KTM-23

KTM-23ロシア語: КТМ-23)は、ロシア連邦輸送用機器メーカーのウスチ=カタフスキー車両製造工場が展開する路面電車車両。車体の一部の床上高さを下げた部分超低床電車で、71-623という形式番号も有する[1][2][3][4]

KTM-23(71-623)
КТМ-23
KTM-23(71-623)(モスクワ
基本情報
製造所 ウスチ=カタフスキー車両製造工場
製造年 2009年 -
主要諸元
編成 単車(ボギー車)、片運転台
電気方式 直流550 V
架空電車線方式
最高運転速度 62 km/h
設計最高速度 75 km/h
車両定員 着席33人
立席94人(乗客密度5人2時)
最大187人(乗客密度8人2時)
車両重量 19.5 - 20.0 t
全長 16,200 mm
全幅 2,500 mm
全高 3,700 mm(集電装置含)
床面高さ 370 mm(低床部分)
760 mm(高床部分)
(低床率40 %)
車輪径 620 mm
固定軸距 1,940 mm
台車中心間距離 7,970 mm
主電動機 誘導電動機
主電動機出力 50 kw
駆動方式 並行カルダン駆動方式
出力 200 kw
制御装置 VVVFインバータ制御IGBT素子)
制動装置 回生ブレーキディスクブレーキ電磁吸着ブレーキ
備考 主要数値は[1][2][3][4][5][6][7]に基づく。

概要

ウスチ=カタフスキー車両製造工場が2006年に製造した、同社初の部分超低床電車3車体連接車)であるKTM-30(71-630)を基に開発された、1両でも運行可能な片運転台のボギー車(単車)。流線形の前面のカバー内部や後方には連結器が設置されており、総括制御による連結運転も可能である[1][2][3][4]

車体中央部、全体の40 %が床上高さ370 mmの低床構造となっており、幅が広い両開き扉(プラグドア)が設置されている他下部には車椅子利用客向けのスロープが収納され、バリアフリーや乗客の乗降速度の向上が図られている。また、動力台車が存在する箇所はステップを介する必要がある高床構造となっているが、小型の主電動機や小径車輪を用いる事で床上高さを760 mmに抑えている。車内照明には蛍光灯が用いられ、空調装置は暖房および強制換気に対応している[1][2][3][4]

回転軸を有する動力台車は軸ばねや枕ばねが設置され、状態が悪い軌道上でも振動や騒音が抑えられる。この台車に2基設置されている主電動機には信頼性の高さやメンテナンスの容易さ、小型化に適した誘導電動機が使われており、駆動方式には並行カルダン駆動方式が採用されている。制動装置は電力を回収可能な回生ブレーキが使用されており、消費電力の削減が図られる。電気機器はマイクロプロセッサによる自動制御や診断が行われ、非常時には運転台に設置されたディスプレイに状態が表示される[1][2][3][4][7]

車種

2009年に試作車が製造され、翌2010年から量産が開始されて以降、2020年までにKTM-23(71-623)は以下の車種が展開されている[5][8][9][10][11][12][13]

  • 71-623-00 - KTM-23(71-623)のうち、最初に展開が行われた車種の1つ。乗降扉は右側に4箇所設置されている。2009年から2011年まで製造された[8][14]
  • 71-623-01 - 71-623-00と同時に製造された車種。車体前後の高床部分に設置された片開き扉の幅が71-623-00から拡大した一方、運転室は狭くなっている[9]
  • 71-623-02 - 上記の2車種の使用実績や各地の路面電車事業者からの要望に基づいた改良が加えられた車種。2012年以降生産が実施された。71-623-00に基づいた車体設計が採用された一方、台車が改良型の「631.0.01」に変更されている。電気機器はカノープス(Канопус)製のものが用いられたが、都市によっては他の企業が製造した機器が使われており、以下のような形式の細分化が実施された[10][11][15]
    • 71-623-02.01 - サンクトペテルブルクのチェルゴス(«ЧЕРГОС»)社が製造した電気機器を搭載した車種[11][16][17]
    • 71-623-02.02 - サンクトペテルブルクのエプロ(«Эпро»)社製の電気機器を搭載した車種[11][18]
  • 71-623-03 - ループ線を持たない、プラットホームが左右に存在するなどの線形条件を抱えた路線に向けて設計された両方向型の車種。1両でも運行可能だが、背中合わせに連結した両運転台の2両編成での運用を前提としており、乗降扉は右側に4箇所、左側に3箇所設置されている。電気機器はチェルゴス社が製造したが、一部車両はエプロ社が製造を担当しており、形式名も「71-623-03.01」となっている[12][19][20]
  • 71-623-04 - 2019年以降展開が行われている片方向型の車種。従来の車両から車体デザインが変更された他、空調装置の強化やUSBソケットの追加など快適性が向上している[13][21]

導入都市

KTM-23(71-623) 導入都市一覧[14][22][23][17][18][24][19][13]
都市 車両数 備考・参考
合計 00 01 02 03 04
ロシア連邦 モスクワ
(モスクワ市電)
67両 67両 後継の超低床電車の導入により2021年時点で他都市への譲渡が進行中[25][26]
クラスノダール
(クラスノダール市電)
52両 1両 20両 31両 2020年に29両、2021年に27両の71-623-04を増備予定[27][28]
ペルミ
(ペルミ市電)
46両 40両 6両 71-623-00のうち1両は2013年に火災により廃車[29]
マグニトゴルスク
(マグニトゴルスク市電)
30両 30両 71-623-02.01を導入[16]
カザン
(カザン市電)
22両 22両
サマーラ
(サマーラ市電)
21両 1両 20両
サンクトペテルブルク
(サンクトペテルブルク市電)
21両 5両 16両 [6]
ヴォルゴグラード
(ヴォルゴグラード市電)
20両 20両 ヴォルゴグラード・メトロトラムで使用[30]
ナーベレジヌイェ・チェルヌイ
(ナーベレジヌイェ・チェルヌイ市電)
20両 20両 [31]
スモレンスク
(スモレンスク市電)
19両 7両 12両
ハバロフスク
(ハバロフスク市電)
16両 2両 1両 13両
ニジネカムスク
(ニジネカムスク市電)
8両 2両 6両
コロムナ
(コロムナ市電)
7両 1両 6両
ノヴォクズネツク
(ノヴォクズネツク市電)
7両 7両 2020年以降運行開始予定[32]
タガンログ
(タガンログ市電)
5両 5両 2022年時点でクラスノダール市電へ全車譲渡予定[33]
ウファ
(ウファ市電)
5両 1両 4両 71-623-00は試作車[5]
スタールイ・オスコル
(スタールイ・オスコル市電)
2両 2両
ニジニ・ノヴゴロド
(ニジニ・ノヴゴロド市電)
1両 1両 試作車[5]
ノヴォシビルスク
(ノヴォシビルスク市電)
1両 1両
チェリャビンスク
(チェリャビンスク市電)
1両 1両
ウクライナ イェナーキイェヴェ
(イェナーキイェヴェ市電)
3両 3両
リヴィウ
(リヴィウバス工場)
1両 1両 2011年に製造後、リヴィウバス工場に搬入
営業運転には使用されなかった[34][35]
カザフスタン パヴロダル
(パヴロダル市電)
7両 7両
ラトビア ダウガフピルス
(ダウガフピルス市電)
8両 8両
合計(2019年現在) 375両 54両 23両 224両 36両 38両 廃車車両を含んだ数値

ギャラリー

関連項目

  • リヴィウバス工場 - ウクライナに存在した輸送用機器メーカー。2011年にウスチ=カタフスキー車両製造工場で生産された71-623を1両購入し、これを基にした部分超低床電車の開発に取り掛かったが、完成すること無く同社は2014年に倒産した[35][36]

脚注

注釈

    出典

    1. СОВРЕМЕННЫЕ ТРАМВАИ”. Усть-Катавский вагоностроительный завод. 2017年12月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月29日閲覧。
    2. Трамвайный вагон модели 71-623”. Усть-Катавский вагоностроительный завод. 2011年5月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月29日閲覧。
    3. 71-623”. vagons.ttransport.ru.. 2020年4月29日閲覧。
    4. Ryszard Piech (2009年5月12日). Tramwaje modułowe UKWZ Ryszard Piech”. Infobus. 2020年4月29日閲覧。
    5. Инна Шемаева (2019年2月15日). С учетом доходов ТОП-менеджеров корпорации? На УКВЗ обещают скорректировать зарплату”. Урал-пресс-информ. 2020年4月29日閲覧。
    6. Подвижной состав”. ГЭТ Электротранспорт Санкт-Петербурга. 2020年4月29日閲覧。
    7. 服部重敬 2019, p. 98.
    8. Трамвайный вагон модели 71-623 (623.00.00.000)”. Объединённая ракетно-космическая корпорация. 2020年4月29日閲覧。
    9. Трамвайный вагон модели 71-623-01 (623.00.00.000-01)”. Объединённая ракетно-космическая корпорация. 2020年4月29日閲覧。
    10. Трамвайный вагон модели 71-623-02 (623.00.00.000-02)”. Объединённая ракетно-космическая корпорация. 2020年4月29日閲覧。
    11. Новые транспортные технологии презентуют в Петербурге”. Ленэкспо (2015年5月22日). 2020年4月29日閲覧。
    12. В Волгограде началось пополнение трамвайного парка вагонами модели 71-623”. Пассажирский Транспорт (2018年3月28日). 2020年4月29日閲覧。
    13. ЕМУП «Трамвайно-троллейбусное управление» (2020年1月20日). 2020年4月29日閲覧。
    14. Roster 71-623-00”. Urban Electric Transit. 2020年4月29日閲覧。
    15. Электрооборудование для трамвая 71-623”. ЗАО “Канопус”. 2020年4月29日閲覧。
    16. УКВЗ отправил первые трамваи в Магнитогорск”. «Роскосмос» (2019年6月11日). 2020年4月29日閲覧。
    17. 71-623-02.01 Ust-Katav Carriage-Building Plant named after S. M. Kirov”. Urban Electric Transit. 2020年4月29日閲覧。
    18. 71-623-02.01 Ust-Katav Carriage-Building Plant named after S. M. Kirov”. Urban Electric Transit. 2020年4月29日閲覧。
    19. 71-623-03.01 Ust-Katav Carriage-Building Plant named after S. M. Kirov”. Urban Electric Transit. 2020年4月29日閲覧。
    20. В Волгограде началось пополнение трамвайного парка вагонами модели 71-623”. Пассажирский Транспорт (2018年3月28日). 2020年4月29日閲覧。
    21. Новый трамвайный вагон 71-623-04 в Краснодаре”. Общественный транспорт Кубани и Адыгеи. 2020年4月29日閲覧。
    22. Roster 71-623-01”. Urban Electric Transit. 2020年4月29日閲覧。
    23. 71-623-02 Ust-Katav Carriage-Building Plant named after S. M. Kirov”. Urban Electric Transit. 2020年4月29日閲覧。
    24. 71-623-03 Ust-Katav Carriage-Building Plant named after S. M. Kirov”. Urban Electric Transit. 2020年4月29日閲覧。
    25. Павел Яблоков (2021年10月12日). Красноярск и Пермь закупают новые трамваи, Уфа — забирает из Москвы”. TR.ru. 2021年10月13日閲覧。
    26. Павел Яблоков (2021年9月6日). От Калининграда до Сибири: три завода обновляют подвижной состав в трамвайных депо страны”. TR.ru. 2021年10月13日閲覧。
    27. 服部重敬 2019, p. 104.
    28. UKVZ to supply Krasnodar single-car LRVs”. International Railway Journal (2020年3月23日). 2020年4月29日閲覧。
    29. В пермском депо «Балатово» сгорел трамвай”. Продажа авто в Перми (2013年9月16日). 2020年4月29日閲覧。
    30. 服部重敬 2019, p. 102.
    31. Юлия Лунская (2015年12月28日). На улицы Самары выйдет новый низкопольный трамвай”. TR.ru. 2020年4月29日閲覧。
    32. UKVZ trams delivered to Novokuznetsk”. Metro Report International. RailwayGazette (2020年5月26日). 2020年6月13日閲覧。
    33. Павел Яблоков (2022年4月20日). Эконом-обновление: Краснодар получит трамвайные вагоны из Таганрога”. TR.ru. 2022年5月5日閲覧。
    34. Какой новый трамвай будет в Одессе: белорусский или украинский?”. Пассажирский Транспорт (2015年11月20日). 2020年4月29日閲覧。
    35. «Эталон» показал, как будет выглядеть трамвай, который планируют запустить в серийное производство”. Пассажирский Транспорт (2019年12月27日). 2020年4月29日閲覧。
    36. Арештовані будівлі ЛАЗу виставили на повторний аукціон”. ZAXID.NET (2015年5月21日). 2020年4月29日閲覧。

    参考資料

    • 服部重敬「定点撮影で振り返る路面電車からLRTへの道程 トラムいま・むかし 第10回 ロシア」『路面電車EX 2019 vol.14』、イカロス出版、2019年11月19日、96-105頁、ISBN 978-4802207621。
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