞬間移動した直後の犯行中でも、ときどき全身に横縞模様が走ってバリバリと雑音を発するという[11]、芸の細かいところを見せている。

美術助手の井上泰幸は、美術の渡辺明が電送装置のデザインに苦心していたことを証言している[16]。福田は、円谷とともに電送装置のデザインも試行錯誤したといい、撮影時も半信半疑であったが、後年のSF作品で同様のテレポート装置が多く見られるようになり、間違っていなかったと安堵したという[18]

列車爆破のシーンはミニチュアで撮影された[出典 17]。ワンカットのみではあるが、蒸気を吹きながら自走する精巧なミニチュアが用いられた[7][20]

クライマックスの浅間山の噴火とそれに伴い崩壊する研究所も、ミニチュアによって表現された[16][7]

映像ソフト

  • VHS 品番 TG4343[35]
  • LD 品番 TLL2488[35]
  • DVD
    • 2005年5月27日に東宝より発売された[36]。オーディオコメンタリーは中丸忠雄[36]
    • 2014年2月7日に、期間限定プライス版として再発売された。
    • 2015年7月15日に、東宝DVD名作セレクションとして再発売された。
  • Blu-ray Disc

脚注

注釈

  1. ノンクレジット
  2. 福田は、プロデューサーの田中友幸から本多だけではスケジュールの問題が生じやすいため、彼とは異なるSF路線を育成するとして白羽の矢を立てられたという[18]
  3. 当時は「時効15年」という法制度があったため、大西らの刑事責任を捜査当局が問うことはなく、むしろ須藤の報復殺人から護衛することに躍起になっていた。
  4. 資料によっては、「不明」と記述している[21]
  5. 資料によっては、「60キログラム」[22]、「不明」[21]と記述している。
  6. 書籍『動画王特別編集ゴジラ大図鑑』では、中条昭子と表記している[9]
  7. 書籍『東宝特撮映画大全集』では、大西正義と記述している[27]
  8. 書籍『東宝特撮映画大全集』では、仁木嘉十郎と記述している[27]
  9. 書籍『東宝特撮映画大全集』では、吉村と記述している[27]
  10. 書籍『東宝特撮映画全史』では、おばけの易者と記述している[28]
  11. 書籍『東宝特撮映画大全集』では、地元の警官と記述している[27]
  12. 資料によっては、小玉清の役名を地元の警官としている[5][28]

出典

  1. ゴジラグラフィティ 1983, p. 35, 「PART.2 電送人間」
  2. ゴジラ来襲 1998, pp. 42–43, 「第2章 東宝・怪獣SF特撮映画の歩み 第1期(1954-1962)」
  3. ゴジラ画報 1999, p. 92, 「電送人間」
  4. 東宝特撮映画大全集 2012, p. 46, 「『電送人間』」
  5. 映画資料室”. viewer.kintoneapp.com. 2020年4月25日閲覧。
  6. 東宝特撮映画全史 1983, p. 545, 「東宝特撮映画作品リスト」
  7. 円谷英二特撮世界 2001, p. 74, 「電送人間」
  8. キャラクター大全 2014, p. 47, 「東宝特撮映画リストACT.2」
  9. 動画王特別編集ゴジラ大図鑑 2000, p. 42, 「コラム1 変身人間の系譜」
  10. 東宝ゴジラ会 2010, p. 294, 「円谷組作品紹介」
  11. 東宝特撮全怪獣図鑑 2014, p. 24, 「電送人間」
  12. 超常識 2016, pp. 307–308, 「東宝変身人間映画の系譜」
  13. GTOM vol.0 2022, p. 23, 「電送人間」
  14. 東宝特撮映画大全集 2012, p. 48, 「『電送人間』怪人図鑑/兵器図録/資料館/撮影秘話-特別編-」
  15. DVDコレクション 2011, p. 9, 鈴木宣孝「『怪奇空想科学映画シリーズ』の誕生」
  16. 東宝特撮映画全史 1983, pp. 180–181, 「東宝特撮映画作品史 電送人間」
  17. ゴジラ大全集 1994, pp. 58–59, 「東宝特撮映画史 ゴジラ誕生 特撮路線の確立」
  18. ゴジラ大全集 1994, p. 152, 「SPECIAL INTERVIEW 心がけたアクション演出 福田純」
  19. DVDコレクション 2011, pp. 10–11, 「撮影秘話」
  20. 東宝特撮映画大全集 2012, p. 49, 「『電送人間』撮影秘話/川北監督に訊く」
  21. 全怪獣大図鑑 2021, p. 260, 「怪物、怪人、宇宙人」
  22. ゴジラ来襲 1998, p. 199, 「第7章 特選!東宝怪獣名鑑'98」
  23. 怪獣大全集 1991, p. 68, 「東宝モンスター名鑑」
  24. キャラクター大全 2014, p. 127, 「SF・特撮映画全集1」
  25. 「関沢新一 長編インタビュー(2)」『海底軍艦/妖星ゴラス/宇宙大怪獣ドゴラ』東宝出版事業室〈東宝SF特撮映画シリーズ VOL.4〉、1985年8月1日、196頁。ISBN 4-924609-13-7。
  26. DVDでの中丸のコメントより。
  27. 東宝特撮映画大全集 2012, p. 47, 「『電送人間』作品解説/俳優名鑑」
  28. 東宝特撮映画全史 1983, p. 536, 「主要特撮作品配役リスト」
  29. DVDコレクション 2011, pp. 7–8, 「俳優名鑑」
  30. モスラ映画大全 2011, p. 35, 「脇役俳優辞典10」
  31. モスラ映画大全 2011, p. 69, 「脇役俳優辞典24」
  32. モスラ映画大全 2011, p. 75, 「脇役俳優辞典26」
  33. モスラ映画大全 2011, p. 61, 「脇役俳優辞典20」
  34. モスラ映画大全 2011, p. 19, 「脇役俳優辞典03」
  35. 日本特撮映画図鑑 1999, p. 140, 「東宝特撮作品 ビデオLDラインナップ 特撮シリーズ」
  36. 「Visual Radar」『宇宙船』Vol.118(2005年5月号)、朝日ソノラマ、2005年5月1日、104頁、雑誌コード:01843-05。
  37. 変身人間シリーズ Blu-ray 2枚組”. 東宝WEB SITE. 東宝. 2022年1月28日閲覧。

出典(リンク)

参考文献

  • 『ゴジラグラフィティ 東宝特撮映画の世界』朝日ソノラマファンタスティックコレクション〉、1983年9月20日。
  • 『東宝特撮映画全史』監修 田中友幸東宝出版事業室、1983年12月10日。ISBN 4-924609-00-5。
  • 『ゴジラvsキングギドラ 怪獣大全集』構成・執筆・編集:岩畠寿明、小野浩一郎(エープロダクション)、講談社〈講談社ヒットブックス20〉、1991年12月5日。ISBN 4-06-177720-3。
  • テレビマガジン特別編集 誕生40周年記念 ゴジラ大全集』構成・執筆:岩畠寿明(エープロダクション)、赤井政尚、講談社、1994年9月1日。ISBN 4-06-178417-X。
  • 坂井由人、秋田英夫『ゴジラ来襲!! 東宝特撮映画再入門』KKロングセラーズ〈ムックセレクト635〉、1998年7月25日。ISBN 4-8454-0592-X。
  • 『東宝編 日本特撮映画図鑑 BEST54』特別監修 川北紘一成美堂出版〈SEIBIDO MOOK〉、1999年2月20日。ISBN 4-415-09405-8。
  • 『ゴジラ画報 東宝幻想映画半世紀の歩み』(第3版)竹書房、1999年12月24日(原著1993年12月21日)。ISBN 4-8124-0581-5。
  • 『動画王特別編集 ゴジラ大図鑑 東宝特撮映画の世界』キネマ旬報社〈キネ旬ムック〉、2000年12月16日。ISBN 4-87376-558-7。
  • 『円谷英二特撮世界』勁文社、2001年8月10日。ISBN 4-7669-3848-8。
  • 東宝ゴジラ会『特撮 円谷組 ゴジラと東宝特撮にかけた青春』洋泉社、2010年10月9日。ISBN 978-4-86248-622-6。
  • 『別冊映画秘宝 モスラ映画大全』洋泉社〈洋泉社MOOK〉、2011年8月11日。ISBN 978-4-86248-761-2。
  • 『東宝特撮映画DVDコレクション』第51号、デアゴスティーニ・ジャパン、2011年9月、雑誌コード:20694-9/27。
  • 『東宝特撮映画大全集』執筆:元山掌 松野本和弘 浅井和康 鈴木宣孝 加藤まさし、ヴィレッジブックス、2012年9月28日。ISBN 978-4-86491-013-2。
  • 講談社 編『キャラクター大全 ゴジラ 東宝特撮映画全史』講談社、2014年7月15日。ISBN 978-4-06-219004-6。
  • 『東宝特撮全怪獣図鑑』東宝 協力、小学館、2014年7月28日。ISBN 978-4-09-682090-2。
  • 『ゴジラの超常識』[協力] 東宝、双葉社、2016年7月24日(原著2014年7月6日)。ISBN 978-4-575-31156-3。
  • 『ゴジラ 全怪獣大図鑑』講談社〈講談社 ポケット百科シリーズ〉、2021年7月2日。ISBN 978-4-06-523491-4。
  • 講談社 編『ゴジラ&東宝特撮 OFFICIAL MOOK』 vol.0《ゴジラ&東宝特撮作品 総選挙》、講談社〈講談社シリーズMOOK〉、2022年12月21日。ISBN 978-4-06-530223-1。

外部リンク

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