あかつき (探査機)

あかつき(第24号科学衛星: 計画名「PLANET-C」または「VCO(Venus Climate Orbiter、金星気候衛星)」)は、宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)宇宙科学研究所(以下ISAS)の金星探査機。開発・製造はNEC東芝スペースシステムが担当した。観測波長の異なる複数のカメラを搭載して金星の大気を立体的に観測する。すいせい、のぞみに続くPLANETシリーズを冠した惑星探査機。

金星探査機
「あかつき (PLANET-C)」
相模原市立博物館に展示された模型
所属 宇宙科学研究所 (ISAS)
現・宇宙航空研究開発機構 (JAXA)
主製造業者 NEC東芝スペースシステム
公式ページ 金星探査機 あかつき
国際標識番号 2010-020D
カタログ番号 36576
状態 運用中
目的 金星気象の探査
観測対象 金星
設計寿命 打ち上げ後4.5年
打上げ場所 種子島宇宙センター
打上げ機 H-IIAロケット 17号機
打上げ日時 2010年5月21日
6時58分22秒 (JST)
軌道投入日 2010年12月7日(失敗)
2015年12月7日(成功)
物理的特長
本体寸法 1.04 × 1.45 × 1.4 m
質量 518 kg(打ち上げ時)
発生電力 約500W(ミッション終了時)
主な推進器 2液式500Nスラスタ
ヒドラジンスラスタ (23N x 8 , 3N x 4)
姿勢制御方式 3軸姿勢制御方式
(4スキュー型バイアスモーメンタム)
軌道要素
周回対象 金星
軌道 長楕円軌道
近点高度 (hp) 1,000 km - 10,000 km
遠点高度 (ha) 370,000 km
軌道傾斜角 (i) 3度
軌道周期 (P) 10.8日
搭載機器
IR1 近赤外カメラ1
IR2 近赤外カメラ2
LIR 中間赤外カメラ
UVI 紫外イメージャー
LAC 雷/大気光カメラ
USO 超安定発振器

概要

2010年5月21日に種子島宇宙センターから打ち上げられ、2010年12月7日に金星の周回軌道に入る予定であったが、周回軌道への投入マヌーバの最中にメインエンジン(セラミックスラスタ)が故障。結果、金星に近い軌道で太陽を周回しながら、宇宙をさまようしかなく、この時点では計画は失敗したと見なされていた[1]

しかしその後、メインエンジンのかわりに推力が5分の1しかない姿勢制御エンジンを使うことにした。このことで、6年後に金星に再接近する際に、金星の周回軌道に移ることが可能となった。当初計画とはまったく異なる新たなプランで、計画の完遂を狙った。

2015年12月7日に金星周回軌道への再投入が行われ[2]、12月9日に成功が確認された[3][4][5]

2016年4月4日、再度の軌道修正を行い、4月8日成功を確認した[6]。この軌道修正により観測期間が当初予定の800日から2000日に延びる事となった[6]

それ以後、金星を周回しながら、大量の写真を撮影した。2019年4月現在、5台のカメラのうち2台が故障したが残る3台が正常に作動している。これまでに送られた画像は、人類にとって未知のもので、金星の構造について多大な知見を与えた[7]。2020年4月には、当初からの大きな目的であるスーパーローテーションの謎を解明する論文がサイエンス誌に掲載されるに至った[8]

計画概要

スーパーローテーションと呼ばれる惑星規模の高速風など、従来の気象学では説明ができない金星の大気現象のメカニズムの解明を主目的としている。言ってみれば、あかつきは金星版気象衛星である。このミッションの成果は、惑星の気象現象を包括的に理解することにつながると期待される。加えて、赤外線により金星の地表面の物性や火山活動を調べ、また地球出発から金星到着までの間に惑星間の塵の分布(黄道光)を観測する。

当初の計画では金星到着後に高度300kmから8万km、公転周期約30時間の楕円軌道に投入される予定で、近金点前後を除く約20時間は金星のスーパーローテーションとほぼ同期しており、約2年間にわたって金星大気の挙動を継続的に観測する予定だった。

設計

基本システムは「はやぶさ」のものを踏襲し、衛星本体の重量は500kg程度である。モーメンタムホイール(MW)を使用した3軸制御にて姿勢を安定させる。MWは、はやぶさの3個より1個多い4個を搭載する。推力500Nの軌道投入用スラスター(OME, Orbit Maneuvering Engine)のノズル及び燃焼器には耐熱性に優れた窒化珪素(Si3N4)系モノリシックセラミックスを用いる[9]

高利得アンテナ(HGA, High-Gain Antenna:ラジアルライン給電スロットアレイアンテナ[10]32 kbps)、中利得アンテナ(MGA, Middle-Gain Antenna:ホーンアンテナ512 bit/s)、低利得アンテナ(LGA, Low-Gain Antenna:超広角レンズアンテナ、8 bit/s)を各2基(ただしHGAはそれぞれ送信専用と受信専用、MGAとLGAはどちらも送受信兼用)搭載し、主にHGAを用いて臼田宇宙空間観測所64 mパラボラアンテナと交信する。臼田の可視時間外に交信する必要が生じた場合、NASAディープスペースネットワークを利用することもある。

観測機器は、地表面からの赤外線放射や雲による太陽散乱光を捉える1μmカメラ(IR1)、雲の下の大気からの赤外線放射を捉えて低高度の雲や微量ガスの分布を探る2 µmカメラ(IR2)、雲からの赤外線放射を捉えてその構造を探る中間赤外カメラ(LIR)、雲による太陽散乱光を捉えて二酸化硫黄ガスなどの分布を探る紫外イメージャ(UVI)が搭載される。放電が起こっているか否かを把握するための雷・大気光カメラ(LAC)も搭載される。また、通信機器として超高安定発振器(USO)を搭載し、探査機から地球に向けて送信される電波が金星大気をかすめる際に電波の周波数と強度が影響を受けることを利用して大気の層構造を調べる電波掩蔽観測もする。

太陽電池パドルの取付軸は機体のZ軸(OMEノズルのある面と高利得アンテナのある面を結んだ軸)と直交し、パドルが常に太陽の方向を向くように回転できる。取付軸のある面には日光が当たらないため、探査機からの放熱に用いられる。この面の片方に中利得アンテナ、もう片方に観測装置がある。残りの2面に低利得アンテナがある[11]。惑星間航行中は基本的にパドルの軸を黄道面に垂直な方向に向け、姿勢変更の際は観測装置のセンサが太陽方向を向かないようにする。

開発

計画が提案された時点では、2007年2月から4月頃にM-Vロケットによって打ち上げられ、いったん地球周回軌道に乗ったのち6月に太陽周回軌道へ投入され、1年後の2008年6月に地球スイングバイを行って金星へ向かい、2009年9月に金星へ到着することになっていた[12]。しかし2010年の打ち上げとなり、更に新型固体ロケット開発に伴うM-Vロケットの運用中止に伴い、H-IIAロケット17号機による打ち上げに変更された。探査機本体とロケットとの結合部はM-Vロケットの直径に合わせて作られていたため、H-IIAロケット用のアダプタが新たに製作された。開発費用は146億円。

また、H-IIAロケットの打ち上げ能力からすると当機は軽量であり、ペイロード能力の余剰を有効利用するため、5つの小型副衛星(IKAROSUNITEC-1WASEDA-SAT2KSATNegai☆″)が相乗りで打ち上げられた。上記のアダプタ内に収納する形でIKAROSを、その外部にUNITEC-1とJ-POD(JAXA Picosatellite deployer)と呼ばれるケースに他の小型副衛星3機を格納した。

2009年10月に「あかつき」という正式名称が発表された[13]

運用

打上げから初期運用

H-IIAロケット17号機による「あかつき」の打ち上げ

あかつきとIKAROSを含む5機の小型副衛星を搭載したH-IIAロケット17号機は、2010年5月18日から6月3日までの間に打ち上げられることとされ、1回目の打ち上げ予定時刻は5月18日6時44分14秒(JST)だったが、射場付近に規定以上の氷結層を含む雲が観測され、5分前に打ち上げ中止となった[14]。3日後の21日6時58分22秒に延期された打ち上げは予定通りの時刻に行われた。

H-IIA17号機は地球周回軌道に乗った時点で第2段エンジンを一時停止して小型副衛星のうち3機(Negai☆″、WASEDA-SAT2、KSAT)を分離、その後第2段エンジンに再点火して太陽周回軌道に移り、打ち上げから約27分29秒後にあかつき[15]、次いで残り2機の小型副衛星(IKAROS、UNITEC-1)を分離した。打ち上げロケットの能力に余裕があったため、月や地球を利用してのスイングバイは行わずに、第2段ごとホーマン遷移軌道に近い軌道に入り、直接金星に向かった。

あかつきは6月28日、遠日点(約1.07天文単位)の近くでOME噴射を13秒間行い、セラミックスラスターの世界初の軌道上実証に成功した[16]。軌道制御のためのOME噴射は2回予定されていたが、打ち上げ時の軌道制御が予想以上に高精度だったためもう1回はキャンセルされた。

10月8日、LAC以外の4台のカメラでいて座の一部を撮影した。ほぼ事前に予測された通りの画像を取得し、各カメラが健全な状態であることを確認した。その後、おうし座や地球となどの撮影も行った。

周回軌道投入マヌーバ

12月6日午前7時50分に金星周回軌道投入マヌーバ(VOI-1)のための姿勢変更を実施し、OMEを進行方向正面に向けた[17]。その後の予定は以下の表のようになっていた。

「あかつき」の軌道投入計画(引用資料:[17]
予定していたイベント時間 (JST)金星最接近時刻
(12月7日09:00JST)
からの相対時間
軌道制御エンジン(OME)噴射開始12月7日 08時49分00秒11分前
地食開始、地上局との通信断12月7日 08時50分43秒約9分前
OME噴射終了12月7日 09時01分00秒1分後
地食終了、通信再開12月7日 09時12分03秒約12分後
日陰開始12月7日 09時36分37秒約37分後
日陰終了12月7日 10時40分44秒約1時間41分後
Z軸地球指向への姿勢変更12月7日 10時59分00秒約2時間後
中利得アンテナ(MGA)から高利得アンテナ(HGA)への切替12月7日 12時09分00秒約3時間後
金星周回軌道決定 今後の軌道修正計画作成12月7日 21時頃約12時間後

OMEを予定通り12分間噴射した場合、あかつきは約4日で金星を周回する長楕円軌道に投入される。4日後の金星再接近時に軌道修正を行って公転周期約2日の軌道に、更に2日後の軌道修正で公転周期約30時間の観測軌道に入る予定だった。また、OMEを少なくとも9分20秒噴射できれば、約50日で金星を周回する超長楕円軌道に入れる可能性があった。

12月7日午前8時52分36秒、あかつきが同日午前8時49分に逆噴射によって減速を開始したことが探査機からのドップラーデータより確認された[18]。あかつきまでの通信ラグは約3分半である。同日午前8時50分にあかつきは地球から見て金星の向こう側に隠れ、予定通り地球との通信が途絶えた。同日9時12分に通信再開予定だったが、探査機からの電波を受信したのは10時28分で、予定されていたMGAではなくLGAによるものであった[19]。同日午後、太陽電池パドルと片方のLGAを太陽に、もう片方のLGAをその反対方向に向けたまま低速で回転する「セーフホールドモード」になっていることが判明した。これは機体に重大なトラブルが発生した場合、電源確保とそのための姿勢の維持を最優先するモードである。翌12月8日までに3軸制御モードへの復帰とテレメトリの取得を行った。テレメトリによると、あかつきはOME噴射開始から約2分30秒後、横方向に異常な力が加わって姿勢が大きく乱れ、直後に噴射を中止してセーフホールドモードに移行していた。減速が不十分だったことにより、金星周回軌道への投入はできなかった[20]

12月27日に、トラブルの原因は加圧用のヘリウムタンクから燃料タンクへの配管に設置された逆止弁(逆流防止用の弁)が閉塞したためと発表された[21][22][23]。通常の燃焼では酸化剤に対して燃料を多めに混合することで意図的に燃焼温度を下げ、セラミックスラスタの耐熱温度を超えない様にしている[注 1]。しかし、逆止弁が閉塞したことから燃料タンクの圧力が低下してスラスタへの燃料供給が滞り、酸化剤と燃料の混合比がより効率的な燃焼を促すものとなった。これにより異常燃焼が生じて機体に想定外の回転モーメントがかかると共に想定外の高温でスラスタの一部が破損した[注 2]可能性がある。

2011年6月、JAXAは地上試験の結果、逆止弁閉塞の原因は燃料(ヒドラジン)と酸化剤(四酸化二窒素)が反応して生じた硝酸アンモニウム結晶である可能性が高いと発表した。酸化剤側逆止弁のシールに用いられていた樹脂材料が四酸化二窒素を透過する性質を持っていたために、酸化剤が徐々に燃料側逆止弁に向って拡散、燃料と反応して生じた結晶が弁を詰まらせたと推定された。また、異常燃焼によるセラミックスラスタの破損も再現され、再度スラスタを点火すれば損傷がさらに拡大するであろうことも確認された[24]

軌道修正制御

2017年6月5日時点の探査機あかつきの軌道(黄色)

あかつきは結果的に金星でパワードスイングバイを行う形となり、公転周期224.7日の金星よりやや内側を203日で公転する、近日点約9000万km、遠日点約1億1000万kmの軌道に移った[25]。太陽の周りをあかつきが約11周する間に金星は約10周して「周回遅れ」になるため、2016年12月と2017年1月に両者は再び接近する[26][27]。2010年12月8日の宇宙開発委員会で、JAXAはこの時に金星周回軌道への再投入を行う可能性を追求すると報告した[28]

12月9日、あかつきは3台のカメラ(LIR, UVI, IR1)を起動し、約60万kmの距離から金星を撮影した[29]

2011年1月、JAXAがあかつきについて「軌道を微修正して、金星と再会合する前に金星付近の小惑星を観測する[30]」あるいは「減速し(公転周期がより長くなるように軌道を修正し)、金星が後ろから追いついてくるのを待つことで、再会合までの期間を1年短縮する[31]」などを検討しているとの報道がなされた。ただしその時点では、これらについてJAXAからの公式発表は無かった。2011年初頭の軌道のままだと2016年から2017年にかけて金星に再接近するが、その距離はVOI-1の時より遥かに大きいため、いずれにせよ軌道修正は必要である。

2011年3月、科学データ取得と観測機器の健全性確認を兼ねて4台のカメラ(LIR, UVI, IR1, IR2)を用いて1000万km以上の距離から金星を複数回撮影しカメラの健全性を確認した。また、4月17日の第1回近日点通過では、衛星表面および表面に取り付けた機器などの温度が上昇し、許容温度上限に迫る可能性[注 3]や断熱材の劣化等が想定された。このため近日点付近では、熱入力による機器への影響を最小にするため姿勢変更等の運用を行った[32]

2011年6月30日の宇宙開発委員会でJAXAは、逆止弁を閉塞させる原因や、第2回(2011年11月)または3回(2012年6月)の近日点通過周辺で、OMEまたは姿勢制御スラスタを使い軌道調整を実施し遠日点高度を下げ周期を短くし、2015年11月に金星に再会合させる計画を報告した[33]

2011年9月7日午前11時50分(日本時間)に、再び軌道投入用スラスター(OME, Orbit Maneuvering Engine)が使えるかどうか、またOME使用時の姿勢の乱れ量等を調べることを目的とした第1回OMEテスト噴射(噴射時間2秒)を実施した。9月9日JAXAは第1回OMEテストの結果、OMEの推力が想定の約1/9であったことを発表した。この結果を受け、9月14日の第2回OMEテスト噴射(同5秒)はOMEの噴射状況の再確認することを目的として実施した。9月15日JAXAは第2回OMEテストの結果、OMEの推力が第1回OMEテストの結果と同程度であったことを発表した。これにより当初計画された金星周回軌道への投入が困難であることが確認された。ただしOMEの代わりに姿勢制御用エンジン(RCS, Reaction Control System)を使う場合でも、軌道投入時期は同じ2015年11月とする計画が立てられた[34]

2011年9月30日にJAXAは、OME燃焼器の今後の使用は断念し、今後は姿勢制御用エンジン(RCS)による軌道制御を行い、RCS運用のため、酸化剤を全投棄すると報告した[35]

2011年10月26日にJAXAは、宇宙開発委員会に対し「あかつき」の現状と金星再会合に向けた軌道制御運用について報告を行った。これによればOME用の酸化剤投棄を2011年10月6日に6分、12日と13日にそれぞれ9分行い計画通り成功したことが明らかになった。また、姿勢制御エンジンRCSを使った運用計画も報告され、2011年11月1日にΔ90m/s、10日にΔ90m/s、21日に過去2回の補正を含めΔ70m/sの軌道制御を実施することが明らかになった。2011年11月1日に1回目の軌道制御実施結果の会見が行われ、これによれば姿勢制御エンジンRCS噴射時間は9分48秒、テレメトリデータ解析後に次回計画詳細を決定するとの報告がなされた。2011年11月10日に2回目の軌道制御に関する発表がJAXAより行われ、13時37分から544秒間(9分4秒)実施したとの報告がなされた。同時に1回目の軌道制御の実施時間は587.5秒(9分47.5秒)であったことを明らかにした。2011年11月21日に3回目の軌道制御に関する発表がJAXAより行われ、13時57分から342秒間(5分42秒)実施したとの報告がなされた。

2012年1月31日に宇宙開発委員会調査部会は、「あかつき」の金星周回軌道への投入失敗に係る原因究明及び今後の対策についての調査審議の報告を宇宙開発委員会に行った [36]。 同日、JAXAはこれまでの調整をまとめた上で今後の運用方針について宇宙開発委員会に報告を行った。上の調整の結果、2015年に金星に再会合できる軌道を飛行中であり、金星周回軌道再投入を含めて、今後全く補加圧できない場合でもRCS運用が可能な状態となっている。探査機寿命を勘案しつつ、2015年以降の金星周回軌道再投入を検討しており、それに向けて各種調整や試験の継続が引き続き行われた[37]

2015年8月5日、JAXAは7月17日、24日、31日の3回、計7分半姿勢制御用の姿勢制御用エンジンを噴射し、再投入を11月から12月に変更する軌道修正を行い[38][39]、8月2日までの観測により目的の軌道修正が成功したと発表した[40]

2015年8月31日、JAXAは「あかつき」が、太陽に最も近づく近日点を通過したことを明らかにした[41]。JAXAは1ヵ月程度かけて機体が無事か確認を行った[41]

金星周回軌道再投入

JAXAは2015年12月7日8時51分から「あかつき」の金星周回軌道投入のため、姿勢制御用エンジン(RCS)噴射を計画通り約20分実施し、所要の噴射時間が得られたことが確認され[42]、12月9日に金星周回軌道に投入されたことが確認された[3][4][5]

2016年4月4日、再度の軌道修正を行い、4月8日成功を確認した[6]。この軌道修正により観測期間が当初予定の800日から2000日に延びる事となった[6]

2016年12月9日、搭載された5つのカメラのうち1μmカメラ(IR1)と2μmカメラ(IR2)の2つにて電流値が不安定になる不具合が発生し、翌日にはスイッチが入らなくなった。原因は機器劣化の可能性が高いと考えられている[43]。2017年3月3日、JAXAはこれらのカメラによる科学観測を休止し、復旧に向けて地上検討と定期的に両カメラのスイッチを入れるコマンドの送信を行うことを発表した[43]。なおIR1・IR2以外の3つのカメラ(中間赤外カメラ、紫外イメージャ、雷・大気光カメラ)は正常に観測を継続している[43]。 2018年4月に、定常運用を終了し、延長運用に入った[44]。2021年時点で、観測を続けている[45]

広報

2009年10月の正式名称発表と同時に、公募した名前やメッセージを金星へ送るというキャンペーン「お届けします! あなたのメッセージ 暁の金星へ」[46]が開始された。携帯やパソコンのメールからサイトにメッセージを送信すると、『金星探査機「あかつき」記念乗車証』と書かれた画像が、添付ファイルで返送されてくる(画像には金星に到着するあかつきのイラストの下部に自分の応募したメッセージが入っている)。この種のキャンペーンは日本の宇宙探査機ではのぞみから行われているが、あかつきでは著名人や団体からのメッセージについては直筆の文章やイラストを搭載できるようにするなど、量より質を重視した[47][48]。2010年1月の締め切りまでに日本国内外から26万214人の応募があり、そのうち14万8204人は学校やプラネタリウムなど団体単位での応募だった[49]。中でもVOCALOID初音ミク」のイラストを宇宙に送ろうというファン有志による運動では1万3849人ものメッセージが集まった[47][49]。メッセージは機体重心調節用のバランスウェイトを兼ねている 12cm × 8cm × 0.2mm のアルミプレート約90枚に縮小印刷され、ベーキング処理を施して探査機の3箇所に取り付けられた[47][49][50]

あかつきミッションのマスコットキャラクターとして「あかつきくん」と「きんせいちゃん」がおり、公式サイトや関連グッズなどで描かれている[51][52]。あかつきくんは公式Twitterにも登場し、ミッションの経過や搭載機器について説明したり、はやぶさ兄さん(2010年6月13日まで)やイカロス君みちびきさんたちと会話したりしている[53]

脚注

注釈

  1. もっとも効率的な燃料と酸化剤の比を1:1(完全燃焼)とすると、あかつきでは1:0.8としている。
  2. 従来の金属製スラスタに対してセラミックスラスタは数百度高い 1500 °C まで耐えられるが、完全燃焼時の温度は 2000 °C に達する[9]
  3. 金星周回軌道上(当初予定)では、2649 W/m2(設計時に想定した最大熱入力は 2800 W/m2)。金星投入に失敗し、太陽周回軌道に入ったが、その軌道上で想定される最大熱入力は 3655 W/m2 で、金星周回軌道上の熱入力に対し、約 1000 W/m2 大きい。

出典

  1. 「あかつき」の金星周回軌道投入失敗の状況について”. JAXA (2010年12月17日). 2020年8月29日閲覧。
  2. “あかつき 金星周回軌道へ噴射成功 5年ぶり再挑戦”. 毎日新聞. (2015年12月7日). https://mainichi.jp/articles/20151207/k00/00e/040/116000c 2015年12月7日閲覧。
  3. 金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入結果について』(プレスリリース)JAXA、2015年12月9日https://www.jaxa.jp/press/2015/12/20151209_akatsuki_j.html2015年12月9日閲覧
  4. 金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入結果に関する記者説明会』(プレスリリース)JAXA、2015年12月9日https://fanfun.jaxa.jp/jaxatv/detail/6415.html2015年12月9日閲覧
  5. “あかつき 金星軌道投入に成功 JAXA発表”. NHK NewsWeb. (2015年12月9日). オリジナルの2015年12月9日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20151209124659/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151209/k10010335321000.html 2015年12月9日閲覧。
  6. “「あかつき」軌道修正”. 読売新聞. (2016年4月9日). https://web.archive.org/web/20160419235207/http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20160409-OYS1T50006.html 2016年4月10日閲覧。
  7. NHK 逆転人生「金星探査機あかつき 執念のカムバック」 2019年4月15日放送 サイト
  8. 金星探査機「あかつき」観測成果論文のScience誌掲載について - JAXA』(プレスリリース)JAXA、2020年4月24日https://www.jaxa.jp/press/2020/04/20200424-1_j.html2020年4月25日閲覧
  9. 松尾哲也、森島克成、井上涼平、野中吉紀「金星探査機(PLANET-C)向け500Nセラミックスラスタの開発」(PDF)『三菱重工技報』第45巻第4号、三菱重工業、2008年、2015年8月12日閲覧
  10. 松浦晋也 (2010年10月13日). 第2話 平面アンテナが金星と地球を結ぶ”. 太陽系大航海時代の幕明け > 届け、あかつきの星へ. NEC. 2015年12月7日閲覧。
  11. 太陽系大航海時代の幕明け > 届け、あかつきの星へ 第1話「はやぶさ」を継ぎし「あかつき」へ”. NEC. 2010年11月22日閲覧。
  12. 金星探査計画ワーキンググループ (2001年1月). 金星探査計画提案書”. 宇宙理学委員会. 2016年3月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年3月23日閲覧。
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  14. H-IIAロケット17号機による金星探査機「あかつき」(PLANET-C)の打上げ延期について』(プレスリリース)JAXAhttps://www.jaxa.jp/press/2010/05/20100518_h2af17_j.html2010年5月18日閲覧
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  18. 金星探査機「あかつき」の軌道制御エンジン(OME)噴射開始及び金星による掩蔽に伴う通信中断について (PDF). JAXA. 2010年12月7日閲覧。
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  20. 金星探査機「あかつき」の金星周回観測軌道投入(VOI-1)の結果について」『プレスリリース』、宇宙航空研究開発機構、2010年12月8日https://www.jaxa.jp/press/2010/12/20101208_akatsuki_j.html2010年12月8日閲覧
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関連項目

外部リンク

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