1970年イギリスグランプリ

1970年イギリスグランプリ (1970 British Grand Prix) は、1970年のF1世界選手権第7戦として、1970年7月18日にブランズ・ハッチで開催された。

イギリス 1970年イギリスグランプリ
レース詳細
1970年F1世界選手権全13戦の第7戦
ブランズ・ハッチ (1960-1975)
日程 1970年7月18日
正式名称 XXIII RAC British Grand Prix
開催地 ブランズ・ハッチ
イギリスの旗 イギリス(イングランドの旗 イングランド) ケント州
コース 恒久的レース施設
コース長 4.265 km (2.650 mi)
レース距離 80周 341.200 km (212.012 mi)
決勝日天候 曇(ドライ)[1]
ポールポジション
ドライバー ロータス-フォード
タイム 1:24.8
ファステストラップ
ドライバー オーストラリア ジャック・ブラバム ブラバム-フォード
タイム 1:25.9 (70[2]周目)
決勝順位
優勝 ロータス-フォード
2位 ブラバム-フォード
3位 マクラーレン-フォード

レースは80周で行われ、ロータスのヨッヘン・リントがポール・トゥ・ウィンで優勝した。ブラバムのジャック・ブラバムが2位、マクラーレンのデニス・ハルムが3位となった。また、後にドライバーズチャンピオンとなるエマーソン・フィッティパルディのF1デビュー戦であり、ダン・ガーニーのF1最後のレースでもあった。

背景

ダンロップはこの週末、本年をもってF1用タイヤの供給から撤退することを発表した[3]。1965年にグッドイヤーが参入したことによりダンロップの独占供給体制が崩れ、さらに1966年にファイアストンも参入してタイヤ競争が激化していった中[4]、この年もBRM(ペドロ・ロドリゲス)とティレル/マーチ(ジャッキー・スチュワート)によって2勝を挙げていた[5]。

エントリー

サーティース初のF1マシンTS7

本レースは25台が参加した[6]。ジョン・サーティースはこの年から自身のチーム「サーティース」でF1参戦を開始し、自製マシンの完成までの間はマクラーレン・M7Cを走らせていた。サーティース自ら設計及び制作に携わった初の自製F1マシンTS7が完成し、本レースからTS7を走らせる[7]。ウィリアムズは、オランダGPで事故死したピアス・カレッジに代わってブライアン・レッドマンを起用し、活動を再開した。フェラーリはクレイ・レガツォーニが2台目の312Bを走らせる。STPのマリオ・アンドレッティが復帰した。ロータスは3人目のドライバーとしてブラジルの新鋭エマーソン・フィッティパルディを起用し、49Cを走らせる[6]。マクラーレンはフォード・コスワース・DFVエンジンの不足[注 1]により、地元出身のピーター・ゲシンは欠場せざるを得なかった[8]。

エントリーリスト

チーム No. ドライバー コンストラクター シャシー エンジン タイヤ
イギリスの旗 ティレル・レーシング・オーガニゼーション 1 イギリスの旗 ジャッキー・スチュワート マーチ 701 フォード・コスワース DFV 3.0L V8 D
2 フランスの旗 フランソワ・セベール
イタリアの旗 スクーデリア・フェラーリ SpA SEFAC 3 ベルギーの旗 ジャッキー・イクス フェラーリ 312B フェラーリ 001 3.0L F12 F
4 スイスの旗 クレイ・レガツォーニ
イギリスの旗 ゴールドリーフ・チーム・ロータス 5 オーストリアの旗 ヨッヘン・リント ロータス 72C フォード・コスワース DFV 3.0L V8 F
6 イギリスの旗 ジョン・マイルズ 72B
28 ブラジルの旗 エマーソン・フィッティパルディ 49C
フランスの旗 エキップ・マトラ・エルフ 7 フランスの旗 アンリ・ペスカロロ マトラ MS120 マトラ MS12 3.0L V12 G
8 フランスの旗 ジャン=ピエール・ベルトワーズ
イギリスの旗 ブルース・マクラーレン・モーターレーシング 9 ニュージーランドの旗 デニス・ハルム マクラーレン M14D フォード・コスワース DFV 3.0L V8 G
10 アメリカ合衆国の旗 ダン・ガーニー M14A
11 イタリアの旗 アンドレア・デ・アダミッチ M7D アルファロメオ T33 3.0L V8
12 イギリスの旗 ピーター・ゲシン 1 M7A フォード・コスワース DFV 3.0L V8
イギリスの旗 ブルックボンド・オクソ・レーシング/ロブ・ウォーカー 14 イギリスの旗 グラハム・ヒル ロータス 49C フォード・コスワース DFV 3.0L V8 F
イギリスの旗 マーチ・エンジニアリング 15 スイスの旗 ジョー・シフェール マーチ 701 フォード・コスワース DFV 3.0L V8 F
16 ニュージーランドの旗 クリス・エイモン
イギリスの旗 モーターレーシング・ディベロップメンツ・リミテッド 17 オーストラリアの旗 ジャック・ブラバム ブラバム BT33 フォード・コスワース DFV 3.0L V8 G
19 オーストラリアの旗 ティム・シェンケン 1
イギリスの旗 アウト・モトール・ウント・シュポルト 18 西ドイツの旗 ロルフ・シュトメレン
イギリスの旗 チーム・サーティース 20 イギリスの旗 ジョン・サーティース サーティース TS7 フォード・コスワース DFV 3.0L V8 F
21 イギリスの旗 トレバー・テイラー 1 マクラーレン M7C[2]
イギリスの旗 ヤードレー・チーム・BRM 22 メキシコの旗 ペドロ・ロドリゲス BRM P153 BRM P142 3.0L V12 D
23 イギリスの旗 ジャッキー・オリバー
24 カナダの旗 ジョージ・イートン
イギリスの旗 フランク・ウィリアムズ・レーシングカーズ 25 イギリスの旗 ブライアン・レッドマン デ・トマソ 505 フォード・コスワース DFV 3.0L V8 D
アメリカ合衆国の旗 STPコーポレーション 26 アメリカ合衆国の旗 マリオ・アンドレッティ マーチ 701 フォード・コスワース DFV 3.0L V8 F
イギリスの旗 コーリン・クラッベ・レーシング 27 スウェーデンの旗 ロニー・ピーターソン マーチ 701 フォード・コスワース DFV 3.0L V8 G
アメリカ合衆国の旗 ピート・ラブリー・フォルクスワーゲン・インク 29 アメリカ合衆国の旗 ピート・ラブリー ロータス 49B フォード・コスワース DFV 3.0L V8 F
スイスの旗 エキュリー・ボニエ 30 スウェーデンの旗 ヨアキム・ボニエ 1 マクラーレン M7C フォード・コスワース DFV 3.0L V8 G
スイスの旗 シルビオ・モーザー・レーシングチーム 31 スイスの旗 シルビオ・モーザー 2 ベラシ F1 70 フォード・コスワース DFV 3.0L V8 G
ソース:[9]
追記
  • ^1 - マシンが準備できず欠場[10]
  • ^2 - モーザーはスターティングマネーに不満を持ち欠場[10]

予選

ヨッヘン・リントがポールポジションを獲得し、ジャック・ブラバムとジャッキー・イクスとともにフロントローに並んだ[注 2]。ジャッキー・オリバーとデニス・ハルムが2列目、クレイ・レガツォーニ、ジョン・マイルズ、ジャッキー・スチュワートが3列目に並ぶ。ロルフ・シュトメレンはアクシデントによりマシンが大破し、以後のセッションの参加を見合わせた。ブライアン・レッドマンも後輪のハブが故障し[6]、トランスミッションの部品に不具合があると判明したため、決勝への出走を断念した[3]。

予選結果

順位 No. ドライバー コンストラクター タイム 差 グリッド
1 5 オーストリアの旗 ヨッヘン・リント ロータス-フォード 1:24.8 - 1
2 17 オーストラリアの旗 ジャック・ブラバム ブラバム-フォード 1:24.8 0.0 2
3 3 ベルギーの旗 ジャッキー・イクス フェラーリ 1:25.1 +0.3 3
4 23 イギリスの旗 ジャッキー・オリバー BRM 1:25.6 +0.8 4
5 9 ニュージーランドの旗 デニス・ハルム マクラーレン-フォード 1:25.6 +0.8 5
6 4 スイスの旗 クレイ・レガツォーニ フェラーリ 1:25.8 +1.0 6
7 6 イギリスの旗 ジョン・マイルズ ロータス-フォード 1:25.9 +1.1 7
8 1 イギリスの旗 ジャッキー・スチュワート マーチ-フォード 1:26.0 +1.2 8
9 26 アメリカ合衆国の旗 マリオ・アンドレッティ マーチ-フォード 1:26.2 +1.4 9
10 18 西ドイツの旗 ロルフ・シュトメレン ブラバム-フォード 1:26.3 +1.5 DNS 1
11 7 フランスの旗 ジャン=ピエール・ベルトワーズ マトラ 1:26.5 +1.7 10
12 32 アメリカ合衆国の旗 ダン・ガーニー マクラーレン-フォード 1:26.6 +1.8 11
13 8 フランスの旗 アンリ・ペスカロロ マトラ 1:26.7 +1.9 12
14 27 スウェーデンの旗 ロニー・ピーターソン マーチ-フォード 1:26.8 +2.0 13
15 2 フランスの旗 フランソワ・セベール マーチ-フォード 1:26.8 +2.0 14
16 22 メキシコの旗 ペドロ・ロドリゲス BRM 1:26.9 +2.1 15
17 24 カナダの旗 ジョージ・イートン BRM 1:26.9 +2.1 16
18 16 ニュージーランドの旗 クリス・エイモン マーチ-フォード 1:27.0 +2.2 17
19 11 イタリアの旗 アンドレア・デ・アダミッチ マクラーレン-アルファロメオ 1:27.1 +2.3 18
20 20 イギリスの旗 ジョン・サーティース サーティース-フォード 1:27.7 +2.9 19
21 15 スイスの旗 ジョー・シフェール マーチ-フォード 1:28.0 +3.2 20
22 28 ブラジルの旗 エマーソン・フィッティパルディ ロータス-フォード 1:28.1 +3.3 21
23 14 イギリスの旗 グラハム・ヒル ロータス-フォード 1:28.4 +3.6 22
24 29 アメリカ合衆国の旗 ピート・ラブリー ロータス-フォード 1:30.3 +5.5 23
25 25 イギリスの旗 ブライアン・レッドマン デ・トマソ-フォード 1:32.8 +8.0 DNS 2
ソース:[11][12]
追記
  • ^1 - シュトメレンはアクシデントによりマシンが大破し、決勝への出走を見合わせた[6]
  • ^2 - レッドマンはマシントラブルが発生したため、決勝への出走を見合わせた[6]

決勝

レース開始直前にアンドレア・デ・アダミッチのマクラーレン・M7Dが燃料漏れに見舞われ、決勝に出走できなくなった[3]。

スタート直後、ジャッキー・イクスは1コーナーのパドック・ヒル・ベントでジャック・ブラバムに並び、2コーナーのドルイド・ベントでブラバムを抜いて首位に立った。イクスは6周目まで首位を走行したが、7周目の1コーナーでトランスミッションが壊れてリタイアした。同時にヨッヘン・リントがブラバムを抜いて首位に浮上する。ブラバムも応戦し、レースのほとんどの時間でリントとブラバムの接近戦が続いた。ジャッキー・オリバーはレースのほとんどで3位を走行していたが、58周目にエンジンが壊れてリタイアした。これにより、デニス・ハルムが3位に浮上した。69周目にリントがギアチェンジを誤り、ブラバムが首位に立つ。このままブラバムがレースを制するかに見えたが、最終ラップの最終コーナーでガス欠に見舞われスローダウンしてしまい、既に13秒の差が付いていたリントがブラバムを抜き、首位でフィニッシュした。ブラバムはスローダウンしながらなんとか2位でチェッカーを受けた。ハルムはブラバムを抜くにはあまりにも差が付きすぎていたため、3位のままレースを終えた[6]。クレイ・レガツォーニはF1デビュー戦のオランダGPに続いて4位に入賞した[13]。

レース後の車検でリントのリアウィングの高さが違反と判断されて失格となったが、再検査によって3時間後に失格処分が取り消され、リントの3連勝が確定した[2]。

レース結果

順位No.ドライバーコンストラクター周回数タイム/リタイア原因グリッドポイント
1 5 オーストリアの旗 ヨッヘン・リント ロータス-フォード 80 1:57:02.0 1 9
2 17 オーストラリアの旗 ジャック・ブラバム ブラバム-フォード 80 +32.9 2 6
3 9 ニュージーランドの旗 デニス・ハルム マクラーレン-フォード 80 +54.4 5 4
4 4 スイスの旗 クレイ・レガツォーニ フェラーリ 80 +54.8 6 3
5 16 ニュージーランドの旗 クリス・エイモン マーチ-フォード 79 +1 Lap 17 2
6 14 イギリスの旗 グラハム・ヒル ロータス-フォード 79 +1 Lap 22 1
7 2 フランスの旗 フランソワ・セベール マーチ-フォード 79 +1 Lap 14
8 28 ブラジルの旗 エマーソン・フィッティパルディ ロータス-フォード 78 +2 Laps 21
9 27 スウェーデンの旗 ロニー・ピーターソン マーチ-フォード 72 +8 Laps 13
NC 29 アメリカ合衆国の旗 ピート・ラブリー ロータス-フォード 69 規定周回数不足 23
Ret 32 アメリカ合衆国の旗 ダン・ガーニー マクラーレン-フォード 60 油圧 11
Ret 22 メキシコの旗 ペドロ・ロドリゲス BRM 58 アクシデント 15
Ret 23 イギリスの旗 ジャッキー・オリバー BRM 54 エンジン 4
Ret 1 イギリスの旗 ジャッキー・スチュワート マーチ-フォード 52 クラッチ 8
Ret 20 イギリスの旗 ジョン・サーティース サーティース-フォード 51 油圧 19
Ret 8 フランスの旗 アンリ・ペスカロロ マトラ 41 アクシデント 12
Ret 7 フランスの旗 ジャン=ピエール・ベルトワーズ マトラ 24 ホイール 10
Ret 26 アメリカ合衆国の旗 マリオ・アンドレッティ マーチ-フォード 21 サスペンション 9
Ret 15 スイスの旗 ジョー・シフェール マーチ-フォード 19 サスペンション 20
Ret 6 イギリスの旗 ジョン・マイルズ ロータス-フォード 15 エンジン 7
Ret 24 カナダの旗 ジョージ・イートン BRM 10 油圧 16
Ret 3 ベルギーの旗 ジャッキー・イクス フェラーリ 6 トランスミッション 3
DNS 11 イタリアの旗 アンドレア・デ・アダミッチ マクラーレン-アルファロメオ 燃料漏れ 18
DNS 18 西ドイツの旗 ロルフ・シュトメレン ブラバム-フォード 予選でアクシデント
DNS 25 イギリスの旗 ブライアン・レッドマン デ・トマソ-フォード トランスミッション
ソース:[14]
優勝者ヨッヘン・リントの平均速度[10]
174.925 km/h (108.693 mph)
ファステストラップ[15]
ラップリーダー[16]
太字は最多ラップリーダー

第7戦終了時点のランキング

  • 注: トップ5のみ表示。前半7戦のうちベスト6戦及び後半6戦のうちベスト5戦がカウントされる。

脚注

注釈

  1. この頃、DFVエンジンはクランクシャフトの品質不良により慢性的な不足状態を招いていた。
  2. 本レースのスターティンググリッドは3-2-3。

出典

  1. (林信次 1995, p. 131)
  2. Jenkinson, Denis [in 英語] (August 1970). "23rd British Grand Prix: An RAC Nonsense". Motor Sport. p. 22. 2017年6月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月31日閲覧。
  3. “Britain 1970”. STATS F1. 2020年1月2日閲覧。
  4. (林信次 1995, p. 23)
  5. (林信次 1995, p. 107)
  6. “British GP, 1970”. grandprix.com. 2020年1月1日閲覧。
  7. (林信次 1995, p. 113)
  8. (ダグ・ナイ 1989, p. 212)
  9. “Britain 1970 - Race entrants”. STATS F1. 2020年1月2日閲覧。
  10. “Britain 1970 - Result”. STATS F1. 2020年1月2日閲覧。
  11. “Britain 1970 - Qualifications”. STATS F1. 2020年1月2日閲覧。
  12. “Britain 1970 - Starting grid”. STATS F1. 2020年1月2日閲覧。
  13. (アラン・ヘンリー 1989, p. 256)
  14. “1970 British Grand Prix”. formula1.com. 2013年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月22日閲覧。
  15. “Britain 1970 - Best laps”. STATS F1. 2020年1月3日閲覧。
  16. “Britain 1970 - Laps led”. STATS F1. 2020年1月3日閲覧。
  17. “Britain 1970 - Championship”. STATS F1. 2019年3月13日閲覧。

参照文献

  • Wikipedia英語版 - en:1970 British Grand Prix(2019年3月13日 22:45:00(UTC))
  • 林信次『F1全史 1966-1970 [3リッターF1の開幕/ホンダ挑戦期の終わり]』ニューズ出版、1995年。ISBN 4-938495-06-6。
  • アラン・ヘンリー『チーム・フェラーリの全て』早川麻百合+島江政弘(訳)、CBS・ソニー出版、1989年12月。ISBN 4-7897-0491-2。
  • ダグ・ナイ『チーム・マクラーレンの全て』森岡成憲(訳)、CBS・ソニー出版、1989年12月。ISBN 4-7897-0491-2。

外部リンク

前戦
1970年フランスグランプリ
FIA F1世界選手権
1970年シーズン
次戦
1970年ドイツグランプリ
前回開催
1969年イギリスグランプリ
イギリスの旗 イギリスグランプリ 次回開催
1971年イギリスグランプリ
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