パプリカ

パプリカ: paprika)はナス科多年草であるトウガラシ属トウガラシ栽培品種の一つである。またはその品種を原料とする香辛料の名称でもある。日本では肉厚で辛みがなく甘い Capsicum annuum 'grossum' の品種を呼ぶ。日本で流通する果実の多くは赤色や黄色、橙色であるが、紫色、茶色などの品種もある。また着色料(パプリカ色素)としても使われる。

パプリカ
さまざまな色のパプリカ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ナス目 Solanales
: ナス科 Solanaceae
: トウガラシ属 Capsicum
: トウガラシ C. annuum
栽培品種 : パプリカ C. annuum 'grossum'
学名
Capsicum annuum L. 'grossum'
和名
パプリカ
英名
bell pepper

名称

パプリカは、コロンブスによってヨーロッパへ持ち帰られた。

この果実から作られる香辛料は「パプリカ」(paprika) と呼ばれる。これは、唐辛子全般を指すクロアチア語由来のハンガリー語が転用された呼び名である。日本では品種も果実も香辛料も全てパプリカと呼ばれている。

イタリアにはパレルモとよばれる大型のトウガラシのような姿のパプリカがある。名はシチリア島北西部の都市パレルモにちなむ。長さは約20センチメートルと細長く、牛の角のようにとがった形をしている[1]。赤色に熟して、肉厚で甘みがある[1]

特徴

熱帯アメリカ原産のトウガラシのなかまで[2]唐辛子の主な辛み成分のカプサイシン劣性遺伝子のため、ピーマンシシトウガラシと同じく果実に辛みをもたないトウガラシの栽培品種である。パプリカは肉厚で部屋数が3–4室に分かれた綺麗なベル形を形成する品種である。パプリカの果実はやや大型で肉厚となり、辛みがない、もしくはほとんどない。果実の色は、赤色、オレンジ色、黄色が主流だが、白色、黒色、紫色もある[3][4]

果皮はやや硬いが、果肉は豊富な果汁を含み肉厚で糖度が高い。果実は加熱調理するほか生でも食べられる。栄養素の構成もピーマンに似るが、ビタミン様物質の一種であるビタミンPを含んでいる。ビタミンPはビタミンCを壊れにくくし、またその抗酸化作用の性質を高める効果をもつため、加熱調理してもビタミンCが失われにくい。

栄養価

パプリカ(Peppers, sweet, red, raw)
100 gあたりの栄養価
エネルギー 129 kJ (31 kcal)
6.03 g
糖類 4.2 g
食物繊維 2.1 g
0.3 g
飽和脂肪酸 0.027 g
一価不飽和 0.003 g
多価不飽和 0.07 g
0.99 g
トリプトファン 0.012 g
トレオニン 0.04 g
イソロイシン 0.021 g
ロイシン 0.036 g
リシン 0.036 g
メチオニン 0.006 g
シスチン 0.019 g
フェニルアラニン 0.05 g
チロシン 0.009 g
バリン 0.031 g
アルギニン 0.036 g
ヒスチジン 0.017 g
アラニン 0.026 g
アスパラギン酸 0.284 g
グルタミン酸 0.211 g
グリシン 0.028 g
プロリン 0.024 g
セリン 0.05 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(20%)
157 µg
(15%)
1624 µg
51 µg
チアミン (B1)
(5%)
0.054 mg
リボフラビン (B2)
(7%)
0.085 mg
ナイアシン (B3)
(7%)
0.979 mg
パントテン酸 (B5)
(6%)
0.317 mg
ビタミンB6
(22%)
0.291 mg
葉酸 (B9)
(12%)
46 µg
ビタミンB12
(0%)
0 µg
コリン
(1%)
5.6 mg
ビタミンC
(154%)
127.7 mg
ビタミンD
(0%)
0 IU
ビタミンE
(11%)
1.58 mg
ビタミンK
(5%)
4.9 µg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
4 mg
カリウム
(4%)
211 mg
カルシウム
(1%)
7 mg
マグネシウム
(3%)
12 mg
リン
(4%)
26 mg
鉄分
(3%)
0.43 mg
亜鉛
(3%)
0.25 mg
(1%)
0.017 mg
マンガン
(5%)
0.112 mg
セレン
(0%)
0.1 µg
他の成分
水分 92.21 g
クリプトキサンチン 490 µg
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

実際の栄養価は、栽培条件、生育環境、収穫時期、品種で異なるため記載されている値は代表値である。

ビタミンCビタミンE食物繊維が多く含まれており、緑色のピーマンに比べてビタミンCを約2倍、β-カロテンは約3倍含む[3]。赤色パプリカの色素成分カプサンチンは強い抗酸化作用があり、活性酸素の害から身体を守るといわれている[2]。成分名が類似のカプサイシンは同じ仲間のトウガラシ類に含まれる辛味成分で、カプサンチンとは別種の成分である[2]

栽培

緑色の未熟果を収穫するピーマンに比べて、パプリカは果実を完熟するまで育ててから収穫する[5]。果実は大型であることから、ピーマンのように次々と成らせると株に負担がかかってしまうので、剪定摘果を行って育てていく[5]。最初に出た主枝を摘芯して4本の側枝を伸ばす4本仕立てにするのが最も適し、側枝の1節目に着果させて、その実より先につく果実は摘果する[5]。1本の枝には3 - 4個、1株に12 - 16個の果実をつけさせ、地上1メートルほどに伸びた側枝は支柱を張って固定する[5]

利用・生産

パプリカの品種をつくり育てたのはハンガリーで、現在も一大産地として知られる。ハンガリー料理にパプリカは欠かせない存在で、シチュー料理グヤーシュをはじめ、数多くの料理に用いられ、かつては国をあげてパプリカを生産保護していた程であった。アメリカでの主な産地はカリフォルニア州テキサス州。その他の主な生産国として、ブルガリアスペインなどがある[6]日本国内でも、2006年以降には熊本県、2010年以降には茨城県広島県宮城県山形県山梨県北海道などで生産されている[7]

日本の主要な輸入元は韓国オランダニュージーランドなど[8]。日本ではかつてはオランダからのパプリカの輸入が多かったが、「2010年から日本市場の過半を占めている」というように、近年はオランダの種子と施設を導入した韓国産が増えている[9]

スペインではほぼ全域でパプリカが使われるが、ソーセージに肉と一緒に混ぜる用途が多い(チョリソ[10]。他にはそのまま一切加熱せずに別の食材とあわせることもあれば、スープや煮込みの具として使ったり、乾燥させて粉末状にしたパプリカパウダーや、ペースト状にしたものを利用する場合もある。パプリカの種類は、辛口のピカンテ (picante) と、辛くなくむしろ甘みのあるドゥルセ (dulce) に大別される。

香辛料

香辛料としてのパプリカは、果肉を粉末状にしたものであり辛味のあるものもある。日本で野菜として流通しているパプリカとは別品種で日本では辛味のないタイプが一般的[11]。唐辛子にも似た独特の風味を持つが、味や風味が穏やかなため、大量に投入しても料理の味を損なわないと言われる。鮮やかな赤色で、黒く焦がさない限りは調理しても赤みを保つため、料理を彩る色彩としても用いられる。

燻煙してからパウダー状にしたスモークパプリカもある[12]。スペインのLa Veraで作られるピメントン デ ラ ベラは、保護原産地呼称で保護されている[13]

脚注

  1. 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 97.
  2. 主婦の友社編 2011, p. 16.
  3. 主婦の友社編 2011, p. 17.
  4. 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 91.
  5. 主婦の友社編 2011, p. 21.
  6. 日仏料理学会 編「パプリカ」『フランス食の事典』(2007年)白水社。
  7. 筑波大学大学院 生命環境科学研究科 林俊秀「国産パプリカ生産の現状と課題-既存型産地と新規参入大型経営体-」『フードシステム研究』第20巻、第3号、日本フードシステム学会、321-326頁、2013年12月31日。doi:10.5874/jfsr.20.193ISSN 1884-5118国立国会図書館書誌ID:025194845全国書誌番号:00100086
  8. パプリカ生産における国内・外の生産・流通の変化。2017年8月14日閲覧。
  9. 韓国のパプリカの生産および輸出状況-海外情報−2015年11月 2016-04-18閲覧
  10. 以下、本段落は特記ない限り『料理通信』2017年9月号、pp.44-47. による。
  11. S&B エスビー食品株式会社 2016-04-18閲覧
  12. グルメ:この味はクセになる! プロに聞くスパイスの基本と辛旨レシピ(GetNavi web)”. 毎日新聞. 2023年12月29日閲覧。
  13. 指定の公示について(指定番号第112号):農林水産省”. www.maff.go.jp. 2023年12月29日閲覧。

参考文献

  • 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日、90 - 91頁。ISBN 978-4-415-30997-2。
  • 主婦の友社編『野菜まるごと大図鑑』主婦の友社、2011年2月20日、16 - 23頁。ISBN 978-4-07-273608-1。

関連項目

  • ハンガリー料理 - パプリカを使った料理が多い。
  • トマピー - パプリカの品種名、登録商標名で、トマトのように扁平形をしているのが特徴。
  • 8月2日 - 北海道釧路市の「地産地消くしろネットワーク」(事務局・釧路市産業推進室)が「パプリカの日」として制定。釧路産パプリカの消費拡大をアピールしている[1]

外部リンク

  1. 釧路産パプリカもっと食べて 北海道新聞どうしん電子版 2022年8月1日掲載 2022年8月2日閲覧
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