2012年のアメリカンリーグワイルドカードゲーム

2012年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)のポストシーズンは10月5日に開幕した。アメリカンリーグの第1回ワイルドカードゲーム(英語: Inaugural American League Wild Card Game)は同日、アメリカ合衆国テキサス州アーリントンのレンジャーズ・ボールパーク・イン・アーリントンで行われ、ボルチモア・オリオールズがテキサス・レンジャーズを5-1で下した。この結果、オリオールズが地区シリーズへ進出することになった。

2012年のアメリカンリーグ
ワイルドカードゲーム
チーム スコア
ボルチモア・オリオールズ 5
テキサス・レンジャーズ 1
試合情報
開催日 10月5日(金)
開催球場 レンジャーズ・ボールパーク・イン・アーリントン
観客動員 4万6931人
責任審判 ゲイリー・ダーリング[1]
殿堂表彰者 ジム・トーミ(BAL内野手)
エイドリアン・ベルトレ(TEX内野手)
チーム情報
ボルチモア・オリオールズ(BAL)
GM ダン・デュケット
監督 バック・ショーウォルター
シーズン成績 93勝69敗・勝率.574
東地区2位
分配金 選手1人あたり3万4825.61ドル[2]

テキサス・レンジャーズ(TEX)
GM ジョン・ダニエルズ
監督 ロン・ワシントン
シーズン成績 93勝69敗・勝率.574
西地区2位
分配金 選手1人あたり1万6999.09ドル[2]
全米テレビ中継
放送局 TBS
実況 アーニー・ジョンソン・ジュニア
解説 カル・リプケン・ジュニア
ジョン・スモルツ
平均視聴率 4.1%[3]
アメリカンリーグワイルドカードゲーム
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ワールドシリーズ

両チームの2012年

レンジャーズはこの年、4月と6月に7連勝以上を記録するなど好調で、前半戦終了時点では地区2位ロサンゼルス・エンゼルスと4.0ゲーム差の首位にいた。しかし、その時点では9.0ゲーム差の3位だったオークランド・アスレチックスが、後半戦になって勢いを増して2位に浮上し、レンジャーズを追いかけるようになった。後半戦の勝率はレンジャーズの.539に対しアスレチックスは.671と差があり、ゲーム差もだんだん縮まっていった。10月1日からのレギュラーシーズン最終3連戦では2.0ゲーム差の両者が直接対決し、アスレチックスが3連勝を果たした。これによりレンジャーズは、4月9日から守り続けていた地区首位の座から最後に転落した[4]。故障した先発投手の穴埋めがうまくいかず、野手も控えの層が薄いぶんレギュラーに頼りきりになったことが、終盤にスタミナ切れを起こす要因になった[5]。1試合平均得点は4.99でリーグ1位、防御率は3.99で同7位。

オリオールズは前年まで4年連続の地区最下位だったが、2012年は躍進した。前半戦終了時点では、地区首位ニューヨーク・ヤンキースから7.0ゲーム差の2位だった。後半戦に入ると、7月中旬に10.0まで広げられたゲーム差をその後は徐々に詰めていき、9月上旬には首位に並んだ。それから1か月、オリオールズは単独首位にこそなれなかったものの、常に2.0ゲーム差以内の位置につけてヤンキースを追いかけた。10月3日のレギュラーシーズン最終日は、オリオールズが勝ってヤンキースが負ければ2チームが並びワンゲームプレイオフ開催、という状況になった。しかしオリオールズはタンパベイ・レイズに敗れ、地区優勝を逃すと同時に第2ワイルドカードにまわった[6]。この年は救援投手陣が要所で力を発揮し、7回終了時点でリードしていた試合は75勝0敗、1点差試合は29勝9敗など好成績を収めた[7]。1試合平均得点は4.40でリーグ8位、防御率は3.90で同6位。

両チームはこの年、レギュラーシーズンでは計7試合を戦っている。結果は以下の通り[8]。

日付ビジター球団(先攻)スコアホーム球団(後攻)開催球場
5月07日(月)テキサス・レンジャーズ14-3ボルチモア・オリオールズオリオール・パーク・
アット・カムデン・ヤーズ
5月08日(火)テキサス・レンジャーズ10-3ボルチモア・オリオールズ
5月10日(木)テキサス・レンジャーズ5-6ボルチモア・オリオールズ
テキサス・レンジャーズ7-3ボルチモア・オリオールズ
8月20日(月)ボルチモア・オリオールズ1-5テキサス・レンジャーズレンジャーズ・ボールパーク・
イン・アーリントン
8月21日(火)ボルチモア・オリオールズ5-3テキサス・レンジャーズ
8月22日(水)ボルチモア・オリオールズ3-12テキサス・レンジャーズ
テキサス・レンジャーズ[5勝-2勝]ボルチモア・オリオールズ

ロースター

両チームの出場選手登録(ロースター)は以下の通り。

  • 名前の横の★はこの年のオールスターゲームに選出された選手を、#はレギュラーシーズン開幕後に入団した選手を示す。
  • 年齢は試合開催時点でのもの。
テキサス・レンジャーズボルチモア・オリオールズ
守備位置背番号出身選手投打年齢守備位置背番号出身選手投打年齢
投手11日本の旗ダルビッシュ有★右右26投手34アメリカ合衆国の旗ジェイク・アリエータ右右26
39アメリカ合衆国の旗スコット・フェルドマン右左2938メキシコの旗ルイス・アヤラ右右34
54アメリカ合衆国の旗マット・ハリソン★左左2753アメリカ合衆国の旗ザック・ブリットン左左24
45アメリカ合衆国の旗デレク・ホランド左両2529アメリカ合衆国の旗トミー・ハンター右右26
50アメリカ合衆国の旗マイケル・カークマン左左2643アメリカ合衆国の旗ジム・ジョンソン★右右29
36アメリカ合衆国の旗ジョー・ネイサン★右右3752アメリカ合衆国の旗スティーブ・ジョンソン右右25
41ドミニカ共和国の旗アレクシー・オガンド右右2917アメリカ合衆国の旗ブライアン・マティス左左25
44アメリカ合衆国の旗ロイ・オズワルト#右右3556アメリカ合衆国の旗ダレン・オデイ右右29
28アメリカ合衆国の旗ロビー・ロス左左2340アメリカ合衆国の旗トロイ・パットン左両27
22日本の旗建山義紀右右3648アメリカ合衆国の旗ジョー・ソーンダース#左左31
19日本の旗上原浩治右右3747ドミニカ共和国の旗ペドロ・ストロップ右右27
捕手15アメリカ合衆国の旗ルイス・マルティネス右右27捕手31アメリカ合衆国の旗テイラー・ティーガーデン右右28
25アメリカ合衆国の旗マイク・ナポリ★右右3032アメリカ合衆国の旗マット・ウィータース★右両26
8プエルトリコの旗ジオバニー・ソト#右右29内野手11アメリカ合衆国の旗ロバート・アンディーノ右右28
内野手1ベネズエラの旗エルビス・アンドラス★右右243アメリカ合衆国の旗ライアン・フラハーティ右左26
29ドミニカ共和国の旗エイドリアン・ベルトレ★右右332アメリカ合衆国の旗J.J.ハーディ右右30
5アメリカ合衆国の旗イアン・キンズラー★右右3013アメリカ合衆国の旗マニー・マチャド右右20
18アメリカ合衆国の旗ミッチ・モアランド左左2735アメリカ合衆国の旗オマー・キンタニーヤ#右左30
2キュラソー島の旗ジュリクソン・プロファー右両1912アメリカ合衆国の旗マーク・レイノルズ右右29
10アメリカ合衆国の旗マイケル・ヤング右右3525アメリカ合衆国の旗ジム・トーミ#右左42
外野手17ドミニカ共和国の旗ネルソン・クルーズ右右32外野手19アメリカ合衆国の旗クリス・デービス右左26
23アメリカ合衆国の旗クレイグ・ジェントリー右右2827ベネズエラの旗エンディ・チャベス左左34
32アメリカ合衆国の旗ジョシュ・ハミルトン★左左3151アメリカ合衆国の旗ルー・フォード右右36
27キューバの旗レオネス・マーティン右左2410アメリカ合衆国の旗アダム・ジョーンズ★右右27
7アメリカ合衆国の旗デビッド・マーフィー左左309アメリカ合衆国の旗ネイト・マクラウス#右左31

試合

映像外部リンク
動画共有サイト "YouTube" にMLB公式アカウントが投稿したハイライト映像(英語、3分54秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
ボルチモア・オリオールズ 1 0 0 0 0 1 1 0 2 5 8 2
テキサス・レンジャーズ 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 9 2
  1. 勝:ジョー・ソーンダース  敗:ダルビッシュ有  
  2. 審判
    [球審]ゲイリー・ダーリング
    [塁審]一塁: ジェリー・レイン、二塁: テッド・バレット、三塁: ビル・ミラー
    [外審]左翼: グレッグ・ギブソン、右翼: クリス・グッチオーネ
  3. 試合開始時刻: 中部夏時間(UTC-5)午後7時38分 試合時間: 3時間19分 観客: 4万6931人 気温: 75°F(23.9°C)
    詳細: MLB.com Gameday / ESPN.com / Baseball-Reference.com / FanGraphs
両チームの先発ラインナップ
ボルチモア・オリオールズテキサス・レンジャーズ
打順守備選手打席 打順守備選手打席
1左N・マクラウス左1二I・キンズラー右
2遊J・ハーディ右2遊E・アンドラス右
3右C・デービス左3左J・ハミルトン左
4中A・ジョーンズ右4三A・ベルトレ右
5捕M・ウィータース両5右N・クルーズ右
6DHJ・トーミ左6一M・ヤング右
7一M・レイノルズ右7DHM・ナポリ右
8二R・フラハーティ左8捕G・ソト右
9三M・マチャド右9中C・ジェントリー右
先発投手投球先発投手投球
J・ソーンダース左ダルビッシュ有右

この試合の先発投手は、レンジャーズはダルビッシュ有、オリオールズはジョー・ソーンダース。レギュラーシーズンでの成績は、ダルビッシュが29試合191.1イニングで16勝9敗・防御率3.90、ソーンダースが28試合174.2イニングで9勝13敗・防御率4.07である。

J.J.ハーディはこの日2安打を放つ(写真は2011年5月22日撮影)

試合は初回から動く。表のオリオールズの攻撃では、先頭打者ネイト・マクラウスが初球の外角高めカッターを引っ張り、一塁手マイケル・ヤングのグラブを弾く失策で出塁する。そして次打者J.J.ハーディの打席で2球目にマクラウスが盗塁を決めると、その次の球をハーディが中前へ運んでマクラウスを還し、試合開始からわずか4球で先制点を奪った。ダルビッシュは続く打線の中軸3人を凡退させて1失点にとどめたが、立ち上がりから相手にリードを許した。レンジャーズはその裏すぐに反撃し、1番イアン・キンズラーの四球と2番エルビス・アンドラスの左前打で無死一・三塁の好機を作る。オリオールズはこの時点で早くも救援右腕スティーブ・ジョンソンに登板準備を始めさせた[9]。しかしソーンダースは、3番ジョシュ・ハミルトンに初球の外角低めカーブを引っ掛けさせて二ゴロ併殺に仕留め、その間にキンズラーの生還こそ許したものの、こちらも1失点のみで危機を乗り切った。

2回表、ダルビッシュは7番マーク・レイノルズの手に死球をぶつけ、二死から盗塁を許して再び得点圏に走者を背負う。だがその次の球で9番マニー・マチャドを一ゴロに打ち取り、2イニング連続の失点を免れた。ここから5回にかけては両チームとも無得点で、1-1のまま試合が進んでいく。ダルビッシュは「今夜はすごく調子がよかった。投げたいところに投げられて試合が作れた」と自ら認めるように[10]、5イニングで許した安打が2本のみとオリオールズ打線を沈黙させる。対するソーンダースは、4回裏には一死から連打で一・三塁とされるが後続を断ち、3回と5回にも走者を出した直後の打者を併殺打に仕留めて、レンジャーズに勝ち越し点を挙げさせない。彼はレンジャーズ・ボールパーク・イン・アーリントンで過去に6先発して防御率9.38と相性が悪く[9]、さらに左腕の彼に対し相手打線が右打者を8人並べてくるという状況ながら[11]、この日は5回まで1失点で踏ん張っていた。

この均衡が破れたのは6回表だった。オリオールズは先頭の2番ハーディと3番クリス・デービスが連続右前打で無死一・三塁の好機を作る。ここで4番アダム・ジョーンズは、初球の内角低めスライダーを右翼ウォーニングゾーンの手前まで運ぶ犠牲フライにし、三塁走者ハーディを生還させた。この直後、ダルビッシュが右僧帽筋の張りを訴えたため、試合が一時中断することに[10]。再開後、続投したダルビッシュの前にオリオールズはさらなる追加点こそ奪えなかったが、この回1点の勝ち越しに成功した。その裏、ソーンダースが3番ハミルトンと4番エイドリアン・ベルトレを打ち取り、二死無走者となったところでオリオールズは継投に入り、2番手のダレン・オデイが5番ネルソン・クルーズから3つ目のアウトをとった。7回表、オリオールズは二死二塁としてダルビッシュを降板に追い込み、2番手デレク・ホランドから1番マクラウスが適時打を放って、リードを2点に広げた。オデイはイニングをまたいで7回裏も三者凡退に抑えた。

ジョシュ・ハミルトンはあっさりと凡退を繰り返した(写真は2010年6月24日撮影)

レンジャーズは8回表、3番デービスから始まるオリオールズの中軸を上原浩治が3者連続の空振り三振に退けた。その裏、打線は1番キンズラーの内野安打とオデイの牽制悪送球で一死二塁とする。しかし2番アンドラスは遊ゴロで、走者を進めることもできず。3番ハミルトンは、オデイのあとを引き継いだ左腕ブライアン・マティスに3球三振を喫し、好機が潰えた。この日のハミルトンは初球に手を出しての凡打と3球三振がふたつずつの4打数無安打で、打席を終えてダグアウトに戻る際にはファンからブーイングを浴びた[12]。逆に危機を切り抜けたオリオールズは9回表、相手の抑え投手ジョー・ネイサンを攻め立て、一死二・三塁から9番マチャドの左前打と1番マクラウスの犠牲フライで2点を加えて突き放した。その裏、オリオールズも抑え投手のジム・ジョンソンをマウンドに送る。レンジャーズは彼から二死満塁と、本塁打が出れば一挙同点という場面を作り上げたが、最後は9番デビッド・マーフィーが左飛に倒れて試合終了となった。

オリオールズは1997年のリーグ優勝決定戦以来15年ぶりとなるポストシーズンで、まずは敵地での最初の関門を突破した。続く地区シリーズでは、ニューヨーク・ヤンキースと対戦する。オリオールズとヤンキースは、同じ東地区でレギュラーシーズン最終戦までしのぎを削った。この試合で決勝の犠牲フライを放ったジョーンズは「ヤンキースは万全の状態でくるだろう。なんてったってヤンキースだからね」と気を引き締めつつも「彼らを恐れてはいない」と自信も覗かせた[13]。一方のレンジャーズは、2010年・2011年と過去2年はいずれもワールドシリーズで敗れていた。この年は球団初の優勝を目指していたが、結果はシリーズ進出すらかなわずにシーズンを終えることになった。敗戦投手となったダルビッシュは、このタイミングでのシーズン終了を「マラソンを走れと言われて走って、30キロ地点で『さあスパート』というところで止められたみたいな感じ」と表現した[14]。

脚注

  1. "Umpires for Wild Card Games, Division Series announced," MLB.com, October 5, 2012. 2022年5月19日閲覧。
  2. "2012 Postseason Shares Announced," MLB.com, November 26, 2012. 2022年5月19日閲覧。
  3. Robert Seidman, "TBS Scores on First Day of 2012 MLB Postseason with New Wild Card Games," TVbytheNumbers, October 6, 2012. 2014年3月2日閲覧。
  4. Associated Press, "Athletics overwhelm Rangers, complete improbable run to AL West title," ESPN.com, October 3, 2012. 2014年2月28日閲覧。
  5. SLUGGER 「30球団通信簿 テキサス・レンジャーズ 余裕の地区優勝かと思いきや終盤にまさかの失速」 『月刊スラッガー』2012年12月号、日本スポーツ企画出版社、2012年、雑誌15509-12、65頁。
  6. Associated Press, "Orioles fall, will face Rangers in wild-card game in Texas," ESPN.com, October 3, 2012. 2014年2月28日閲覧。
  7. SLUGGER 「30球団通信簿 ボルティモア・オリオールズ “ミラクル”の連続で長い低迷から脱出」 『月刊スラッガー』2012年12月号、日本スポーツ企画出版社、2012年、雑誌15509-12、52頁。
  8. "TEX vs. BAL from 2012 to 2012 Head-to-Head Records," Baseball-Reference.com. 2014年2月28日閲覧。
  9. Brittany Ghiroli / MLB.com, "Saunders delivers with O's stakes the highest yet," orioles.com, October 6, 2012. 2014年2月28日閲覧。
  10. T.R. Sullivan / MLB.com, "With little help, Yu's effort spoiled in playoff debut / Darvish pitches into seventh after working through discomfort in shoulder," texasrangers.com, October 6, 2012. 2014年2月28日閲覧。
  11. T.R. Sullivan / MLB.com, "Washington packs lineup with right-handed hitters," texasrangers.com, October 5, 2012. 2014年2月28日閲覧。
  12. Jean-Jacques Taylor, "Josh Hamilton's act has grown old," ESPN Dallas, October 7, 2012. 2014年2月28日閲覧。
  13. Keith Whitmire, Special for USA TODAY Sports, "Orioles' magical season continues," USATODAY.com, October 6, 2012. 2014年2月28日閲覧。
  14. 生島淳 「成功と言える1年目だが不安材料も。ダルビッシュが克服すべき課題とは?」 『Number Web』、2012年10月14日。2014年2月28日閲覧。

外部リンク

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