香港MTR

MTR(エムティーアール、Mass Transit Railway)は、香港の主要鉄道路線システムである。廣東語では港鉄(こうてつ、繁体字中国語: 港鐵)。2007年12月2日に香港地鉄公司へ九広鉄路公司の運営権が譲渡、統合されて誕生した香港鉄路有限公司が運営している。

港鉄(MTR)
東涌線のK-Train電車
基本情報
香港の旗 香港
種類
開業
  • 1910年10月1日 (1910-10-01)KCR開業)
  • 1979年10月1日 (1979-10-01)(MTR開業)
  • 2007年12月2日 (2007-12-02)(MTRとKCRの合併)
運営者 香港鉄路有限公司
公式サイト www.mtr.com.hk
詳細情報
総延長距離
  • 174.7 km(都市高速鉄道)
  • 36.2 km(ライトレール)
路線数
  • 10路線(都市高速鉄道)
  • 12路線(ライトレール)
駅数
  • 97駅(都市高速鉄)
  • 68駅(ライトレール)
1日利用者数
  • 496万2,000人(地下鉄)
  • 70万2,000人(その他)
軌間 1,435 mm標準軌
1,432 mm(1979-2014年、KCR除く)
電化方式 交流電(屯馬線東鉄線
直流電
最高速度 80 km/h(市区線)
135 km/h(機場鉄路)
300 km/h(高鉄)
路線図
路線図
港鉄
各種表記
繁体字 港鐵
簡体字 港铁
拼音 Gǎngtiě
発音: カンティェー
広東語拼音 Góngtít
広東語発音: コンティッ
日本語漢音読み こうてつ
英文 Mass Transit Railway (MTR)

概要

1979年10月観塘線観塘駅から石硤尾駅間の開通を皮切りに、現在では香港島北部、九龍地区、新界南部、およびランタオ島の4地区で全11路線(全長174.4 km)・93駅を営業、一日の利用者数は約470万人程である。

2007年12月2日からは、九広鉄路公司が運営していた4路線の運営も行っている。

ロゴマークは漢字の「」の篆書体に由来し、「力・安定・成長」を意味する。また、2つの「M」や九龍半島香港島を表す円弧を1つの棒で繋げることにも見える[1]

施設

旧香港地下鉄

旧香港地下鉄の路線で使用されている車両は2019年現在5種類存在する。一般車両については英国日本韓国中国の各国で製造されている。一次車では元宗主国であったイギリスが建設した影響からか、ロンドン地下鉄と近いデザインの施しが随所に見られた。連結部は貫通しており扉は無く車両間の移動は自由である。また連結部の扉が無いため、直線部への列車進入時には前後では長い空間が広がる。座席は全てロングシートで、素材はステンレスである。2009年より優先席車椅子専用エリアが設置された。

案内表示は各ドアに設置された路線図上のLEDの点灯により停車駅と運行されている路線を表示する。なお座席上にもLED画面が設置されているが、これは広告用のものである。中吊りシールなど、車内に紙のメディアによる広告は掲出されていない。

全ての路線でアルミまたはステンレス製の車両が使用され、先頭車両の前面にはMTRのコーポレートカラーである赤色の帯とロゴマークが施されている。一部ではラッピング車両の運行も実施している。

一方、機場快線はスペインドイツ(ただし、実車はカナダボンバルディアが作成)の共同製造である。全ての車両の座席はモケットの非転換式クロスシートである。当初、各背部分には液晶ディスプレイが設置され、航空機の発着情報や空港の配置情報、香港市街の情報などを表示していたが、現在は撤去されている。室内のドア付近には手荷物置き場が設けられている他、空港駅ではエアポート・エクスプレスホームと空港の出発階または到着階との完全バリアフリー化が図られるなど、空港への連絡路線として支障のないよう設計されている。なお、エアポート・エクスプレスの香港方先頭車は荷物専用車両で、香港駅と九龍駅のインタウンチェックイン(市中チェックインカウンター)で預けられた航空旅客の荷物が搭載され空港へ運ばれる。

迪士尼線用車両はイギリス製車両を大改造したものが使用されており、MTR初の無人運転が行われている。ただし、手動運転用の運転台は通常の車両と同一のものが用意されている。

MTR内の車両は全て冷房完備である。

車内アナウンスは、一般路線と機場快線ともに広東語普通話北京語)、英語の順に自動放送が行われる(当初は普通話でのアナウンスは無かった)。非常時を除き、乗務員によるアナウンスは行わない。また、次駅到着前には「広東語:請小心月台空隙 / 普通話:请小心月台的空隙 / 英語:Please mind the gap(訳:ホームとの隙間にご注意下さい)」という自動放送、ドア開閉時にはドアチャイムとともに、音声で「広東語:請勿靠近車門 / 普通話:请不要靠近车门 / 英語:Please stand back from the train doors(訳:ドア付近から離れて下さい)」という自動放送が必ず流される[2]

旧KCR

軽鉄

電化時に導入された1次車はイギリスメトロキャメル社製のものであり、全ての車両のドア数は3ドアとなっている。うち3両の基本編成は未リニューアルのまま静態保存している。

メトロキャメル電車は1997年よりリニューアル工事を受けたのち、別名MLR車 (Mid-Life Refurbished train) と呼称されている。座席はMTRの車両と同じく、ステンレス製のロングシートが採用されている。加えて、車端部にステンレス製のクロスシートを備えている。また、一等車両(2ドア)以外の一般車両ドア数は5ドアとなっている。

SP1900・1950形は日本の近畿車輛及び川崎重工業製である。これは九広西鉄の開業に前後して導入されたものであり、車端部のクロスシートが無くなるなど、車内はよりMTRの車両と類似している。また1等車のシートについても若干グレードが上がっている。LED表示は、ようやくマス目が無くなり、中寄せで表示する事が可能となった。車両中央部には液晶ディスプレイが装備され、各種広告や情報が流されている。なお西鉄線および馬鞍山線にもほぼ同じ車両が導入されているが、一等車を連結しない、編成両数が異なる(東鉄線:12両編成、西鉄線・馬鞍山線:8両)、車内案内表示器が異なるなどの差異がある。

また軽鉄については、川崎重工業製の車両が導入されている。LRTは最大2両編成の連結で運転されているが、後部に連結される車両については、運転台のついていない連結専用のタイプ(トレーラー)がある。

高速鉄道

度重なる工期延期を経て[3]2018年に香港側全路線完成[4]、同年9月23日より[5]正式に全線開業した高速鉄道路線の広深港高速鉄道用に導入された。

中国本土のCRH380A型とほぼ同型の車両だが、編成の組成や塗装、機器などが変更されている。

駅構内

香港鉄路では現在駅施設のバリアフリー化を進めており、駅要所出入り口のエレベーター設置、転落防止や坑道風対策のホームドアを全地下駅に設置する予定である。

東涌線を除くMTR路線内の地下化駅構内には、駅毎に異なる色のタイルが使用されており、独特の雰囲気を醸し出している。また構内のインフォメーションや誘導のサイン表示は全路線で統一されており、ピクトグラムの他に言語表示として中国語繁体字)と英語で表記されている。駅アナウンスは列車内と同様に広東語、普通話(北京語)、英語の自動放送である。

改札内の駅構内には、トンネル壁面とエスカレーターの設置壁面、柱部分などに各種広告が掲出されている。改札外では、壁面にアクリル板やロール式表示機による広告が掲出されている。トンネル壁面の広告では液晶ディスプレイプラズマディスプレイプロジェクターによる投影式で動画による広告も存在する。

ホーム上には、LED方式による列車の案内表示板が設置されている。中国語(繁体字)と英語で表記され、画面上方には地鐵公司(MTRC)からの情報が、画面下方には次列車の到達予想時間や、列車到着時の注意喚起が表示される。このLED表示器は、2015年ごろから順次液晶テレビ画面への切替が進んでおり、液晶画面になってからは動画広告、複数列車の到着予定など、新しい情報が表示されるようになっている。

乗車カード切符)はプラスチック製の非接触型ICカードで、これは出札時に回収後、再利用される。 非接触型ICカードには、オクトパスカード(後述)、及び機場快線のみで使用されるMifare Ultralightカードが採用されている[6]

ほとんどのMTR駅構内に、セブンイレブンサークルK(OK便利店)などの小規模型コンビニエンスストア美心西餅などのケーキ店、優の良品/AJI ICHIBAN零食物語/OKASHI LANDなどの菓子類の売店があり、飲食物や雑貨類が販売されている。他に利用者の多い駅には香港上海銀行 (HSBC) や恒生銀行 (Hang Seng Bank)、中国銀行 (Bank of China) などのATMコーナーが、また恒生銀行 (Hang Seng Bank) の銀行窓口が設置されており、出入金や外貨両替などの窓口業務を行っている。ただし、これらの店舗や施設は改札外にのみ設置されている(旺角東や香港など一部の駅には改札内に売店があったり、欣澳など一部の駅ホーム上にATMが設けられている例がある)。

おもな違反罰則

おもな違反規則としては、

  • 改札内施設(駅構内)・車内での飲食(実際には、この規則は必ずしも厳格に遵守されておらず、実施の側面も廃棄物放棄・施設汚損対策および、車内環境の保持である。改札内である駅ホーム、車内などでペットボトル飲料や菓子類を密かに飲食する乗客もおり、上述のように改札内で飲料類の販売も実施されていたりするが、あくまで「禁止」であるため、堂々と行う者は少ない。 餐車または、それに類する車両を連結していたり、飲食物の車内販売を実施している広州・上海・北京方面への「城際直通車」車内は除外されている)
  • 施設内・車内での喫煙
  • 施設内でのゴミ投棄
  • 施設への落書き
  • 施設への危険物持込
  • 施設へのオーバーサイズの荷物の持込
  • 乗車券折り曲げ(→再利用するため)
  • 東鐵の頭等車輛(1st Class、日本のグリーン車に類似している)の不正乗車(一等券を持ってない、またはオクトパスカードへ一等に乗るための記録をしていない)
  • 軽鉄への無賃(不正)乗車

などがある。特に、飲食で理由の如何を問わず車内を汚損した場合および、喫煙に関しては縛りが厳しいようである。違反した場合には罰金で最高5000香港ドルが課せられることとなっているが、欧州の同様規則(例えば「無札乗車は問答無用で一発摘発」)とは異なり、係員や清掃員の指示(いわゆる「お願い」・「前座」)に完全無視を決め込んだ場合などに、身分証・パスポート記載内容の記録とともに罰金を請求されるようである。なお、検札にて頭等車輛の不正乗車発覚の際は問答無用で罰金香港500ドルを請求される。 詳細は 香港鐵路附例(英文 / 繁体中文)なども参照

なお、日本を除く大多数の国と同様に、車内において携帯電話等通信機器での通話・通信を制限する区域、啓発広報類などは存在しない(地下・海底区間も含め、ほとんどの区間が在港無線通信事業者の「圏内」であり、それらを香港居民は「最良のサービス」であるとしており、車内の位置や時間を問わず通話・通信を行う光景は日常的なものである)。

オクトパス(八達通)

香港では、公共交通機関の中では世界の先頭を切って、日本のソニーが開発した非接触型ICカード規格であるFeliCaを採用した「オクトパスカード(Octopus Card、八達通)」と呼ばれる交通プリペイドカード1997年に導入した。現在、このICカードで香港域内の地下鉄鉄道バス香港トラムLRTフェリーケーブルカーなど、タクシーを除く、香港域内ほとんどの公共交通機関において使用が可能である(タクシーはごく一部使用可能車両有り)。また市中のコンビニエンスストア、ファーストフード店、コーヒーショップ、主に大衆チェーンのレストラン自動販売機証明写真撮影機、公衆電話駐車場の支払いなどの様々な加盟店・施設で電子マネーとしての決済使用が可能である。

運賃面での特徴として、旧KCR路線におけるオクトパスの使い方に、ホーム上あるいは連結部に設置されたカードリーダにかざすことにより、1等車の利用手続きを行える[7]、旧KCR直営のフィーダーバスや軽鉄と旧KCR鉄道線相互に乗り継ぐ際、フィーダーバスや軽鉄の運賃が後追いで無料サービスとなるシステム、普通乗車券よりも常に低廉な運賃、エアポート・エクスプレスとの乗り継ぎに関する1乗車の運賃免除、また「2乗車目10%引き」プロモーション、バスを乗り継ぐ際の割引、街中に設置された「fare saver」による割引サービス(カードをかざすだけで割引を受けられ、MTRを利用するように促す)などICカードであることの利点を活かしたサービスが行われている。

運賃・料金制度

相互駅間の運賃については、各駅において掲示され、日本におけるいわゆる「三角表」のような表も公式が公表している。

原則として距離を鑑みた構造になっているが、「海底トンネルを通過する区間」「馬場駅が発着に含まれる」「羅湖・落馬州駅が発着に含まれる」区間に関しては割り増しの計算が行われている。また、エアポートエクスプレスについては、他線との乗り継ぎを認めない独立運賃となっている(ただし先述のようにオクトパスでAELとの乗り継ぎに関する無償優遇は実施されている)。 また、小児の運賃と、敬老運賃が設定されている。特に敬老運賃は海底トンネル・馬場駅の運賃上昇を免除されているため、格段に安い。 料金面では、1等車利用時の料金となるが、これは原則として運賃と同額であるため、わかりやすい制度となっている。

LRTは長らくゾーン制を採用し、ICカードでもゾーン性による運賃を適用していたが、2022年3月時点では現金運賃がゾーン制、IC運賃は対駅数区間制となっている[8]。ただし、IC運賃は原則として同一駅相互間の現金運賃を上回ることがないように設定されている。

建設計画

将来の香港MTR路線図
将来の香港MTR路線図

香港MTRは現在延伸工事を実施している。

屯馬線を屯門駅から南へ延伸し、屯門碼頭付近に新設する屯門南駅まで至る計画があり、2023年開業予定である。

屯馬線の兆康駅 - 天水囲駅間に洪水橋駅を新設する計画があり、2024年開業予定である。

南港島線(西段)として、香港大学駅から黄竹坑駅をむすぶ路線の計画があり、2021年着工、2026年開業予定である。

北港島線として、将軍澳線を北角駅から西へ添馬駅まで、東涌線を香港駅から東へ添馬駅まで延伸する計画があり、2021年着工、2026年開業予定である。

北環線として、錦上路駅から落馬洲駅および古洞駅をむすぶ路線の計画があり、2027年開業予定である。

東涌線を東涌線から西へ延伸し、新設する東涌西駅まで至る計画があり、2029年開業予定である。

その他、東九龍線として、鑽石山駅から宝琳駅をむすぶ路線が計画されている。

旧駅名

荃湾線東鉄線に、開業当時から名前が変わった駅がいくつかある。以下に、その変遷を記す。

湾線

※左側が変更前、矢印を挟んで右側が変更後の駅名。中国語駅名・英語駅名のうちどちらか一方のみが変わったものについて、変わらなかった駅名は右側では記載を省略した。

  • 茘湾(Lai Wan)→ 美孚(Mei Foo)
  • 旺角(Argyle) → Mong Kok
  • 油麻地(Waterloo)→ Yau Ma Tei
  • 中環(Chater)→ Central

東鉄線

  • 馬料水(Ma Liu Shui)→ 大学(University)
  • 旺角(Mong Kok)→ 旺角東(Mong Kok East)
  • 九龍(Kowloon)→ 紅(Hung Hom)

路線

営業路線

線色 路線名 起点 終点 距離 開通年
  東鉄線 金鐘駅羅湖駅 本線:40.5km
落馬洲支線:7.0km
1910年
1982年(電気化)
落馬洲駅 2007年(落馬洲支線)
  観塘線 調景嶺駅黄埔駅 18.2km 1979年
2016年(観塘線延線)
  荃湾線 荃湾駅中環駅 16.0km 1982年
  港島線 柴湾駅堅尼地城駅 16.3km 1985年
2014年(港島線西延)
  東涌線 香港駅東涌駅 31.1km 1998年
  機場快線 香港駅博覧館駅 35.3km 1998年
  将軍澳線 宝琳駅北角駅 本線:8.8km
支線:3.5 km
2002年
康城駅 2009年
  屯馬線 烏溪沙駅屯門駅 57km 2003年(西鉄線)
2004年(馬鞍山線尖沙咀支線)
2009年(九龍南線)
2020年(馬鞍山線へ直通)
2021年(西鉄線へ直通)
  迪士尼線 欣澳駅迪士尼駅 3.5km 2005年
  南港島線(東段) 海怡半島駅金鐘駅 7.4km 2016年
  軽鉄 屯門区元朗区天水囲区 36.15km 1988年
  広深港高速鉄道(香港段) 香港西九龍駅福田駅 26km 2018年
計画路線
  南港島線(西段) 香港大学駅黄竹坑駅 -km 未定/未着工

画像

脚注

  1. 楊文娟 (2018年1月25日). “【鐵道設計】M for Metro 全世界77個M字地鐵標誌設計諗到頭痕?” (中国語). 香港01. https://www.hk01.com/%E8%97%9D%E6%96%87/152052/%E9%90%B5%E9%81%93%E8%A8%AD%E8%A8%88-m-for-metro-%E5%85%A8%E4%B8%96%E7%95%8C77%E5%80%8Bm%E5%AD%97%E5%9C%B0%E9%90%B5%E6%A8%99%E8%AA%8C%E8%A8%AD%E8%A8%88%E8%AB%97%E5%88%B0%E9%A0%AD%E7%97%95 2018年9月12日閲覧。
  2. 港島線のHKU方面延伸開業時からソフトウェア更新が行われ、ホーム側にも「Please stand back from the platform doors.」の放送とドア閉扉警報音の鳴動が行われるようになっている
  3. 高鐵超支148億 延誤兩年(蘋果日報 2014年04月16日)
  4. 香港高速鉄道が開通 車内で中国の法律を適用で反発も朝日新聞デジタル 2018年9月22日
  5. 広深港高速鉄道が全面開通、本土と直結日本貿易振興機構(JETRO) - ビジネス短信 2018年9月27日
  6. - CET社公式サイト、こちらは使い捨てである
  7. 原則として乗車区間の運賃と同額の頭等料金となっている制度であることから、JR東日本の「Suicaグリーン券」と異なり、決済は出場駅改札において行われる
  8. https://www.mtr.com.hk/archive/ch/pdf/fam2021/LR_Fare.pdf

関連項目

外部リンク

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