湯浅譲二

湯浅 譲二(ゆあさ じょうじ、1929年8月12日[1] - )は、日本現代音楽作曲家

湯浅 譲二
文化功労者顕彰に際して
公表された肖像写真
基本情報
生誕 (1929-08-12) 1929年8月12日(94歳)
出身地 日本の旗 日本福島県郡山市
学歴 慶應義塾大学医学部中退
ジャンル 現代音楽
職業 作曲家

経歴

1929年福島県郡山市にて開業医、寿泉堂病院(現:寿泉堂綜合病院)二代目院長湯浅大太郎(医学博士[2])の次男として生まれる。芸術愛好家だった父の影響で幼時より音楽に親しむ。郡山市金透尋常小学校の3年生頃からブラスバンドに入り、トランペットを担当した。

旧制福島県立安積中学校を卒業したのち上京し、慶應義塾大学医学部に進む。当時は外科医志望であり作曲は趣味として行うつもりだったが東京で日本の現代音楽の状況を知るうちに「このぐらいなら自分でもできる」と思うようになり1951年、「10年間は面倒みてやるから」との父親の合意のもとに医学部教養課程を中退して作曲の道に進む。詩人・瀧口修造を中心に集まった芸術家グループ・実験工房に加わり、武満徹らと共に活動し電子音楽や自作を含む現代音楽の演奏会の製作にかかわった[3]

一方で古典的な作曲理論を身につけておく必要も痛感し、大学教養課程での音楽の担当であった評論家・村田武雄の紹介で中田一次に短期間師事している。

1981年よりロジャー・レイノルズの招きでアメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校ブライアン・ファーニホゥらと共に作曲の教職に就いていた[1]UPICMUSIC-Nにも果敢に挑み、電子音楽に傑作を残した開祖的存在でもある。

カリフォルニア大学サンディエゴ校[4]教授、日本大学藝術学部客員教授、東京音楽大学客員教授、桐朋学園大学特任教授などを経て、現在、カリフォルニア大学サンディエゴ校名誉教授、国際現代音楽協会 (ISCM) 名誉会員。慶應義塾大学アート・センター訪問所員、郡山市名誉市民。

「秋吉台の夏」現代音楽セミナー&フェスティバルでは、全国の音楽大学から集った作曲学生に作曲思想を伝授して、2000年代にデビューした作曲家たちに大きな影響を与えた。

作曲の弟子には、藤枝守、田中聰、伊藤弘之、久田典子、伊左治直、植田彰、松本直祐樹、今井智景、中橋愛生、川上統、ジュリアン・ユーほかがいる。

創作理念

湯浅が自らの音楽を語る言葉として、次の文句が良く引き合いに出される。「私にとって音楽とは、音響エネルギー体の空間的・時間的推移である」。これはつまり音楽をその音響現象の中に見られるエネルギーの力学的運動として捉えることにより、その音楽の語り口(ナラティヴィティ)を見出そうというものである。このことによって湯浅はジャンルや様式、地域性などを超えたほとんどの音楽がこの言葉によって説明できるとしている。

もう一つ重要な言葉として、「コスモロジー」という言葉も湯浅は多用している。これは個々の人間が持つ個人性、その人の歩んできた歴史背景、学習・経験してきた事柄、さらに地域性、民族性、時代性などを包括する言葉である。これによって個々の作曲家には個性が反映され、作曲家独自のメッセージが生まれると湯浅は解説している。

題名に多用される「プロジェクション」という言葉は、サルトルの言葉「投企(プロジェprojet)」に基づくものである。

主要作品

管弦楽曲

  • とオーケストラのためのプロジェクション「花鳥風月」(1967)
  • クロノプラスティク I (1972)
  • オーケストラの時の時 (1976)
  • オーケストラのためのレクイエム (1980)
  • 組曲《芭蕉による情景》(1980-89)
  • オーケストラのための透視図法 (1983)
  • シベリウス讃 ─ミッドナイト・サン─ (1991)
  • 始源への眼差 II (1992)
  • レスポンソリウム~「和解のレクイエム」より (1995)
  • 交響組曲《奥の細道》(1995)
  • クロノプラスティクII[5] (1999)
  • クロノプラスティク III (2001)
  • 内触覚的宇宙 V (2002)
  • 始原への眼差しIII
  • 室内オーケストラのためのプロジェクション (2008)
  • 秋風の芭蕉 (2009)
  • オーケストラのための軌跡 (2017-2022)

協奏曲

  • ヴィオラとオーケストラのための「啓かれた時」(1986)
  • ピアノ・コンチェルティーノ (1994)
  • ヴァイオリン協奏曲《イン・メモリー・オブ武満徹》(1996)

室内楽

  • 7人の奏者のためのプロジェクション
  • 相即相入 (1963)
  • 弦楽四重奏のためのプロジェクション (1970)
  • 冬の日・芭蕉讃 (1981)
  • 天気予報所見 (1983)
  • インター・ポジ・プレイ・ション I
  • 相即相入 第2番(2人の打楽器奏者のための)
  • 内触覚的宇宙III -虚空-(二十絃箏と尺八のための)
  • 弦楽四重奏のためのプロジェクション II
  • 内触覚的宇宙IV(チェロとピアノのための)
  • 芭蕉の句による4つの心象風景 (vn,pf)
  • 始源への眼差 IV(2011,打楽器、ピアノ)

独奏曲(ピアノを除く)

  • 電子ギターのためのプロジェクション (1968)
  • 私ではなく風が… Not I, but the Wind... (1976) アルト・サクソフォン(増幅)のための
  • My Blue Sky, No.3 (1977) ヴァイオリン・ソロのための
  • ドメイン (1978) フルート・ソロのための
  • クラリネット・ソリテュード (1980)
  • 舞働II (1987) アルト・フルート(または能管)のための
  • 原風景 (1988) 笙のための
  • タームズ・オヴ・テンポラル・ディーテイリング (1989) バス・フルートのための
  • テナー・リコーダーのためのプロジェクション (1989)
  • 虚空:始源に向かって (1993) アコーディオンのための
  • ヴィオラ・ローカス (1995) ヴィオラ
  • 礼楽 Reigaku (1997) アルト・フルートのための
  • ハープのある時空 (1999) ハープとテープのための
  • イン・ア・レ・コン・パー・エックス (2003) トロンボーン
  • マリンバのための音楽 (2006)
  • ぶらぶらテューバ (2006)
  • ローカス・オン・コロンビズ・チャコーナ (2010) チェロ
  • ギター組曲「藍より青く」(2011)
  • ホルン・ローカス (2014) ホルン ※同一楽譜でオークターブ下げてチューバ・ローカスもある
  • ヴァイブ・ローカス (2015) ヴィブラフォン

ほか

ピアノ曲

  • 2つのパストラール (1952)
  • 内触覚的宇宙 (1957)
  • オン・ザ・キーボード (1972)
  • サブリミナル・ヘイ・J(ビートルズ の「ヘイ・ジュード」と、自分の名前・Jojiを掛け合わせたもの)
  • 内触覚的宇宙II・トランスフィギュレーション (1986)

ほか

吹奏楽

  • 行進曲・新潟
  • 冬の光のファンファーレ(長野オリンピック開会式のために作曲)
  • ファンファーレ「炬火点火」(ふくしま国体)

マンドリンオーケストラ

  • エレジイ・哀歌
  • サーカスヴァリエーションより

雅楽

  • ミュージック・フォー・コズミック・ライト(2011)

電子音楽、ミュジーク・コンクレート、コンピュータ音楽

  • 葵の上(1961/注:黛敏郎の同名のテープ音楽作品とは別)
  • プロジェクション・エセムプラスティク
  • ホワイトノイズによるイコン (1967)
  • スペース・プロジェクションのための音楽 (1970年大阪万博のせんい館のための音楽で、テープ音楽、15分15秒、<DENON C0C0-78450>)
  • ヴォイセス・カミング(電話の交換局フィラー 言語、政治演説から作られた会話の音声に基づくテープ音楽)(1969)
  • マイ・ブルースカイ第1番 (1975)
  • 「夜半日頭」に向かいて-世阿弥頌- (1984)
  • 白の研究(1987)
  • コンピューターと室内アンサンブルのための「世阿弥・九位」(1988)
  • UPIC のための「始原への眼差し 第一番」(1991)

ほか

バレエ、舞踊のための音楽

  • サーカス・ヴァリエーション(1954/2台ピアノ)
  • 花妖(1955/オーケストラ)
  • カルメン(1956/ジャズオーケストラによる)
  • 闘鶏 (1957/2cl,pf,perc)
  • 3つの世界(1959/オーケストラ)
  • 愛-銀の家(1960/ピアノ)
  • お椀(1963/ミュージック・コンクレート)
  • 白光 (1963)

合唱曲

  • アタランス
  • オノマトペによるプロジェクション
  • 問い(谷川俊太郎のオリジナルテキストによる)
  • 演奏詩 呼びかわし
  • 芭蕉の俳句によるプロジェクション
  • 無伴奏混声合唱のための「懐かしいアメリカの歌」
  • 男声合唱のための「世阿弥「九位」によるコンポジション」
  • 声のための「音楽(オトガク)」
  • 女声合唱組曲「ふるさと詠唱」(三谷晃一
  • Projection for Voice - as a sonic apparatus -
  • 男声合唱のための「芭蕉の俳句による四季」
  • 混声合唱曲「息」(谷川俊太郎)
  • 混声合唱曲「秋」(谷川俊太郎)
  • 混声合唱曲「風」(谷川俊太郎)

校歌・社歌・団体歌

童謡

  • はしれちょうとっきゅう(走れ超特急)
    新幹線を描いた童謡。山中恒作詞。ミュジーク・コンクレートに携わった経験を活かし、曲の合間に新幹線の走る轟音を挿入した。
  • ピコットさん
    妖精のようなキャラクター、ピコットさんをモチーフにした童謡。香山美子作詞。
  • インディアンがとおる
    山中恒作詞。(題名および歌詞の民族的表現が現代の基準と異なっているため、演奏されなくなった)

映画

テレビ

ラジオ

  • 『十円玉』(NHK)
  • ラジオ劇場『鳩』(NHK)
  • 『楢山節考』(TBS/1957・武智鉄二演出)
  • 『ラジオのための2SF』(TBS/1960・谷川俊太郎作)
  • 『ある降霊術の記憶』(ニッポン放送/1960・石原慎太郎作)
  • 『老いたる熊打ちの物語』(NHK/イタリア賞ドラマ部門参加)
  • 『星にきらめくナジャ』(NHK/1963)
  • 『ひるがえる旗の意味』(NHK/1965・谷川俊太郎台本)
  • 『箱』(NHK/1964・寺山修司台本)
  • 『コメット・イケヤ』(NHK/1966・寺山修司台本・イタリア賞)
  • 『おはようインディア』(NHK/1966・寺山修司台本)
  • 『まんだら』(NHK/1967・寺山修司台本・芸術祭大賞)
  • 『黙示録』(NHK/1969・寺山修司台本)
  • 『死者の奢り』(NHK/1968・大江健三郎作)


CM

  • キユーピーマヨネーズ「回る野菜/セロリ」篇「回る野菜/アスパラ」篇
  • ヤマハエレクトーン(1967)
  • ママレモン(1968)
  • 目薬ハッキリ(1971)
  • ポーラエクセル
  • ヱビスビールCM(ヱビスマーク編/1972/松本プロ)
  • 旭化成ベンベルグ裏地(1972/松本プロ)
  • 旭化成ベンベルグ裏地(ブティック編/松本プロ)
  • 出光石油
  • 日商岩井

フォークソング

ミュージカル

  • 降霊術

著作

  • 『現代の日本音楽 18 湯浅譲二』春秋社、2007年
  • 『人生の半ば - 音楽の開かれた地平へ』 慶應義塾大学出版会、1999年
  • 『未聴の宇宙、作曲の冒険』(西村朗と共著) 春秋社、2008年
  • 『脳科学と芸術』(共著) 工作舎、2008年、ISBN 978-4-87502-414-9
  • 『人間にとっての 音⇔ことば⇔文化』(川田順造と共著) 洪水企画/草場書房、2012年

受賞歴

参考文献

  • 秋山邦晴『日本の作曲家たち : 戦後から真の戦後的な未来へ 上』音楽之友社, 1978.4 NDL
  • 岩城宏之 ほか著『行動する作曲家たち : 岩城宏之対談集』新潮社, 1986.10 NDLデジタルコレクション
  • 河野保雄 編『湯浅譲二の世界』芸術現代社, 2004.12 ISBN 4-87463-167-3
  • 河野保雄『現代音楽を探せ : 河野保雄対談集』芸術現代社, 2005.11 ISBN 4-87463-174-6
  • 川崎弘二 編著『日本の電子音楽 増補改訂版』愛育社, 2009.3 ISBN 978-4-7500-0354-2

脚注

  1. 『日本の作曲家:近現代音楽人名事典』日外アソシエーツ、2008年、271-272頁。ISBN 978-4-8169-2119-3。
  2. 国立国会図書館. 博士論文『雑食動物に於ける実験的ヒヨレステリン病 (独文)』”. 2023年4月7日閲覧。
  3. 秋山邦晴『日本の作曲家たち : 戦後から真の戦後的な未来へ 上』音楽之友社、1978年4月、309頁https://id.ndl.go.jp/bib/027830400
  4. Joji Yuasa by Joji Yuasa”. www.jstor.org. www.jstor.org. 2021年12月6日閲覧。
  5. サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ No.23 委嘱作品
  6. 平成26年度 文化功労者”. 文部科学省 (2014年11月3日). 2019年10月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月3日閲覧。

外部リンク

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